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11 謁見の間
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「全く、なんという騎士たちだ。本物の王女かどうかも分からないのに置いていくとは」
一人の騎士がため息をつく。
「先程も申し上げましたが、私は本物のミレーユです。すぐに国王陛下に会わせて下さい。お会いすればすぐに分かると思います」
本当に国王がミレーユの顔を知っているかどうかなど、この際問題ではない。まずは王宮に入るのが私の目的なのだから。
すると私の言葉に騎士たちが顔を見合わせる。
「どうする?」
「ああ言ってるのだからな……」
「連れて行くだけ連れて行ってみるか?」
暫くの間、彼らは話し合いを続け……私を王宮に連れて行くことが決定した。
「よし、それでは行くぞ」
一番年上と思われる騎士が私に声を掛けてきた。
「はい、お願いします」
こうして私は騎士に連れられて、背後にある巨大な城へ向かった――
****
城内に入り、私は驚いた。何しろホールのいたるところに負傷兵が運び込まれて、無造作に寝かされているからだ。
「これは一体……?」
「ここにいる負傷兵達は全て『アレス』国の兵士たちだ。病院がどこも塞がってしまったからな。だから城のホールを負傷兵の為に貸してやっているのだ。本当に我が国の国王はお優しい方だ」
「……そうですか」
戦わせているのは『アレス』の者たちばかりなのに? おまけにここに運び込まれた負傷兵達は満足いく治療すら受けられていないようだ。
中には血まみれでピクリとも動かない兵士もいる。……ひょっとするともう既に死んでいるのかもしれない。
「う……うぅう……た、助けてく……れ……」
近くを通りかかったとき、負傷兵がうめき声をあげた。思わず足を止めると、直ぐ側を歩く騎士に声を掛けられる。
「どうした? 立ち止まったりして」
「……いいえ、何でもありません」
「そうか。なら行くぞ。陛下はお忙しい方なのだからな」
「はい」
促された私は再び、騎士に連れられて国王の元へ向かった――
****
「あの扉の奥に陛下がおられる」
赤い絨毯が敷かれた先に、黄金に輝く扉がある。その前にはふたりの槍を構えた騎士が立っていた。
すると扉を守っていた騎士が声を掛けてきた。
「どうした? この奥は陛下の執務室だ。一体何のようだ?」
「後ろにいる人物は誰だ? ひょっとして女か?」
私が男装しているので、騎士たちは男か女か分かりかねているようだった。
「この人物は『モリス』国のミレーユ姫だと名乗っている」
私を連れてきた騎士が答える。
「何? 『モリス』の姫だと?」
「あの戦場の魔女?」
やはりこのふたりはミレーユの顔は知らなくても名前は聞いたことがあるようだ。
「陛下ならば分かるだろう。扉を開けてくれ」
「……分かった」
騎士は頷き、扉を叩いた。
「陛下! 謁見を願う人物が来られました!」
すると扉が開かれ、屈強そうな騎士が現れた。
「尋ねてきたのは何者だ?」
「『モリス』国のミレーユ姫だと名乗られている」
すると、奥の方から声が聞こえた。
「何!? ミレーユ姫だと? 中へ入れろ!」
「……入れ」
扉を開けた騎士が私を見下ろす。
「はい」
頷くと、私は執務室へ足を踏み入れた――
一人の騎士がため息をつく。
「先程も申し上げましたが、私は本物のミレーユです。すぐに国王陛下に会わせて下さい。お会いすればすぐに分かると思います」
本当に国王がミレーユの顔を知っているかどうかなど、この際問題ではない。まずは王宮に入るのが私の目的なのだから。
すると私の言葉に騎士たちが顔を見合わせる。
「どうする?」
「ああ言ってるのだからな……」
「連れて行くだけ連れて行ってみるか?」
暫くの間、彼らは話し合いを続け……私を王宮に連れて行くことが決定した。
「よし、それでは行くぞ」
一番年上と思われる騎士が私に声を掛けてきた。
「はい、お願いします」
こうして私は騎士に連れられて、背後にある巨大な城へ向かった――
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城内に入り、私は驚いた。何しろホールのいたるところに負傷兵が運び込まれて、無造作に寝かされているからだ。
「これは一体……?」
「ここにいる負傷兵達は全て『アレス』国の兵士たちだ。病院がどこも塞がってしまったからな。だから城のホールを負傷兵の為に貸してやっているのだ。本当に我が国の国王はお優しい方だ」
「……そうですか」
戦わせているのは『アレス』の者たちばかりなのに? おまけにここに運び込まれた負傷兵達は満足いく治療すら受けられていないようだ。
中には血まみれでピクリとも動かない兵士もいる。……ひょっとするともう既に死んでいるのかもしれない。
「う……うぅう……た、助けてく……れ……」
近くを通りかかったとき、負傷兵がうめき声をあげた。思わず足を止めると、直ぐ側を歩く騎士に声を掛けられる。
「どうした? 立ち止まったりして」
「……いいえ、何でもありません」
「そうか。なら行くぞ。陛下はお忙しい方なのだからな」
「はい」
促された私は再び、騎士に連れられて国王の元へ向かった――
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「あの扉の奥に陛下がおられる」
赤い絨毯が敷かれた先に、黄金に輝く扉がある。その前にはふたりの槍を構えた騎士が立っていた。
すると扉を守っていた騎士が声を掛けてきた。
「どうした? この奥は陛下の執務室だ。一体何のようだ?」
「後ろにいる人物は誰だ? ひょっとして女か?」
私が男装しているので、騎士たちは男か女か分かりかねているようだった。
「この人物は『モリス』国のミレーユ姫だと名乗っている」
私を連れてきた騎士が答える。
「何? 『モリス』の姫だと?」
「あの戦場の魔女?」
やはりこのふたりはミレーユの顔は知らなくても名前は聞いたことがあるようだ。
「陛下ならば分かるだろう。扉を開けてくれ」
「……分かった」
騎士は頷き、扉を叩いた。
「陛下! 謁見を願う人物が来られました!」
すると扉が開かれ、屈強そうな騎士が現れた。
「尋ねてきたのは何者だ?」
「『モリス』国のミレーユ姫だと名乗られている」
すると、奥の方から声が聞こえた。
「何!? ミレーユ姫だと? 中へ入れろ!」
「……入れ」
扉を開けた騎士が私を見下ろす。
「はい」
頷くと、私は執務室へ足を踏み入れた――
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