60 / 72
第60話 美味しいワインと不味い料理
しおりを挟む
「メイ、まずは前祝いの乾杯をしよう、おっとその前に雰囲気作りが先だな」
は?雰囲気作り?デニムのくせに何を言うのだろう?するとデニムはニコニコしながら、いつの間に用意していたのかテーブルの上に置かれた3本の蝋燭が立てられた銀の燭台にマッチで火を着けようとし…。
「キャアアアッ!やめてえぇぇぇっ!!」
私は絶叫するとデニムの腕を捕まえた。
「うわっ!な、何をするっ!!」
デニムは驚いたように私を見た。
「それはこちらの台詞です!何を血迷ったのですかっ!もし火の着いた燭台が倒れてこのアンティークテーブルが燃えてしまったらどうするつもりですかっ?!早く燭台をどかして下さいっ!」
「わ、分かった!分かったからくっつくな!燭台をどかせないじゃないか!」
何故か耳まで顔を真っ赤にして悶えるデニム。
「はい、離れましたからちゃっちゃと片付けて下さい」
パッとデニムから離れて両手のひらを肩まであげると言った。
「あ、ああ…」
デニムは燭台をどかして書斎机に置くと再びテーブルの前に戻ってきた。
「コホン…では改めて…メイ。向かい側に座ってくれ」
「はい…」
今度こそ私も着席すると、デニムがワイングラスを手にとった。
「メイ、お前もワイングラスを持て」
「はぁ」
渋々ワングラスを手に取る。これがヴィンテージもののワインじゃ無ければさっさと部屋に帰って休んでいるのに…。
「では、我々の輝かしい未来を祝って…乾杯!」
そしてデニムはグイッとワインを飲み干した。
「乾杯」
私も阿呆デニムにならってワインを飲む。しかしそれにしても…輝かしい未来?少なくとも私にとってはそうかもしれないが、デニムに取っては絶望の未来になるのに?
「それで、メイ。話はうまくついたのだろうな?」
「ええ、勿論です」
明日のお見合いは予定通り行えるとね!
「そ、そうか…メイ。お、お前にはいつも感謝している…」
何故か頬を赤らめて私から視線をそらすデニム。
「いえ、どう致しまして。お役に立てて光栄です」
私は心にも無いことを言い、グラスの中のワインを飲み干した。私のグラスが空いた事に気付いたのか、デニムが声を掛けてきた。
「メイ、もっと飲むか?」
「そうですね、いただけるのであれば」
正直言うと、こんな男とはワインなど飲みたくも無いが、やはりヴィンテージもののワインの魅力には贖えなかった。
「メイ、一皿しか用意できなかったが料理も食べないか?」
デニムは私の前に皿を差し出してきた。
「…」
皿の上にはすっかり冷めてしまったチーズのかかったフライドポテトが乗っていた。
…最悪の組み合わせだ。油で揚げたポテトなんて冷めれば固くなって油っぽくなるし、チーズだって冷めたら固くなってしまう。
「…料理としては最悪の組み合わせですね…」
ボソリと本音を呟く。大体フライドポテトにとろ~りチーズ…お子様舌のデニムの好きなメニューだ。しかし、はっきり言って私にとっては、ワインと共に食したい料理では断じて無い!
「駄目だったか?この料理…」
デニムは首を傾げる。きっと阿呆デニムは冷めた料理等口にしたことがないのだろう。
「私は結構です。どうぞデニム様だけ食べて下さい」
皿をデニムの前に押しやると、私は勝手にワインをグラスに注いでグイッと飲んだ。
「仕方ない、お前の為に用意したのだがな…」
言いながらデニムはすっかり冷めたフライドポテトを口にし…顔をしかめて皿を端の様に追いやった。
やっぱり口に合わなかったのだな?
「ま、まあいい。今夜はワインだけ楽しもう」
デニムはワイングラスにワインを注ぐと私に言った。
「そ、それでメイ…本題に入るが…どうだ?俺の専属にならないか?」
「は?」
デニムは突拍子もない話を切り出してきた―。
は?雰囲気作り?デニムのくせに何を言うのだろう?するとデニムはニコニコしながら、いつの間に用意していたのかテーブルの上に置かれた3本の蝋燭が立てられた銀の燭台にマッチで火を着けようとし…。
「キャアアアッ!やめてえぇぇぇっ!!」
私は絶叫するとデニムの腕を捕まえた。
「うわっ!な、何をするっ!!」
デニムは驚いたように私を見た。
「それはこちらの台詞です!何を血迷ったのですかっ!もし火の着いた燭台が倒れてこのアンティークテーブルが燃えてしまったらどうするつもりですかっ?!早く燭台をどかして下さいっ!」
「わ、分かった!分かったからくっつくな!燭台をどかせないじゃないか!」
何故か耳まで顔を真っ赤にして悶えるデニム。
「はい、離れましたからちゃっちゃと片付けて下さい」
パッとデニムから離れて両手のひらを肩まであげると言った。
「あ、ああ…」
デニムは燭台をどかして書斎机に置くと再びテーブルの前に戻ってきた。
「コホン…では改めて…メイ。向かい側に座ってくれ」
「はい…」
今度こそ私も着席すると、デニムがワイングラスを手にとった。
「メイ、お前もワイングラスを持て」
「はぁ」
渋々ワングラスを手に取る。これがヴィンテージもののワインじゃ無ければさっさと部屋に帰って休んでいるのに…。
「では、我々の輝かしい未来を祝って…乾杯!」
そしてデニムはグイッとワインを飲み干した。
「乾杯」
私も阿呆デニムにならってワインを飲む。しかしそれにしても…輝かしい未来?少なくとも私にとってはそうかもしれないが、デニムに取っては絶望の未来になるのに?
「それで、メイ。話はうまくついたのだろうな?」
「ええ、勿論です」
明日のお見合いは予定通り行えるとね!
「そ、そうか…メイ。お、お前にはいつも感謝している…」
何故か頬を赤らめて私から視線をそらすデニム。
「いえ、どう致しまして。お役に立てて光栄です」
私は心にも無いことを言い、グラスの中のワインを飲み干した。私のグラスが空いた事に気付いたのか、デニムが声を掛けてきた。
「メイ、もっと飲むか?」
「そうですね、いただけるのであれば」
正直言うと、こんな男とはワインなど飲みたくも無いが、やはりヴィンテージもののワインの魅力には贖えなかった。
「メイ、一皿しか用意できなかったが料理も食べないか?」
デニムは私の前に皿を差し出してきた。
「…」
皿の上にはすっかり冷めてしまったチーズのかかったフライドポテトが乗っていた。
…最悪の組み合わせだ。油で揚げたポテトなんて冷めれば固くなって油っぽくなるし、チーズだって冷めたら固くなってしまう。
「…料理としては最悪の組み合わせですね…」
ボソリと本音を呟く。大体フライドポテトにとろ~りチーズ…お子様舌のデニムの好きなメニューだ。しかし、はっきり言って私にとっては、ワインと共に食したい料理では断じて無い!
「駄目だったか?この料理…」
デニムは首を傾げる。きっと阿呆デニムは冷めた料理等口にしたことがないのだろう。
「私は結構です。どうぞデニム様だけ食べて下さい」
皿をデニムの前に押しやると、私は勝手にワインをグラスに注いでグイッと飲んだ。
「仕方ない、お前の為に用意したのだがな…」
言いながらデニムはすっかり冷めたフライドポテトを口にし…顔をしかめて皿を端の様に追いやった。
やっぱり口に合わなかったのだな?
「ま、まあいい。今夜はワインだけ楽しもう」
デニムはワイングラスにワインを注ぐと私に言った。
「そ、それでメイ…本題に入るが…どうだ?俺の専属にならないか?」
「は?」
デニムは突拍子もない話を切り出してきた―。
0
お気に入りに追加
690
あなたにおすすめの小説
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
所詮、わたしは壁の花 〜なのに辺境伯様が溺愛してくるのは何故ですか?〜
しがわか
ファンタジー
刺繍を愛してやまないローゼリアは父から行き遅れと罵られていた。
高貴な相手に見初められるために、とむりやり夜会へ送り込まれる日々。
しかし父は知らないのだ。
ローゼリアが夜会で”壁の花”と罵られていることを。
そんなローゼリアが参加した辺境伯様の夜会はいつもと雰囲気が違っていた。
それもそのはず、それは辺境伯様の婚約者を決める集まりだったのだ。
けれど所詮”壁の花”の自分には関係がない、といつものように会場の隅で目立たないようにしているローゼリアは不意に手を握られる。
その相手はなんと辺境伯様で——。
なぜ、辺境伯様は自分を溺愛してくれるのか。
彼の過去を知り、やがてその理由を悟ることとなる。
それでも——いや、だからこそ辺境伯様の力になりたいと誓ったローゼリアには特別な力があった。
天啓<ギフト>として女神様から賜った『魔力を象るチカラ』は想像を創造できる万能な能力だった。
壁の花としての自重をやめたローゼリアは天啓を自在に操り、大好きな人達を守り導いていく。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
公爵家の家族ができました。〜記憶を失くした少女は新たな場所で幸せに過ごす〜
月
ファンタジー
記憶を失くしたフィーは、怪我をして国境沿いの森で倒れていたところをウィスタリア公爵に助けてもらい保護される。
けれど、公爵家の次女フィーリアの大切なワンピースを意図せず着てしまい、双子のアルヴァートとリティシアを傷付けてしまう。
ウィスタリア公爵夫妻には五人の子どもがいたが、次女のフィーリアは病気で亡くなってしまっていたのだ。
大切なワンピースを着てしまったこと、フィーリアの愛称フィーと公爵夫妻から呼ばれたことなどから双子との確執ができてしまった。
子どもたちに受け入れられないまま王都にある本邸へと戻ることになってしまったフィーに、そのこじれた関係のせいでとある出来事が起きてしまう。
素性もわからないフィーに優しくしてくれるウィスタリア公爵夫妻と、心を開き始めた子どもたちにどこか後ろめたい気持ちを抱いてしまう。
それは夢の中で見た、フィーと同じ輝くような金色の髪をした男の子のことが気になっていたからだった。
夢の中で見た、金色の花びらが舞う花畑。
ペンダントの金に彫刻された花と水色の魔石。
自分のことをフィーと呼んだ、夢の中の男の子。
フィーにとって、それらは記憶を取り戻す唯一の手がかりだった。
夢で会った、金色の髪をした男の子との関係。
新たに出会う、友人たち。
再会した、大切な人。
そして成長するにつれ周りで起き始めた不可解なこと。
フィーはどのように公爵家で過ごしていくのか。
★記憶を失くした代わりに前世を思い出した、ちょっとだけ感情豊かな少女が新たな家族の優しさに触れ、信頼できる友人に出会い、助け合い、そして忘れていた大切なものを取り戻そうとするお話です。
※前世の記憶がありますが、転生のお話ではありません。
※一話あたり二千文字前後となります。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
【完結】政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
ごめんなさい、お姉様の旦那様と結婚します
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
しがない伯爵令嬢のエーファには、三つ歳の離れた姉がいる。姉のブリュンヒルデは、女神と比喩される程美しく完璧な女性だった。端麗な顔立ちに陶器の様に白い肌。ミルクティー色のふわふわな長い髪。立ち居振る舞い、勉学、ダンスから演奏と全てが完璧で、非の打ち所がない。正に淑女の鑑と呼ぶに相応しく誰もが憧れ一目置くそんな人だ。
一方で妹のエーファは、一言で言えば普通。容姿も頭も、芸術的センスもなく秀でたものはない。無論両親は、エーファが物心ついた時から姉を溺愛しエーファには全く関心はなかった。周囲も姉とエーファを比較しては笑いの種にしていた。
そんな姉は公爵令息であるマンフレットと結婚をした。彼もまた姉と同様眉目秀麗、文武両道と完璧な人物だった。また周囲からは冷笑の貴公子などとも呼ばれているが、令嬢等からはかなり人気がある。かく言うエーファも彼が初恋の人だった。ただ姉と婚約し結婚した事で彼への想いは断念をした。だが、姉が結婚して二年後。姉が事故に遭い急死をした。社交界ではおしどり夫婦、愛妻家として有名だった夫のマンフレットは憔悴しているらしくーーその僅か半年後、何故か妹のエーファが後妻としてマンフレットに嫁ぐ事が決まってしまう。そして迎えた初夜、彼からは「私は君を愛さない」と冷たく突き放され、彼が家督を継ぐ一年後に離縁すると告げられた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる