無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

文字の大きさ
上 下
41 / 81

3章 9 護衛騎士として

しおりを挟む
「護衛騎士ですか? カインが私たちの護衛騎士をすると言うのですか?」

「はい、そうです」

私の問いかけに頷くカイン。

「ですが、カインは殿下の護衛騎士ですよね? その人が私たちの護衛をするなんて、そんなことして大丈夫なのですか?」

「別にずっとと言う訳ではありません。国境を越えて、次の国に入国するまでの間です。……恐らくこの分だとずっと移動は荷馬車でされるつもりですよね?」

「ええ、そうですよ。リアンナ様は何故か荷馬車の旅にこだわっているんです」

カインの言葉に、リーナは肩をすくめる。

「ここ一帯はまだ治安も良いですが、その先では時々旅人を襲った強奪事件が起きています。なので護衛があった方が安心だと思うのですが」

「え? そうだったのですか?」

う~ん……どうやら平和な日本で暮らしていたので、危険意識が低かったようだ。

「あ、それは私も思っていました。何しろ、ジャンでは頼りになりませんから」

「う、うるさい。ニーナ! 確かに、俺は腕っぷしは全然駄目だけど……」

落ち込んだ様子を見せるジャン。

「旅人の中にはお金で護衛を雇う人たちもいますが、僕がついて行けばその必要は無くなります。お願いです、どうか次の国に入るまで同行させて下さい」

そしてカインは頭を下げてきた。

「どうします? リアンナ様。この人は、ああ言ってますけど……殿下の犬なんですよね?」

「私たちの後をこっそりつけていただけじゃなく、伝書鳩も使って報告していたのですよ? 信用していいものでしょうか?」

ジャンもニーナもカインを前に堂々と私に自分たちの意見を述べてくる。
その言葉に、カインは増々申し訳なさそうに俯いてしまった。確かに、彼は殿下に命じられて私たちを監視していた。
どうせ断っても、彼は私たちの後をついていくだろう。

だったら……。

「いいですよ。それでは次の国に入国するまで、護衛をお願い出来ますか? いいよね? ジャン、ニーナ」

二人の顔を交互に見比べた。

「リアンナ様の意見に従いますよ」
「私もジャンと同意見です」

「え? それでは……?」

カインが顔を上げる。

「はい。今日から暫くの間、私達の護衛と助手をお願いします」

「ありがとうございます! あの……ところで助手というのは……?」

「勿論、マジックの助手ですよ」

「ええ!? ぼ、僕に助手を……ですか!?」

私の言葉にカインは驚きの表情を浮かべた。

「はい、そうです」

カインは騎士にしておくのがもったいない程のイケメンだ。彼がマジックの助手をしてくれれば、さらに人が集まるかもしれない。

「分かりました。騎士の名にかけて、助手の仕事も頑張ります!」

「何もそんな大げさに考えなくても良いですから。気楽な気持ちでお願いします」

「いえ。いい加減な気持ちでは助手は務まりませんから。誠心誠意をこめて頑張りますので、どうぞ御指導の程よろしくお願いします」

何処までも生真面目なカイン。まるで体育会系のノリのようだ。
でも、これが彼の気質なのだろう。
何しろ私が城で全員から白い目で見られ、蔑みの言葉を受けてもカインだけは違った。きっと、誠実な人なのだろう。

「はい。こちらこそよろしくお願いします」

私は笑顔で返事をした――


しおりを挟む
感想 95

あなたにおすすめの小説

所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜

しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。 高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。 しかし父は知らないのだ。 ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。 そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。 それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。 けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。 その相手はなんと辺境伯様で——。 なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。 彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。 それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。 天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。 壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

処理中です...