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4章 8 神がかり的な?
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――夕方
私達は約8時間かけて、次の町『プレタ』の中心地に到着した。
「あんたたち! 一緒に旅が出来て楽しかったよ!」
「姉ちゃん! また機会があったら、その楽器で何か演奏してくれよな」
「その音楽を聞いていると、何故か元気が湧いてくるんだよ!」
一緒に旅を続けていた行商人の人たちが手を振って、散り散りバラバラになっていく。
「はい、皆さん! ご一緒できて楽しかったです!」
荷馬車の上から大きく手を振って彼らを見送っていると、御者台のジャンが声をかけてきた。
「リアンナ様、余り目立つことはされないで下さい。俺達はお尋ね者なんですよ?」
「お尋ね者とは、また物騒な言い方ね。でも、皆ウクレレ演奏を聞いて楽しそうだったじゃない」
私の言葉に隣に座っていたニーナが同意した。
「私もそう思います。それに行商の人たち、皆怖そうに見えましたけど話してみれば気さくな人たちばかりでしたね」
「でも本当にリアンナ様は聖女様ではありませんか? その証拠に馬達は全く疲れを見せることがありませんでしたから。それに、動物たちも音楽に引き寄せられて増えましたよね?」
馬にまたがるカインが荷馬車を覗き込んだ。
中には新しく仲間? に加わったリスや猿たちまで乗っている。
「アハハハ……た、確かにそうかもね」
因みに、今私の肩には小さな猿が乗っている。
森の中を荷馬車で走っているときに、ウクレレを演奏していたら動物たちが寄ってきて勝手に? 乗り込んでしまったのだ。
「ええ、私もそう思います! リアンナ様は動物を呼び寄せることが出来る聖女様に違いありませんよ!」
ニーナは興奮した様子で頷いた。
「違うってば! もし動物たちが引き寄せられて来たのなら、この楽器の音色が原因だってば!」
だいたい、今私が手にしているウクレレを何処で手に入れたのか全く記憶が無いのだから。
もしかすると、このウクレレに神がかり的な力が宿っているのかもしれない。
「ところでリアンナ様。また何処で殿下の騎士たちに遭遇するか分かりません。まずは宿屋を探しませんか?」
不意にカインが声をかけてきた。
「そうね、カインの言う通りね」
するとジャンが勢いよく振り返る。
「宿屋なら俺が探しますよ!」
「いや、僕が探すよ。ジャンは騎士たちの顔を知らないだろう?」
「それを言うなら、カイン様だって顔バレしてしまいますよね?」
「僕なら大丈夫。フードで顔を隠しているし、髪の色も違うからバレることはないよ」
今のカインは黒髪から金色の髪に変わっている。これは行商人から買いとったカツラを被っているからだ。
うん、さすがは美青年カイン。金髪姿も良く似合っている。
ちなみに私も顔が騎士たちに知れ渡っているかも知れないということで、銀色のカツラを被っていた。
「くぅっ! わ、分かりました……ではカイン様に宿探しをお願いします!」
妙に悔しそうな素振りを見せるジャン。
そんなに、宿屋を探したかったのだろうか?
「それじゃ、行ってきます。皆さんは向こうの広場で待っていて下さい」
カインは広場を指差し、にっこり笑う馬にまたがったまま人混みの中へ消えていった。
「くっそ~! 俺が宿屋を探したかったのに!」
ジャンは今も悔しそうにしている。
ひょっとして、ジャンは……?
「ねぇ? もしかして、ジャンは宿屋にこだわりがあるの?」
荷馬車から身を乗り出すと、ジャンに尋ねた。
「は? リアンナ様、何を仰っているのですか?」
「だって、自分で宿屋を見つけたかったのでしょう? だから何かこだわりというか、基準があるのかと思ったのよ。例えば、料理が美味しい宿屋だとか……」
するとジャンは目を大きく見開き、「はぁ~」とため息をついた。
え? 何? ため息つかれるような質問だったの?
「ジャン。仕方ないわよ。諦めなさい」
何故かニーナがジャンに言葉をかけている。
「え? え? 一体何のこと?」
さっぱり分からず、2人に尋ねても「気にしないで下さい」と言って結局理由を教えてもらうことは出来なかった――
私達は約8時間かけて、次の町『プレタ』の中心地に到着した。
「あんたたち! 一緒に旅が出来て楽しかったよ!」
「姉ちゃん! また機会があったら、その楽器で何か演奏してくれよな」
「その音楽を聞いていると、何故か元気が湧いてくるんだよ!」
一緒に旅を続けていた行商人の人たちが手を振って、散り散りバラバラになっていく。
「はい、皆さん! ご一緒できて楽しかったです!」
荷馬車の上から大きく手を振って彼らを見送っていると、御者台のジャンが声をかけてきた。
「リアンナ様、余り目立つことはされないで下さい。俺達はお尋ね者なんですよ?」
「お尋ね者とは、また物騒な言い方ね。でも、皆ウクレレ演奏を聞いて楽しそうだったじゃない」
私の言葉に隣に座っていたニーナが同意した。
「私もそう思います。それに行商の人たち、皆怖そうに見えましたけど話してみれば気さくな人たちばかりでしたね」
「でも本当にリアンナ様は聖女様ではありませんか? その証拠に馬達は全く疲れを見せることがありませんでしたから。それに、動物たちも音楽に引き寄せられて増えましたよね?」
馬にまたがるカインが荷馬車を覗き込んだ。
中には新しく仲間? に加わったリスや猿たちまで乗っている。
「アハハハ……た、確かにそうかもね」
因みに、今私の肩には小さな猿が乗っている。
森の中を荷馬車で走っているときに、ウクレレを演奏していたら動物たちが寄ってきて勝手に? 乗り込んでしまったのだ。
「ええ、私もそう思います! リアンナ様は動物を呼び寄せることが出来る聖女様に違いありませんよ!」
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「違うってば! もし動物たちが引き寄せられて来たのなら、この楽器の音色が原因だってば!」
だいたい、今私が手にしているウクレレを何処で手に入れたのか全く記憶が無いのだから。
もしかすると、このウクレレに神がかり的な力が宿っているのかもしれない。
「ところでリアンナ様。また何処で殿下の騎士たちに遭遇するか分かりません。まずは宿屋を探しませんか?」
不意にカインが声をかけてきた。
「そうね、カインの言う通りね」
するとジャンが勢いよく振り返る。
「宿屋なら俺が探しますよ!」
「いや、僕が探すよ。ジャンは騎士たちの顔を知らないだろう?」
「それを言うなら、カイン様だって顔バレしてしまいますよね?」
「僕なら大丈夫。フードで顔を隠しているし、髪の色も違うからバレることはないよ」
今のカインは黒髪から金色の髪に変わっている。これは行商人から買いとったカツラを被っているからだ。
うん、さすがは美青年カイン。金髪姿も良く似合っている。
ちなみに私も顔が騎士たちに知れ渡っているかも知れないということで、銀色のカツラを被っていた。
「くぅっ! わ、分かりました……ではカイン様に宿探しをお願いします!」
妙に悔しそうな素振りを見せるジャン。
そんなに、宿屋を探したかったのだろうか?
「それじゃ、行ってきます。皆さんは向こうの広場で待っていて下さい」
カインは広場を指差し、にっこり笑う馬にまたがったまま人混みの中へ消えていった。
「くっそ~! 俺が宿屋を探したかったのに!」
ジャンは今も悔しそうにしている。
ひょっとして、ジャンは……?
「ねぇ? もしかして、ジャンは宿屋にこだわりがあるの?」
荷馬車から身を乗り出すと、ジャンに尋ねた。
「は? リアンナ様、何を仰っているのですか?」
「だって、自分で宿屋を見つけたかったのでしょう? だから何かこだわりというか、基準があるのかと思ったのよ。例えば、料理が美味しい宿屋だとか……」
するとジャンは目を大きく見開き、「はぁ~」とため息をついた。
え? 何? ため息つかれるような質問だったの?
「ジャン。仕方ないわよ。諦めなさい」
何故かニーナがジャンに言葉をかけている。
「え? え? 一体何のこと?」
さっぱり分からず、2人に尋ねても「気にしないで下さい」と言って結局理由を教えてもらうことは出来なかった――
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