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19 怯えるクラウス
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だけど、こうなることはある程度予想をしていた。オフィーリアの話ではクラウスは色々なメイドに手を出していると聞いているのだから。
「どうした? 随分落ち着いているようだが……ああ、ひょっとするとこうなることは予想済みだったのだな? 本当に可愛らしい姫だ……」
まるで鳥肌が立ちそうなセリフだが、私は冷静に対応する。
「陛下、このことは王妃様はご存知なのですか? 私を今夜ここに呼んだということを」
すると下卑た笑いをするクラウス。
「妃にそのような話をするはずがないだろう? 大体我々の間には最初から愛など無い結婚だったのだから」
え……? クラウスの話に耳を疑う。
「陛下と王妃様は互いに思い合って婚姻したのではなかったのですか?」
そう、私という邪魔者を排除してまで……
「いや? それは違う。ただ互いの利益が一致しただけだ。もうそんなことは良いではないか? 今夜は二人で楽しもう。そなたのように高貴な血を持つ女性を相手にするのは久々……! な、何をするのだ!?」
クラウスは驚き、私から身体を離した。
それはそうだろう。私の右手からは小さな炎の玉が浮かんでいるからだ。
「陛下、私に少しでも手を触れようものなら……ただではすみませんよ?」
ベッドから体を起こしながらクラウスを睨みつける。
「さ、さすがは『戦場の魔女』と呼ばれるだけのことはあるな。……実際に魔法を目にするのは初めてだ……だが、おとなしく私に身を委ねたほうが良いぞ? この城で平穏に暮らしたいならな。それに……大方察しがついていたのではないか? 私が今夜呼び出した段階で」
「ええ、そうですね。多少は察していました。ですが、私は陛下のものになるためにここへ来たわけではありません」
「何? なら何故ここへ来たのだ?」
クラウスが眉をひそめる。本当はオフィーリアもまとめて一緒に始末しようと思っていたが、計画は変更だ。
「陛下……いえ、クラウス殿下。今から十年前……貴方は公爵令嬢と婚約をしていましたね? 名前はユリアナ・ベルンハルト。覚えていらっしゃいますか?」
「何? ユリアナ・ベルンハルト……? 何故、そなたがその話を知っているのだ?」
クラウスに動揺が走る。私は構わず話を続ける。
「クラウス様は婚約者を酷く嫌っていた。日に焼けた肌も……女だてらに騎士として剣を振るい、自分よりも強かった彼女を」
「……」
クラウスは何か恐ろしいものでも見るかのような目つきで私を見つめている、
「パーティーに出席しなければならなかったときも、クラウス様は婚約者を連れることはなく、いつも別の女性をパートナーにしていた。可愛そうな彼女はいつもひとりきりでパーティーに出席し、世間からは白い目で見られていました」
「な、何故……?」
唇を震わせるクラウス。
「十年前のあの日は、まるで今にも雨が降り出しそうな夜でした。クラウス様はその日、婚約者を離宮に呼び出した。……婚約破棄を告げる為に」
「い、一体……そなたは何者だ……?」
クラウスの目が明らかに怯えていた――
「どうした? 随分落ち着いているようだが……ああ、ひょっとするとこうなることは予想済みだったのだな? 本当に可愛らしい姫だ……」
まるで鳥肌が立ちそうなセリフだが、私は冷静に対応する。
「陛下、このことは王妃様はご存知なのですか? 私を今夜ここに呼んだということを」
すると下卑た笑いをするクラウス。
「妃にそのような話をするはずがないだろう? 大体我々の間には最初から愛など無い結婚だったのだから」
え……? クラウスの話に耳を疑う。
「陛下と王妃様は互いに思い合って婚姻したのではなかったのですか?」
そう、私という邪魔者を排除してまで……
「いや? それは違う。ただ互いの利益が一致しただけだ。もうそんなことは良いではないか? 今夜は二人で楽しもう。そなたのように高貴な血を持つ女性を相手にするのは久々……! な、何をするのだ!?」
クラウスは驚き、私から身体を離した。
それはそうだろう。私の右手からは小さな炎の玉が浮かんでいるからだ。
「陛下、私に少しでも手を触れようものなら……ただではすみませんよ?」
ベッドから体を起こしながらクラウスを睨みつける。
「さ、さすがは『戦場の魔女』と呼ばれるだけのことはあるな。……実際に魔法を目にするのは初めてだ……だが、おとなしく私に身を委ねたほうが良いぞ? この城で平穏に暮らしたいならな。それに……大方察しがついていたのではないか? 私が今夜呼び出した段階で」
「ええ、そうですね。多少は察していました。ですが、私は陛下のものになるためにここへ来たわけではありません」
「何? なら何故ここへ来たのだ?」
クラウスが眉をひそめる。本当はオフィーリアもまとめて一緒に始末しようと思っていたが、計画は変更だ。
「陛下……いえ、クラウス殿下。今から十年前……貴方は公爵令嬢と婚約をしていましたね? 名前はユリアナ・ベルンハルト。覚えていらっしゃいますか?」
「何? ユリアナ・ベルンハルト……? 何故、そなたがその話を知っているのだ?」
クラウスに動揺が走る。私は構わず話を続ける。
「クラウス様は婚約者を酷く嫌っていた。日に焼けた肌も……女だてらに騎士として剣を振るい、自分よりも強かった彼女を」
「……」
クラウスは何か恐ろしいものでも見るかのような目つきで私を見つめている、
「パーティーに出席しなければならなかったときも、クラウス様は婚約者を連れることはなく、いつも別の女性をパートナーにしていた。可愛そうな彼女はいつもひとりきりでパーティーに出席し、世間からは白い目で見られていました」
「な、何故……?」
唇を震わせるクラウス。
「十年前のあの日は、まるで今にも雨が降り出しそうな夜でした。クラウス様はその日、婚約者を離宮に呼び出した。……婚約破棄を告げる為に」
「い、一体……そなたは何者だ……?」
クラウスの目が明らかに怯えていた――
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