罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
92 / 98

18 クラウスと私

しおりを挟む
「いいえ、別に裏切られてはいません。ジェイクは私をとても大切にしてくれています」

そう……私ではなく、この身体の本当の持ち主であるミレーユを。

「なら、何故この国に来ることにしたのだ?」

「それは、大公が私とジェイクの婚姻を反対していたからです。私のような者はお気に召さなかったのでしょうね。それに私はさんざん母国から姫という立場にありながら戦争に駆り出され、利用されてきました。もう、うんざりなのです。自分の国に復讐しようと決めました。そこで大公の手引で、この国へ来たのです」

クラウスはじっと私の話を聞いている。……こんな作り話を、果たしてクラウスは信じるだろうか? 

すると……

「ハハハハハ! なるほど……随分と面白い話だ!」

突然クラウスが笑った。

「だから、自分の父を殺したのか? ミレーユ姫」

その言葉にビクリと反応してしまった。やはり、この国にも私が国王を殺害したというデマが流れてきているのだろう。

「……それは私ではありません。完全な濡れ衣です。私があの場にいったときには既に父は殺されていました。たまたま床に落ちていた剣を拾い上げたとき、衛兵たちが駆けつけてきて……私が犯人に仕立て上げられてしまったのです」

「それを信じろというのか? 誰も姫の話を信じなかったのだろう?」

ワイングラスを回しながら尋ねてくるクラウス。

「ええ。そうですね。でも……私ではありませんから」

あくまで断片的に残るミレーユの記憶を頼りに話をしているので、はっきりと答えられない。

「だが、そんなことはどうでも良い。何しろ、あの『戦場の魔女』と呼ばれる姫が戦から身を引き……国王は殺され、今あの国は戦争の士気が完全に下がってしまった。おかげで苦戦してい戦況が良い方向に変わってきたのだよ。姫には本当に感謝している」

クラウスがワイングラスをテーブルの上に置いた。

「……いえ、感謝されるほどのものではありません」

「いや、謙遜することは無い。我が国はミレーユ姫を歓迎しよう。ここでは誰もが姫を『戦場の魔女』とは呼ばないだろう。むしろ……」

突然クラウスは立ち上がり、こちらに近づいてくる。警戒した私は椅子から立ち上がった途端、クラウスに手首を強く握りしめられた。

「姫は若く美しい……私が可愛がってやろう。側室にしてやろうじゃないか」

言うなり、私はクラウスに引きずられるように部屋の奥に連れて行かれるとベッドが置かれている。

やはりそうだったのだ。クラウスは……はじめからそのつもりで私を呼び出したのだ。
すると突然クラウスが私を激しくベッドに突き飛ばした。

「きゃあ!」

勢い余ってベッドの上に倒れこむと、すかさずクラウスが覆いかぶさってきた。

その顔は薄暗い中でも分かるほど……欲にまみれた表情だった――
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

お妃さま誕生物語

すみれ
ファンタジー
シーリアは公爵令嬢で王太子の婚約者だったが、婚約破棄をされる。それは、シーリアを見染めた商人リヒトール・マクレンジーが裏で糸をひくものだった。リヒトールはシーリアを手に入れるために貴族を没落させ、爵位を得るだけでなく、国さえも手に入れようとする。そしてシーリアもお妃教育で、世界はきれいごとだけではないと知っていた。 小説家になろうサイトで連載していたものを漢字等微修正して公開しております。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

【完結】貴方たちはお呼びではありませんわ。攻略いたしません!

宇水涼麻
ファンタジー
アンナリセルはあわてんぼうで死にそうになった。その時、前世を思い出した。 前世でプレーしたゲームに酷似した世界であると感じたアンナリセルは自分自身と推しキャラを守るため、攻略対象者と距離を置くことを願う。 そんな彼女の願いは叶うのか? 毎日朝方更新予定です。

愛されない王妃は、お飾りでいたい

夕立悠理
恋愛
──私が君を愛することは、ない。  クロアには前世の記憶がある。前世の記憶によると、ここはロマンス小説の世界でクロアは悪役令嬢だった。けれど、クロアが敗戦国の王に嫁がされたことにより、物語は終わった。  そして迎えた初夜。夫はクロアを愛せず、抱くつもりもないといった。 「イエーイ、これで自由の身だわ!!!」  クロアが喜びながらスローライフを送っていると、なんだか、夫の態度が急変し──!? 「初夜にいった言葉を忘れたんですか!?」

処理中です...