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4章 13 逃げませんか?
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「失礼いたします……」
リュックの右肩に触れると、頭の中で彼の腕が元通りに動けるように必死で念じる。
「「「「「……」」」」」
その様子をじっと見守る5人。
「……どうですか? 何か感じますか?」
手を離すと、まるで怪しい霊能力者のようなセリフを口にする私。
「う~ん……どうでしょう?」
当然首を捻るリュック。
「リュック、ちょっと腕が動くか試してみろよ」
「そうだな」
サムに促されリュックは右腕を動かそうとし……。
「……駄目です。ピクリとも動きません」
「そうですか。駄目ですか……申し訳ありません」
あぁ、やっぱりね。そうだと思ってた。だって私は聖女様なんかじゃないもの。
偽物聖女に動かなくなった腕を治せるはずはない。
それなのに――
「う~ん。今日のリアンナ様は何だか調子が悪いみたいです。神力を使い果たしてしまったのかもしれませんね」
ニーナがとんでもない台詞を口にする。
「えっ!?」
神力なんて、元々持っていませんけど!? これでは増々、私は詐欺師になってしまうじゃない!
これには流石にジャンとカインも驚いたようだ。
「おい! ニーナッ!! なんて事言うんだよ!」
ジャンが血相変えて叫ぶも、ニーナは気にする素振りも無く私に話しかけてきた。
「リアンナ様、神力を回復する儀式を行いましょう」
「え? ぎ、儀式……?」
儀式……儀式……一体何のことだろう?
するとニーナが私の耳もとで囁いた。
「ウクレレを演奏して下さい。大丈夫、きっと何らかの奇跡が起こるに決まっています」
ウクレレを演奏する? そんなことをしたって何もならないのに?
だけど、助けてあげられなかったお詫び位するべきだろう。
「そうね。ウクレレを演奏することにするわ」
ウクレレを演奏して、神のご加護がありますように……とでも言って、誤魔化すしか無い!
私は心に決めると立ち上がった。
「それでは今、ウクレレを取ってくるので皆さんはこちらでお待ち下さい」
逃げたい気持ちを抑え込み、引きつった笑みを浮かべたとき。
「リアンナ様、僕もご一緒します」
するとカインが立ち上がった。
「カインが?」
何故、ただウクレレを取りに行くだけなのにカインがついてくるのだろう?
「僕はリアンナ様の護衛騎士ですからね。何処へ行くにも一緒です、では行きましょう」
「え? ちょ、ちょっと!」
カインは有無を言わさず私の右手を握りしめると、大股で部屋を出ていく。
「おい! 勝手に手を繋ぐなよ!」
背後でジャンの抗議する声を聞きながら扉がバタンと閉ざされた。
「カイン、別にウクレレを取りに行くぐらい……」
するとカインが向き直り、とんでもない言葉を口にした。
「リアンナ様……逃げませんか?」
「はぁ!?」
「リアンナ様にその気があるなら、 僕はあなたを連れて何処までも逃げ切ってみせる自信はあります。例え、地の果てだろうと」
カインの瞳は真剣だ。とても冗談を言っているようには見えない。
「ええっ!? ちょっと、本気でそんなこと言ってるの?」
「はい、僕はいつだって本気です」
「何で逃げなくちゃいけないの? それにジャンとニーナはどうするの?」
「あの2人なら大丈夫、きっと何とかなるでしょう。それよりも僕はリアンナ様のことが心配でなりません」
「何とかなるって……」
一体、カインは何を根拠に言うのだろう?
「ええ、何とかなるはずです。今はリアンナ様のピンチを救うことが一番大事です」
おおっ! またしても言い切った! だけど……。
「心配してくれてありがとう、カイン。だけど私はこれでもジャンとニーナの主なの。2人を置いて自分だけ逃げるなんて出来ないわ。それにリュックさんの腕を治せなかったお詫びに、ウクレレを演奏して元気づけてあげたいのよ」
「分かりました。では、ウクレレを取りに行きましょう」
そして私達は一緒にウクレレを部屋に取りに行った――
****
「すみません、お待たせしました」
ウクレレを持ってカインと一緒に部屋に戻ると、早速サムが声をかけてきた。
「あ! それは、村で弾いていた不思議な楽器ですね?」
「そうです。これがウクレレという楽器です。では、早速元気が出てくるような音楽を演奏しますね」
わざと曖昧な言い方をすると、思った通りリュックとサムが勘違い発言をする。
「なるほど、聖女様は演奏で奇跡を起こせるのですね」
「そう言えば俺も聖女様の奏でた音楽に引き寄せられたんだっけ……やっぱり不思議な力があったからだったのか」
よ、よし! 勘違いしている間に演奏を始めてしまえ!
「それでは、1曲弾かせて頂きますね」
そして、私は元気が湧いてくるような明るい曲『線路は続くよどこまでも』の演奏を始めた――
リュックの右肩に触れると、頭の中で彼の腕が元通りに動けるように必死で念じる。
「「「「「……」」」」」
その様子をじっと見守る5人。
「……どうですか? 何か感じますか?」
手を離すと、まるで怪しい霊能力者のようなセリフを口にする私。
「う~ん……どうでしょう?」
当然首を捻るリュック。
「リュック、ちょっと腕が動くか試してみろよ」
「そうだな」
サムに促されリュックは右腕を動かそうとし……。
「……駄目です。ピクリとも動きません」
「そうですか。駄目ですか……申し訳ありません」
あぁ、やっぱりね。そうだと思ってた。だって私は聖女様なんかじゃないもの。
偽物聖女に動かなくなった腕を治せるはずはない。
それなのに――
「う~ん。今日のリアンナ様は何だか調子が悪いみたいです。神力を使い果たしてしまったのかもしれませんね」
ニーナがとんでもない台詞を口にする。
「えっ!?」
神力なんて、元々持っていませんけど!? これでは増々、私は詐欺師になってしまうじゃない!
これには流石にジャンとカインも驚いたようだ。
「おい! ニーナッ!! なんて事言うんだよ!」
ジャンが血相変えて叫ぶも、ニーナは気にする素振りも無く私に話しかけてきた。
「リアンナ様、神力を回復する儀式を行いましょう」
「え? ぎ、儀式……?」
儀式……儀式……一体何のことだろう?
するとニーナが私の耳もとで囁いた。
「ウクレレを演奏して下さい。大丈夫、きっと何らかの奇跡が起こるに決まっています」
ウクレレを演奏する? そんなことをしたって何もならないのに?
だけど、助けてあげられなかったお詫び位するべきだろう。
「そうね。ウクレレを演奏することにするわ」
ウクレレを演奏して、神のご加護がありますように……とでも言って、誤魔化すしか無い!
私は心に決めると立ち上がった。
「それでは今、ウクレレを取ってくるので皆さんはこちらでお待ち下さい」
逃げたい気持ちを抑え込み、引きつった笑みを浮かべたとき。
「リアンナ様、僕もご一緒します」
するとカインが立ち上がった。
「カインが?」
何故、ただウクレレを取りに行くだけなのにカインがついてくるのだろう?
「僕はリアンナ様の護衛騎士ですからね。何処へ行くにも一緒です、では行きましょう」
「え? ちょ、ちょっと!」
カインは有無を言わさず私の右手を握りしめると、大股で部屋を出ていく。
「おい! 勝手に手を繋ぐなよ!」
背後でジャンの抗議する声を聞きながら扉がバタンと閉ざされた。
「カイン、別にウクレレを取りに行くぐらい……」
するとカインが向き直り、とんでもない言葉を口にした。
「リアンナ様……逃げませんか?」
「はぁ!?」
「リアンナ様にその気があるなら、 僕はあなたを連れて何処までも逃げ切ってみせる自信はあります。例え、地の果てだろうと」
カインの瞳は真剣だ。とても冗談を言っているようには見えない。
「ええっ!? ちょっと、本気でそんなこと言ってるの?」
「はい、僕はいつだって本気です」
「何で逃げなくちゃいけないの? それにジャンとニーナはどうするの?」
「あの2人なら大丈夫、きっと何とかなるでしょう。それよりも僕はリアンナ様のことが心配でなりません」
「何とかなるって……」
一体、カインは何を根拠に言うのだろう?
「ええ、何とかなるはずです。今はリアンナ様のピンチを救うことが一番大事です」
おおっ! またしても言い切った! だけど……。
「心配してくれてありがとう、カイン。だけど私はこれでもジャンとニーナの主なの。2人を置いて自分だけ逃げるなんて出来ないわ。それにリュックさんの腕を治せなかったお詫びに、ウクレレを演奏して元気づけてあげたいのよ」
「分かりました。では、ウクレレを取りに行きましょう」
そして私達は一緒にウクレレを部屋に取りに行った――
****
「すみません、お待たせしました」
ウクレレを持ってカインと一緒に部屋に戻ると、早速サムが声をかけてきた。
「あ! それは、村で弾いていた不思議な楽器ですね?」
「そうです。これがウクレレという楽器です。では、早速元気が出てくるような音楽を演奏しますね」
わざと曖昧な言い方をすると、思った通りリュックとサムが勘違い発言をする。
「なるほど、聖女様は演奏で奇跡を起こせるのですね」
「そう言えば俺も聖女様の奏でた音楽に引き寄せられたんだっけ……やっぱり不思議な力があったからだったのか」
よ、よし! 勘違いしている間に演奏を始めてしまえ!
「それでは、1曲弾かせて頂きますね」
そして、私は元気が湧いてくるような明るい曲『線路は続くよどこまでも』の演奏を始めた――
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