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8 不敵に笑う大公
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「ほう……そなたは中々面白いことを言うな。自分が『モリス』国の人質になるとは。それはそなたの国の負けを意味するでは無いか?」
大公が目を細めて私を見る。
「ええ、そうなりますね。でもこの国には御迷惑を掛けることは一切ありません。まだ戦争に加担してはいないわけですよね?」
「ああ、その通り。戦争を起こしているのは『モリス』国と『タリス国』。それに周辺諸国を巻き込んでいる。この両国間の戦争が終われば、自然と全ての戦争も終わるはずだろう。……第四王女とはいえ、そなたは姫だ。しかも魔力を持っているのだろう?」
「父上! 一体何を考えておられるのですか!? ミレーユ、人質なんてさせないぞ!」
ジェイクが青ざめた顔で大公と私を交互に見る。
「静かにしろ! ジェイク!」
大公は怒鳴りつけると、私に視線を移した。
「ところでそなたに尋ねたいことがある。今から約二か月ほど前に、『モリス』国である騒動が起こったらしい。突然国王が崩御されたらしい。死因は明らかにされてはいないが、今はパトリック王子が国王の座に就いているのだが……第四王女よ。父親の死に何か心当たりはあるか?」
「え? 心当たりですか……?」
その時、私は夢で見たミレーユの状況を思い出す。彼女は自分はやっていないと否定していた。恐らく何者かにはめられたに違いない。
「……いいえ、ありません」
首を振ってこたえる。
「本当に何も知らないと申すのか?」
「はい、そうです。……私はもうこれ以上あの城にいたくなくて、逃げ出したのです。なので父の死については何も知りません」
「……そうか。ところで知っていたか? 『モリス』国がそなたの行方を血眼になって捜しているという話を」
「「!!」」
その言葉に私とジェイクは同時に息を飲んだ。
「何だ? やはりお前たちは知らなかったようだな? もっともこの話は絶対に世間に漏れないように秘密保持されていたからな。我々のようにトップに立つ者にしか知らされていないのだ」
大公の顔に不敵な笑みが浮かぶ。
「まさか……私を『モリス』国へ引き渡すつもりですか?」
警戒しながら私は尋ねた。
「いや。それはやめておこう。我々はとにかく、そなたの国とは縁を切りたかったのだ。ここでそなたを引き渡せば、また両国の関係を強く求められるに違いない。それなら極秘でそなたを『タリス』国へ引き渡した方が良いだろう」
「父上! 本気でそのようなことを言っているのですか! ミレーユ! 馬鹿なことは考えるな!」
ジェイクは何処までも必死に止めようとしている。……恐らく、それほどにミレーユを愛しているのだろう。だが、私はミレーユでは無い。
‥‥…ユリアナなのだ。
「ジェイク、あなたは黙っていてください。これは私と大公の話なのですから」
わざと冷たい声で言い放つと、私は大公に向き直った。
「それでは、早急に私を『タリス』国へ引き渡す手続きを取って頂けますか?」
「ああ……良いだろう。馬鹿げた戦争を終わらせるには一番それが手っ取り早そうだからな」
大公が笑う。
「駄目だ! そんなことは俺が認めない! ミレーユ! 行くぞ!」
ジェイクが私の手を掴んできた。
「離して!」
その手を振り解いた瞬間、大公が声を上げた。
「衛兵! ジェイクを取り押さえろ!」
すると控えていた二人の衛兵がジェイクに駆け寄ると、持っていた長槍で彼を取り押さえた。
「連れ出せ」
大公は面倒くさそうに衛兵に命じた――
大公が目を細めて私を見る。
「ええ、そうなりますね。でもこの国には御迷惑を掛けることは一切ありません。まだ戦争に加担してはいないわけですよね?」
「ああ、その通り。戦争を起こしているのは『モリス』国と『タリス国』。それに周辺諸国を巻き込んでいる。この両国間の戦争が終われば、自然と全ての戦争も終わるはずだろう。……第四王女とはいえ、そなたは姫だ。しかも魔力を持っているのだろう?」
「父上! 一体何を考えておられるのですか!? ミレーユ、人質なんてさせないぞ!」
ジェイクが青ざめた顔で大公と私を交互に見る。
「静かにしろ! ジェイク!」
大公は怒鳴りつけると、私に視線を移した。
「ところでそなたに尋ねたいことがある。今から約二か月ほど前に、『モリス』国である騒動が起こったらしい。突然国王が崩御されたらしい。死因は明らかにされてはいないが、今はパトリック王子が国王の座に就いているのだが……第四王女よ。父親の死に何か心当たりはあるか?」
「え? 心当たりですか……?」
その時、私は夢で見たミレーユの状況を思い出す。彼女は自分はやっていないと否定していた。恐らく何者かにはめられたに違いない。
「……いいえ、ありません」
首を振ってこたえる。
「本当に何も知らないと申すのか?」
「はい、そうです。……私はもうこれ以上あの城にいたくなくて、逃げ出したのです。なので父の死については何も知りません」
「……そうか。ところで知っていたか? 『モリス』国がそなたの行方を血眼になって捜しているという話を」
「「!!」」
その言葉に私とジェイクは同時に息を飲んだ。
「何だ? やはりお前たちは知らなかったようだな? もっともこの話は絶対に世間に漏れないように秘密保持されていたからな。我々のようにトップに立つ者にしか知らされていないのだ」
大公の顔に不敵な笑みが浮かぶ。
「まさか……私を『モリス』国へ引き渡すつもりですか?」
警戒しながら私は尋ねた。
「いや。それはやめておこう。我々はとにかく、そなたの国とは縁を切りたかったのだ。ここでそなたを引き渡せば、また両国の関係を強く求められるに違いない。それなら極秘でそなたを『タリス』国へ引き渡した方が良いだろう」
「父上! 本気でそのようなことを言っているのですか! ミレーユ! 馬鹿なことは考えるな!」
ジェイクは何処までも必死に止めようとしている。……恐らく、それほどにミレーユを愛しているのだろう。だが、私はミレーユでは無い。
‥‥…ユリアナなのだ。
「ジェイク、あなたは黙っていてください。これは私と大公の話なのですから」
わざと冷たい声で言い放つと、私は大公に向き直った。
「それでは、早急に私を『タリス』国へ引き渡す手続きを取って頂けますか?」
「ああ……良いだろう。馬鹿げた戦争を終わらせるには一番それが手っ取り早そうだからな」
大公が笑う。
「駄目だ! そんなことは俺が認めない! ミレーユ! 行くぞ!」
ジェイクが私の手を掴んできた。
「離して!」
その手を振り解いた瞬間、大公が声を上げた。
「衛兵! ジェイクを取り押さえろ!」
すると控えていた二人の衛兵がジェイクに駆け寄ると、持っていた長槍で彼を取り押さえた。
「連れ出せ」
大公は面倒くさそうに衛兵に命じた――
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