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19 ジェイクの過去話 1

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「記憶を失っていた……? ほ、本当ですか?」

「ああ、そうだ。 俺は濡れた服もそのままに気を失ったミレーユを後ろから支えて馬を走らせていた。もうすぐあの隠れ家に到着するというところで、彼女は目を開けた……」

そしてジェイクは語りだした――

****


『う……』

馬上で背後から抱きかかえていたミレーユが小さく呻き、瞼を開けた。

『良かった……! 目を覚ましたんだな!?』

しかし、次の瞬間、彼女の口から信じられない言葉が漏れる。

『え……? 誰……?』

『何だって? ミレーユ。こんな時に冗談を言っている場合じゃないだろう?』

『ミレーユ? それが私の名前ですか?』

『あ? ああ。そうだが……』

訝しげに返事をすると、ミレーユの顔つきが変わった。

『それより……あなたは一体誰なのですか!? 私をどうするつもりなんです!馬から降ろして下さい!』

馬の上で俺の腕から逃れようとミレーユが暴れる。

『やめろミレーユ! 馬の上で暴れるな! 危ないだろう!』

『だったら、早く私を馬から降ろして下さい!』

『降りてどうするんだ! いいか、ここは深い森の中だ。血に飢えた狼だってうろついているんだぞ!? 生きたまま喰われたいのか!?』

『あ……』

その言葉に、ようやくミレーユは今の状況を理解したのか静かになった。

『とにかく……後少しで森を抜ける。その先に『ナース』地区があり、俺が用意した隠れ家もある。それまで静かにしていてくれ』

『はい……』

『よし、それでは飛ばすぞ』

黙ってうなずくミレーユ。そこで俺は馬を早駆けさせて、隠れ家へと向かった。
全身濡れた服が身体に張り付き、冷たい夜風で身体が凍えそうだった。
けれど、何処かで隠れて火を起こして身体を乾かす余裕など無かった。

するとそのうち、ミレーユが寒さを訴え始めてきた。

『さ、寒い……寒いわ……』

後ろから支えてい俺にもミレーユの身体の冷たさが伝わってくる。
そうだ、彼女は炎の魔法の使い手なのだから……

『ミレーユ。君は炎の魔法を使えるだろう? 温度を調節して火を起こせないのか?』

『え? なんですか? その話は。私にはそんな事できませんよ?』

明らかに敵意を込めた目で俺を睨んでくる。

『ミレーユ、君は一体何を……おい! ミレーユ!?』

気づけばミレーユは意識を再び失っていた。呼吸は弱く、今にも止まってしまいそうだ。

『ミレーユ! 後少しで隠れ家だ! 頼む! どうか……持ちこたえてくれ!』

俺はミレーユの無事を祈りながら、必死で馬を隠れ家に向けて走らせるのだった――

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