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17 ジェイクの話 2

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「もっとも、政略結婚相手だから二人の間に恋愛感情は無かったけれども……仮にも婚約者だからね。大切にしようとは思ったよ。何しろ彼女は冷遇されてきた王女だったし……婚約が決まってからは頻繁に彼女の元へ通っていた」

淡々と語るジェイク。
恋愛感情は無かったと言っていたけれども、本当にそうだったのだろうか?

「ミレーユが二十歳になったら結婚することになっていた。彼女はそのことを待ち望んでいたよ。何しろ俺と結婚すれば幽閉生活を抜け出すことが出来るからね。本当はもっと早く結婚していれば良かったと思う。だが、『モリス』の国王がそれを許さなかったんだ。ミレーユの炎の魔力を手放したくはなかったのだろう。けれど、結婚の話どころでは無くなってきた……」

ジェイクはミレーユが幽閉生活を抜け出したいために結婚を待ち望んでいたと話しているが、私にはそうは思えなかった。
恐らくミレーユはジェイクのことを好きだった。だから結婚を待ち望んでいたのではないだろうか?

「ユリアナにも事情を説明してあるから知っているだろうけど、ベルンハルト家の滅亡後……『モルス』『タリス』『アレス』国の関係がおかしくなっていった。『アレス』国は『タリス』の支配下に置かれてしまったし、挙げ句に『モルス』国に宣戦布告をしてきたのだから」

「そうでしたよね……」

『モルス』は鉱山資源に恵まれた国だ。『タリス』国の狙いはそこだったのだろうな。元々ベルンハルト家を滅ぼしたのも『タリス』の差金だったのだろう」

じっと私を見つめるジェイク。

「『モルス』国王はミレーユを戦場に連れて行くようになった。彼女の炎の魔力は絶大で、数々の戦果を挙げてきたんだよ。だが、彼女は限界だった。目の前で自分の魔力によって人々が焼かれていく姿を見るには……あまりにも弱すぎた」

その言葉はとても寂しげだった。

「ついに、ミレーユは戦いの場に出ることを拒んだ。そこでより強固な塔に幽閉されてしまったんだ。命をつなぐためのほんの僅かな水と食料を与えられるだけの……」

「ジェイクさんは、どうしてその情報を知っていたのですか?」

私はどうやってジェイクがその情報を手に入れていたのか気になったので尋ねてみた。

「俺は密偵を送り込んでいたんだ。『モルス』国に。情報は密偵から全て知っていたよ。ミレーユは俺に助けを求めていて、俺はチャンスをじっと伺っていたんだ。彼女を助け出した後の隠れ家を用意し、一緒に逃げて俺の国に連れて行く計画を。それが……あんなことに……」

ジェイクは苦しげに顔を抑えた――
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