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2章 9 視線の主は
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「「え?」」
二人で一緒に振り向くと、フードを目深に被った男性が駆け寄ってきた。
「すみません。自分のハトがこちらにお邪魔してしまったようです。大変ご迷惑をおかけいたしました」
口元しか見えない男性が謝罪の言葉を述べてきた。
「あ、ハトって……あの大きなハトのことですか?」
ニーナが尋ねる。
「はい、そうです。大変ご迷惑をおかけいたしました。おいで、オスカー」
すると突然羽音を立ててハトが飛び立ち、何故か私の右肩に降り立った。
「クルックルッ!」
「えぇっ!?」
あまりの突然の出来事に驚くと、男性も戸惑った様子をみせる。
「こ、こら! オスカー! こっちへ来い!」
男性が私の肩に止まるハトに手を伸ばしかけた時。
「ちょっと待ってください! 何をしているんですか!」
突然ジャンの大きな声が響き渡った。
「あ、ジャン!」
声をかけるとジャンが駆け寄り、男性の前に立ちふさがった。
「一体誰だ? リアンナ様に何をしようとしていた!?」
「い、いや。僕はただ……そのハトを……」
「ジャン、この人怪しいわ。自分のハトだって言ってる割に、このハトは逃げてリアンナ様の肩に止まったのよ」
ニーナの言葉に目を見開くジャン。
「何だって? それは怪しいな。 お前は一体誰なんだ? 顔ぐらい見せろ!」
すると男性は観念したのか、ため息をつくとフードを外した。
「別に怪しい者ではありません。僕ですよ、リアンナ様」
現れたのは見事な黒髪に青い瞳の美しい青年だった。
「え? ええと……あなたは……? すみません。失礼ですが、どちらさまでしたっけ?」
「え? 僕のこと、覚えていないのですか? カインですよ」
黒髪の青年が困った様子で私を見つめる。
「カイン……? あ! 思い出しました! 私を城の出口まで案内してくれた方ですね? その節はお世話になりま……」
そのとき、ふと違和感を抱いた。カインが私を見る視線に、どことなく覚えがある。
じっと見つめると、何故か彼はサッと目をそらせた。
すると、ニーナが口を開いた。
「……どうも何だか怪しいですね? こちらのハトは伝書鳩ですよね? 何故そのハトがリアンナ様に懐いているのですか?」
懐く……確かにそうかもしれない。何故か私の肩に乗ったハトは嬉しそう? に私に頬ずりしているのだ。
なんて、可愛い!
「そ、それはこちらが聞きたいことです。僕にも何故リアンナ様にオスカーがこんなにも懐いているか分かりません」
カインの声をもう一度聞いて、思い出した。
「あ! その声……思い出しました! イナクの村の宿屋で、ハトの餌を教えてくれた人ですよね!?」
自慢ではないが、私は耳が良い方なのだ。
「うっ!」
「言葉に詰まるということは、図星ということですね? 私達をつけていたのですか? ずっと感じていた視線は……もしかして、あなただったのですか!?」
「えっ!? 気付いて……!」
そこまで言いかけ、カインは慌てて口を抑えた。けれど、今の態度でもう一目瞭然だ。
「やっぱり、あなただったのですね? どうして私達をつけていたのですか?」
「……それは、レオポルト殿下の命令だったから……です……」
観念したのか、カインはその名を口にした――
二人で一緒に振り向くと、フードを目深に被った男性が駆け寄ってきた。
「すみません。自分のハトがこちらにお邪魔してしまったようです。大変ご迷惑をおかけいたしました」
口元しか見えない男性が謝罪の言葉を述べてきた。
「あ、ハトって……あの大きなハトのことですか?」
ニーナが尋ねる。
「はい、そうです。大変ご迷惑をおかけいたしました。おいで、オスカー」
すると突然羽音を立ててハトが飛び立ち、何故か私の右肩に降り立った。
「クルックルッ!」
「えぇっ!?」
あまりの突然の出来事に驚くと、男性も戸惑った様子をみせる。
「こ、こら! オスカー! こっちへ来い!」
男性が私の肩に止まるハトに手を伸ばしかけた時。
「ちょっと待ってください! 何をしているんですか!」
突然ジャンの大きな声が響き渡った。
「あ、ジャン!」
声をかけるとジャンが駆け寄り、男性の前に立ちふさがった。
「一体誰だ? リアンナ様に何をしようとしていた!?」
「い、いや。僕はただ……そのハトを……」
「ジャン、この人怪しいわ。自分のハトだって言ってる割に、このハトは逃げてリアンナ様の肩に止まったのよ」
ニーナの言葉に目を見開くジャン。
「何だって? それは怪しいな。 お前は一体誰なんだ? 顔ぐらい見せろ!」
すると男性は観念したのか、ため息をつくとフードを外した。
「別に怪しい者ではありません。僕ですよ、リアンナ様」
現れたのは見事な黒髪に青い瞳の美しい青年だった。
「え? ええと……あなたは……? すみません。失礼ですが、どちらさまでしたっけ?」
「え? 僕のこと、覚えていないのですか? カインですよ」
黒髪の青年が困った様子で私を見つめる。
「カイン……? あ! 思い出しました! 私を城の出口まで案内してくれた方ですね? その節はお世話になりま……」
そのとき、ふと違和感を抱いた。カインが私を見る視線に、どことなく覚えがある。
じっと見つめると、何故か彼はサッと目をそらせた。
すると、ニーナが口を開いた。
「……どうも何だか怪しいですね? こちらのハトは伝書鳩ですよね? 何故そのハトがリアンナ様に懐いているのですか?」
懐く……確かにそうかもしれない。何故か私の肩に乗ったハトは嬉しそう? に私に頬ずりしているのだ。
なんて、可愛い!
「そ、それはこちらが聞きたいことです。僕にも何故リアンナ様にオスカーがこんなにも懐いているか分かりません」
カインの声をもう一度聞いて、思い出した。
「あ! その声……思い出しました! イナクの村の宿屋で、ハトの餌を教えてくれた人ですよね!?」
自慢ではないが、私は耳が良い方なのだ。
「うっ!」
「言葉に詰まるということは、図星ということですね? 私達をつけていたのですか? ずっと感じていた視線は……もしかして、あなただったのですか!?」
「えっ!? 気付いて……!」
そこまで言いかけ、カインは慌てて口を抑えた。けれど、今の態度でもう一目瞭然だ。
「やっぱり、あなただったのですね? どうして私達をつけていたのですか?」
「……それは、レオポルト殿下の命令だったから……です……」
観念したのか、カインはその名を口にした――
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