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第13話 出ていくのは貴方の方です
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「旦那様。もう一度尋ねます。今、私に何と言ったのですか?」
「ああ、何度でも言ってやる。おまえみたいな女はお断りだ。黒縁メガネに黒いひっつめ髪。ただでさえ根暗そうに見えるのに辛気臭い色の服ばかり着やがって。おまけに口を開けば仕事をしろの一点張り。もう、うんざりなんだよ!」
腕組みするとフンと鼻を鳴らすヘンリー。
「私達は、ここ『イナカ』の領主なのですよ? 領民たちのため、領地のために仕事をするのは当然です。旦那様が仕事をしないから、私が代理を勤めているのですよ?そうでなければ、とっくに『イナカ』は終わっています」
「うるさい! 俺はまだ正式な領主じゃない! 親父が領主なんだ! もし、『イナカ』が終わっているなら、仕事を放棄した親父の責任だ! 第一、勝手に仕事をしていたのはおまえだろう!? 俺に強要するなよ!」
しかし、何を言われようとジャンヌは一切動じない。
「なるほど、正式な領主じゃないから、仕事をしないというわけですか? だから毎日毎日遊び呆けていたと言うのですね? しかも様々な女性相手に。そのような勝手な真似が許されるとでも思っているのでしょうか?」
「な、何だ? 文句あるのか? お前は俺を妻だと認めていないと言っただろう? もしかしておまえ、ヤキモチでも焼いているつもりか?」
「ヤキモチですって? フッ。寝言を言うのはやめていただけますか?」
するとその言葉にジャンヌは鼻で笑った。
「はぁ!? お、おまえ……い、今鼻で笑ったな!? 醜女のくせに!」
「醜女……これも記録に残したほうがいいわね」
ジャンヌはポケットからメモ帳を取り出すと、机の上に置かれたペンでサラサラと何かを書き込んでいく。
「おい? 一体何を書いているんだ?」
問いかけに答えることなく、ジャンヌはメモ帳をしまうと、再びヘンリーに向き直った。
「ええ。笑いましたよ。私が言いたいのはそのようなことではありません。貴方はブロンドの若い女性ばかりに手を出していましたね? しかも相手が人妻であろうと」
「うっ!」
「女性たちの夫から訴えが届いておりますよ? 妻が寝取られてしまったので何とかして欲しいと。可哀想に……彼らは相手が領主であるから何も言えないのでしょう」
「だ、だがなぁ! 俺にばかり、罪をなすりつけるなよ! だったら相手の女だって悪いだろう! 嫌ならついてこなきゃいいんだ!」
「まだ、そのような寝言をほざいてらっしゃるのですか? 相手の女性は領主様に逆らえなかったと話しておりましたよ?」
腕組みすると、ジャンヌはジロリと睨みつけた。
「何だって!? そんなのは嘘だ、デタラメだ! 彼女たちは皆喜んで俺についてきたぞ! いい加減な話ばかりしやがって……もう限界だ! さっさと荷物をまとめて出ていけって言ってるだろう!」
すると……。
「いいえ、旦那様。出ていくのはあなたのほうです」
ジャンヌはメガネを外すと、美しい青い瞳で睨みつけた。
「そうです。ヘンリー様。あなたは規約を破りました。よって、ここを出ていかなければなりません」
音も立てずにマイクがヘンリーの背後から声をかけてきた。
「うわぁ!! 気配を隠して背後に立つなって前から言ってるだろう!? それに、何だよ! マイク! おまえ、一体誰の味方なんだ!」
『奥様の味方に決まっています!!』
突如、使用人たちが部屋の中になだれ込んできた。
「な、な、何なんだよ! お前たち……それに規約って一体何のことだよ!」
ヘンリーは震える指先で、ジャンヌを指差す。
「まぁ、旦那様……いえ、ヘンリー。規約にも目を通されていなかったのですね? 本当に何から何までいい加減な方ですわね?」
ジャンヌは引き出しから2枚の書類を取り出すと、マイクに手渡した。
「マイクさん、結婚に関する規約をこの男に聞かせてやってくださいませんか?」
「お、男って……おまえ、一体何様のつもりだよ!」
「だまりなさい! 言いか、よく聞くがよい、ヘンリー」
ついにマイクまで態度を豹変させると、怯えるヘンリーの前で規約を述べ始めた――
「ああ、何度でも言ってやる。おまえみたいな女はお断りだ。黒縁メガネに黒いひっつめ髪。ただでさえ根暗そうに見えるのに辛気臭い色の服ばかり着やがって。おまけに口を開けば仕事をしろの一点張り。もう、うんざりなんだよ!」
腕組みするとフンと鼻を鳴らすヘンリー。
「私達は、ここ『イナカ』の領主なのですよ? 領民たちのため、領地のために仕事をするのは当然です。旦那様が仕事をしないから、私が代理を勤めているのですよ?そうでなければ、とっくに『イナカ』は終わっています」
「うるさい! 俺はまだ正式な領主じゃない! 親父が領主なんだ! もし、『イナカ』が終わっているなら、仕事を放棄した親父の責任だ! 第一、勝手に仕事をしていたのはおまえだろう!? 俺に強要するなよ!」
しかし、何を言われようとジャンヌは一切動じない。
「なるほど、正式な領主じゃないから、仕事をしないというわけですか? だから毎日毎日遊び呆けていたと言うのですね? しかも様々な女性相手に。そのような勝手な真似が許されるとでも思っているのでしょうか?」
「な、何だ? 文句あるのか? お前は俺を妻だと認めていないと言っただろう? もしかしておまえ、ヤキモチでも焼いているつもりか?」
「ヤキモチですって? フッ。寝言を言うのはやめていただけますか?」
するとその言葉にジャンヌは鼻で笑った。
「はぁ!? お、おまえ……い、今鼻で笑ったな!? 醜女のくせに!」
「醜女……これも記録に残したほうがいいわね」
ジャンヌはポケットからメモ帳を取り出すと、机の上に置かれたペンでサラサラと何かを書き込んでいく。
「おい? 一体何を書いているんだ?」
問いかけに答えることなく、ジャンヌはメモ帳をしまうと、再びヘンリーに向き直った。
「ええ。笑いましたよ。私が言いたいのはそのようなことではありません。貴方はブロンドの若い女性ばかりに手を出していましたね? しかも相手が人妻であろうと」
「うっ!」
「女性たちの夫から訴えが届いておりますよ? 妻が寝取られてしまったので何とかして欲しいと。可哀想に……彼らは相手が領主であるから何も言えないのでしょう」
「だ、だがなぁ! 俺にばかり、罪をなすりつけるなよ! だったら相手の女だって悪いだろう! 嫌ならついてこなきゃいいんだ!」
「まだ、そのような寝言をほざいてらっしゃるのですか? 相手の女性は領主様に逆らえなかったと話しておりましたよ?」
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「何だって!? そんなのは嘘だ、デタラメだ! 彼女たちは皆喜んで俺についてきたぞ! いい加減な話ばかりしやがって……もう限界だ! さっさと荷物をまとめて出ていけって言ってるだろう!」
すると……。
「いいえ、旦那様。出ていくのはあなたのほうです」
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「そうです。ヘンリー様。あなたは規約を破りました。よって、ここを出ていかなければなりません」
音も立てずにマイクがヘンリーの背後から声をかけてきた。
「うわぁ!! 気配を隠して背後に立つなって前から言ってるだろう!? それに、何だよ! マイク! おまえ、一体誰の味方なんだ!」
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「お、男って……おまえ、一体何様のつもりだよ!」
「だまりなさい! 言いか、よく聞くがよい、ヘンリー」
ついにマイクまで態度を豹変させると、怯えるヘンリーの前で規約を述べ始めた――
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