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21 追い詰める私

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 一体誰がこの部屋に現れたのか、全く検討がつかなかった私は扉に目を凝らした。明かりを背に立っている人物は顔はよく見えないが、ドレス姿である。
まさか、彼女は……

「あなた! 一体ここで何をしていたのですか!?」

「オフィーリアか? 丁度よいところへ来てくれた!」

クラウスは突然部屋に現れたオフィーリアの姿に喜ぶも、彼女は怒りを顕にする。

「何が丁度よいところよ! クラウス! こんなところで一体何をしていたの!?」

「落ち着け、オフィーリア。 それよりも聞いてくれ! あの女は……!」

オフィーリアの言葉を遮るように激しく首を振るクラウス。しかし、頭に血が登っているのか、彼女は聞く耳を持たない。

「何が違うと言うのですか! 大方、また女に手を出すために寝所に引き連れてきたのでしょう! しかも今度はメイドではなく、そこの姫を!」

オフィーリアは私に向けて指をさすと、ズカズカと部屋の中に入ってきた。その目は怒りに燃えている。

「違う! あの女は姫ではない! 悪魔なのだ!」

あろうことか、クラウスは私に向かって悪魔と言い切った。

「何が悪魔よ! この女は『モリス』王国の姫でしょう! この泥棒猫め! 夫をたぶらかして、王妃の座を奪うつもりね! 子の出来なかった私の代わりに自分の子供を産むつもりでしょう! そうはいかないわ!」

「え……? 私がクラウスを奪う……? アハハハハハ!」

あまりの言い方に、私は呆れを通り越して笑いがこみ上げてしまった。私が突然笑いだしたことにクラウスは唖然としている。
一方のオフィーリアはバカにされたと思ったのか、激怒した。

「何がおかしいっていうの!? 小娘のくせに!」

「だって、ありえない話だもの……この私が、よりにもよってこんな男を奪うはずないでしょう? いえ、それどころか指一本だって触れられたくないわ。虫酸が走るもの」

私は汚らしいものを見るかのようにクラウスに視線を移し、吐き捨てるように言った。

「え……?」

オフィーリアは呆気に取られたかのような顔つきで私を見る。

「この男は私をいつも毛嫌いしていたわ。パーティーに参加しなければならないときだって、いつでも違う女性をエスコートし、私はひとりだった。女の私が騎士であることが気に入らず、軽蔑の眼差しばかり向けていたのよ!」

「な、何をわけのわからないことを言っている!? お前は一体何者だ!」

クラウスは怒りで身体を震わせながら、私を指さしてきた。

「私の正体? 本当は薄々気付いているのでは無いですか? 十年前……二人の策略によって命を奪われてしまった者の名を……」

「え……? 十年前……?」
「ま、まさか……!」

二人の顔色が変わる。

「私の本当の名前は……ユリアナ・ベルンハルトよ。 私と家族を滅ぼしたお前たちに報復する為に戻ってきたのよ」

私は冷たい声で言い放った――



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