47 / 81
3章 15 任せてちょうだい
しおりを挟む
ガラガラガラガラ……
教会へ向かう荷馬車の上で御者台のジャンが声をかけてきた。
「リアンナ様、本当に今日のマジックショーは俺の助けがいらないのですか?」
「うん、大丈夫よ。だって今日は教会前でやるんだから」
「ですが、男手があったほうが良いのではないでしょうか? ……心配です」
カインがじっと見つめてくる。
「心配しなくて平気だってば。それに神父さんだって立ち会ってくれるわけだし」
「そうです。何しろ、リアンナ様には私がついているのですから」
「……だから心配なんだよ」
ニーナの言葉にジャンがボソリと呟く。
「ちょっとジャン! 聞こえたわよ!」
「そうだよ! 聞こえるように言ったんだからな!」
「何ですって!?」
「何だよ!!」
ニーナは御者台に移動するとジャンの隣に座り、とうとう二人は口喧嘩を始めてしまった。
けれど、もうすっかり慣れっこになった私は気に留めることもなく町並みを眺めていると、カインが声をかけてきた。
「あの、リアンナ様……二人を止めなくても良いのですか?」
「いいの、いいの。ほら、喧嘩するほど仲が良いって言うでしょう?
「え? 何ですか? 今の話は」
首をかしげるカイン。
あ、そうだった。ここは日本では無かった。この世界ではこんな言葉は存在しないのかもしれない。
「それよりもジャンの剣術の腕はあがりそう?」
ごまかす為に質問をしてみた。
「そうですね。筋はあるかと思います。きっと、彼はリアンナ様をお守りするために必死になって剣術を学ぼうとしているのでしょうね」
笑顔で答えるカインは、とても穏やかな人物に見える。
けれども、殿下の護衛騎士に選ばれるほどなのだから相当の腕前なのだろう。
「カインが剣術の先生になってくれたのだから、この分ならすぐに腕が上がりそうね」
「ご期待に添えられるように頑張りますね」
穏やかに話す私達とは正反対に、ジャンとニーナの口論は教会へ到着するまでの間、続くのだった――
****
「それでは、リアンナ様。今日のマジックショー、頑張ってください。俺、陰ながら応援していますからね」
教会に到着すると、ジャンが目をキラキラさせて声をかけてきた。
「そうね、頑張るわ。それに今日はもう人を呼ぶ手間もなさそうだし」
背後を振り返ると教会の前にはベンチが並べられ、人々が大勢集まっている。
マジックショーを行うための青空会場は準備万端だった。
「リアンナ様。僕たちは教会の裏手で剣術の訓練を行います。もし何かあっても、すぐに助けに参りますので心置きなくマジックショーを行って下さい。この剣に誓ってお守りいたしますので」
「アハハハ……ありがとう、カイン」
カインは誓いを立てる相手を絶対に間違えている!
元々は殿下の命令で、私がこの国を出ていくのを見届けさせるために遣わされてたんじゃなかたっけ?
そこへ神父さんのところへ行っていたニーナが戻ってきた。
「リアンナ様、巡業を始めて下さいと神父様が仰っています」
「分かったわ。それじゃ行きましょう。ニーナ」
「はい、リアンナ様」
私の後についてくるニーナ。
「頑張ってください!」
「ご武運を!」
私達にエールを送るジャンとカイン。
当然この日のマジックショーも、勿論大成功で沢山の献金? を貰うことが出来たのだった――
教会へ向かう荷馬車の上で御者台のジャンが声をかけてきた。
「リアンナ様、本当に今日のマジックショーは俺の助けがいらないのですか?」
「うん、大丈夫よ。だって今日は教会前でやるんだから」
「ですが、男手があったほうが良いのではないでしょうか? ……心配です」
カインがじっと見つめてくる。
「心配しなくて平気だってば。それに神父さんだって立ち会ってくれるわけだし」
「そうです。何しろ、リアンナ様には私がついているのですから」
「……だから心配なんだよ」
ニーナの言葉にジャンがボソリと呟く。
「ちょっとジャン! 聞こえたわよ!」
「そうだよ! 聞こえるように言ったんだからな!」
「何ですって!?」
「何だよ!!」
ニーナは御者台に移動するとジャンの隣に座り、とうとう二人は口喧嘩を始めてしまった。
けれど、もうすっかり慣れっこになった私は気に留めることもなく町並みを眺めていると、カインが声をかけてきた。
「あの、リアンナ様……二人を止めなくても良いのですか?」
「いいの、いいの。ほら、喧嘩するほど仲が良いって言うでしょう?
「え? 何ですか? 今の話は」
首をかしげるカイン。
あ、そうだった。ここは日本では無かった。この世界ではこんな言葉は存在しないのかもしれない。
「それよりもジャンの剣術の腕はあがりそう?」
ごまかす為に質問をしてみた。
「そうですね。筋はあるかと思います。きっと、彼はリアンナ様をお守りするために必死になって剣術を学ぼうとしているのでしょうね」
笑顔で答えるカインは、とても穏やかな人物に見える。
けれども、殿下の護衛騎士に選ばれるほどなのだから相当の腕前なのだろう。
「カインが剣術の先生になってくれたのだから、この分ならすぐに腕が上がりそうね」
「ご期待に添えられるように頑張りますね」
穏やかに話す私達とは正反対に、ジャンとニーナの口論は教会へ到着するまでの間、続くのだった――
****
「それでは、リアンナ様。今日のマジックショー、頑張ってください。俺、陰ながら応援していますからね」
教会に到着すると、ジャンが目をキラキラさせて声をかけてきた。
「そうね、頑張るわ。それに今日はもう人を呼ぶ手間もなさそうだし」
背後を振り返ると教会の前にはベンチが並べられ、人々が大勢集まっている。
マジックショーを行うための青空会場は準備万端だった。
「リアンナ様。僕たちは教会の裏手で剣術の訓練を行います。もし何かあっても、すぐに助けに参りますので心置きなくマジックショーを行って下さい。この剣に誓ってお守りいたしますので」
「アハハハ……ありがとう、カイン」
カインは誓いを立てる相手を絶対に間違えている!
元々は殿下の命令で、私がこの国を出ていくのを見届けさせるために遣わされてたんじゃなかたっけ?
そこへ神父さんのところへ行っていたニーナが戻ってきた。
「リアンナ様、巡業を始めて下さいと神父様が仰っています」
「分かったわ。それじゃ行きましょう。ニーナ」
「はい、リアンナ様」
私の後についてくるニーナ。
「頑張ってください!」
「ご武運を!」
私達にエールを送るジャンとカイン。
当然この日のマジックショーも、勿論大成功で沢山の献金? を貰うことが出来たのだった――
790
お気に入りに追加
1,837
あなたにおすすめの小説
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!
珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。
3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。
高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。
これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!!
転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!
水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。
シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。
緊張しながら迎えた謁見の日。
シエルから言われた。
「俺がお前を愛することはない」
ああ、そうですか。
結構です。
白い結婚大歓迎!
私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。
私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

成人したのであなたから卒業させていただきます。
ぽんぽこ狸
恋愛
フィオナはデビュタント用に仕立てた可愛いドレスを婚約者であるメルヴィンに見せた。
すると彼は、とても怒った顔をしてフィオナのドレスを引き裂いた。
メルヴィンは自由に仕立てていいとは言ったが、それは流行にのっとった範囲でなのだから、こんなドレスは着させられないという事を言う。
しかしフィオナから見れば若い令嬢たちは皆愛らしい色合いのドレスに身を包んでいるし、彼の言葉に正当性を感じない。
それでも子供なのだから言う事を聞けと年上の彼に言われてしまうとこれ以上文句も言えない、そんな鬱屈とした気持ちを抱えていた。
そんな中、ある日、王宮でのお茶会で変わり者の王子に出会い、その素直な言葉に、フィオナの価値観はがらりと変わっていくのだった。
変わり者の王子と大人になりたい主人公のお話です。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる