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2章 4 これだけは譲れない
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――翌朝
6時に起きた私はウサギの餌と、ハトの餌を持って外に出た。
宿屋の隣には1本の巨木が生えており、その枝にギンバトたちが止まって羽を休めているのだ。
「みんなー! ご飯よ!」
巨木の枝に止まっているギンバトたちに声をかけると、バサバサと羽音を立てながら一斉に私の前に舞い降りてきた。
そして、荷馬車の中からは3匹のウサギが顔をのぞかせる。
「フフフ……みんな、本当にお利口ね」
ギンバト達の前に麦をまくと、クルックルッと鳴きながら一斉に餌をついばむ。
そんなハト達の様子を見届けると、次に私は荷馬車に向かった。
「はい、ご飯だよ」
ウサギ達の前に、カゴに入れたキャベツとセロリを置いてあげた。
するとむしゃむしゃと美味しそうに野菜を食べる3匹のウサギたち。
「フフッ。本当に可愛い。しかも真っ白で小さくておとなしいからマジックに役立ってくれそうね」
笑顔で私はウサギの背を撫でるのだった――
****
「リアンナ様。今日はこの後、どうされるのですか?」
皆で朝食後のお茶を飲んでいると、ニーナが尋ねてきた。
「すぐに次の町へ向かいますか?」
ジャンも尋ねてくる。
「そうねぇ……ジャン、次の町へは馬車でどのくらいで行けそう?」
「う~ん。ちょっと待ってくださいね」
ジャンは上着のポケットから地図を取り出すと、バサバサと広げてじっと見る。
「……おそらく、3時間程で到着できそうですよ。次は小さな町ですね。港のある町までは、まだ大分先です。汽車を仕えば早く到着できますけど……」
チラリとジャンが私を見る。きっとジャンは汽車を使いたいのだろうが……。
「それは駄目」
「「なぜですか!?」」
ジャンとニーナが声を揃える。
「だって荷馬車で進むのが、この旅の醍醐味なのよ」
これだけはどうしても譲れない。
「ですが、リアンナ様。一刻も早くこの国を離れた方が良いのではありませんか?」
「そうですよ。ニーナの言う通りです。まだ国境を超えるには何百キロも先なんですよ? リアンナ様に酷いことをした王太子様がいるこの国を早く出たほうが良いのではありませんか?」
ニーナとジャンは周囲で食事をしている人たちを気にしながら、小声で私を説得しようとしている。
確かに、汽車に乗ればあっという間に先へ行けるだろう。
だけど電車なら前世でいやと言うほど乗ってきたし、私は馬車の旅に憧れているのだ。
「いいじゃない、のんびり進みましょうよ。急ぐ旅でも無いし、気に入った場所が見るかれば定住してもいいんだから。それにね、私は出来るだけ多くの村や町でマジックを披露したいの。世界中の人々に夢や希望を与えたいのよ!」
最後は2人が感動するような台詞で決めてみた。
「そうだったのですか……俺、気づきませんでした。そんな思いがあったのですね?」
「リアンナ様、私……感動しました!」
「そう? 分かってくれたならいいのよ。というわけで、今日もここでマジックを披露するわよ」
するとニーナが尋ねてきた。
「それでは本日はどのようなマジックを披露されるのですか?」
「フッフッフッ……今日のマジックは今までのとは一味違うわよ? きっと今まで以上に目を見張るマジックになること、間違いないわ」
そう、今日こそあのマジックを披露するのだ。
さぞかし、村人たちは度肝を抜くに違いない……!
私は心のなかでほくそ笑んだ。
そして予想通り、このマジックにより村人たちは全員度肝を抜くことになる。
何故か、この私も含めて――
6時に起きた私はウサギの餌と、ハトの餌を持って外に出た。
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「みんなー! ご飯よ!」
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そして、荷馬車の中からは3匹のウサギが顔をのぞかせる。
「フフフ……みんな、本当にお利口ね」
ギンバト達の前に麦をまくと、クルックルッと鳴きながら一斉に餌をついばむ。
そんなハト達の様子を見届けると、次に私は荷馬車に向かった。
「はい、ご飯だよ」
ウサギ達の前に、カゴに入れたキャベツとセロリを置いてあげた。
するとむしゃむしゃと美味しそうに野菜を食べる3匹のウサギたち。
「フフッ。本当に可愛い。しかも真っ白で小さくておとなしいからマジックに役立ってくれそうね」
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「リアンナ様。今日はこの後、どうされるのですか?」
皆で朝食後のお茶を飲んでいると、ニーナが尋ねてきた。
「すぐに次の町へ向かいますか?」
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「そうねぇ……ジャン、次の町へは馬車でどのくらいで行けそう?」
「う~ん。ちょっと待ってくださいね」
ジャンは上着のポケットから地図を取り出すと、バサバサと広げてじっと見る。
「……おそらく、3時間程で到着できそうですよ。次は小さな町ですね。港のある町までは、まだ大分先です。汽車を仕えば早く到着できますけど……」
チラリとジャンが私を見る。きっとジャンは汽車を使いたいのだろうが……。
「それは駄目」
「「なぜですか!?」」
ジャンとニーナが声を揃える。
「だって荷馬車で進むのが、この旅の醍醐味なのよ」
これだけはどうしても譲れない。
「ですが、リアンナ様。一刻も早くこの国を離れた方が良いのではありませんか?」
「そうですよ。ニーナの言う通りです。まだ国境を超えるには何百キロも先なんですよ? リアンナ様に酷いことをした王太子様がいるこの国を早く出たほうが良いのではありませんか?」
ニーナとジャンは周囲で食事をしている人たちを気にしながら、小声で私を説得しようとしている。
確かに、汽車に乗ればあっという間に先へ行けるだろう。
だけど電車なら前世でいやと言うほど乗ってきたし、私は馬車の旅に憧れているのだ。
「いいじゃない、のんびり進みましょうよ。急ぐ旅でも無いし、気に入った場所が見るかれば定住してもいいんだから。それにね、私は出来るだけ多くの村や町でマジックを披露したいの。世界中の人々に夢や希望を与えたいのよ!」
最後は2人が感動するような台詞で決めてみた。
「そうだったのですか……俺、気づきませんでした。そんな思いがあったのですね?」
「リアンナ様、私……感動しました!」
「そう? 分かってくれたならいいのよ。というわけで、今日もここでマジックを披露するわよ」
するとニーナが尋ねてきた。
「それでは本日はどのようなマジックを披露されるのですか?」
「フッフッフッ……今日のマジックは今までのとは一味違うわよ? きっと今まで以上に目を見張るマジックになること、間違いないわ」
そう、今日こそあのマジックを披露するのだ。
さぞかし、村人たちは度肝を抜くに違いない……!
私は心のなかでほくそ笑んだ。
そして予想通り、このマジックにより村人たちは全員度肝を抜くことになる。
何故か、この私も含めて――
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