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10 ショックを受ける言葉
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「大丈夫だったか? ユリアナ」
荷馬車まで戻ってくるとジェイクが心配そうに声をかけてきた。
「は、はい……大丈夫です……」
両肩を抱きかかえながらも、何とか返事をする。今まであのように剥き出しの欲望の言葉をぶつけられたことが無かっただけに、ショックは大きかった。
「ユリアナ……正直に言うと俺は本当のところ、君には危険が伴うような場所に行ってもらいたくは無かったんだ」
ポツリとジェイクが語る。
「え……?」
「俺は戦争が始まってから人々の心が荒んで、ギリギリのところまで追い込まれて……挙げ句に女性を物のように扱う男たちを大勢見てきたんだ。そのことは以前にも話したよな?」
「は、はい……聞いています」
ジェイクの住んでいた村では兵士たちが責めてきたときに、若い女性達が慰み物にされて死んでいった話を聞かされている。
「まして、君は人目を惹く容姿をしている。なおさら悪い男たちに目をつけられてしまいやすくなる」
「ジェイクさん……」
「俺は君を危険な目に晒したくは無いんだ。出来れば……報復するのも考え直して貰いたいくらいに。」
「え!?」
ジェイクは私の驚きを他所に、じっと穏やかな目で見つめてくる。
「で、でも……今まで一度もそんなこと言いませんでしたよね? それどころか、まるで後押しするようなことを言っていたじゃありませんか」
俄かにジェイクの言葉が信じられなかった。
「そうだよ、今までなら言わなかった。君の助けに鳴りたいとも思っていた。だけど今回あの場に行って確信したよ。牢屋越しでさえ、あの騒ぎだ。やはりこれ以上危険な場所には行って貰いたくないとね」
「ジェイクさん……」
「どうだ? ユリアナ。報復なんてもう仲間に任せて、君は抜けた方がいいと思う。第一、その身体は……本来君の物では無いだろう?」
その言葉で、私は冷や水を浴びせられたかのような気持ちになってしまった。
「つ、つまり……この身体で勝手な真似をするなって……ことですか? 本当の持ち主じゃないから……?」
「ユリアナ?」
ジェイクは不思議そうな顔で私を見る。
ああ、そうか。私は今まで勘違いしていたのだ。ジェイクが私を気に掛けてくれているのは、私自身ではない。私の心が入り込んでしまったミレーユのこの身体を心配してのことだったのだ。
彼は私……ユリアナのことはどうでも良かったのだ。どのような関係があるのかは分からないが、ジェイクはユリアナと知り合いなのだから。
けれど、そのことすらジェイクは口にしてくれない。
「……っ」
どうして……そのことがこんなにもショックなのだろう。
「どうしたんだ? ユリアナ」
ジェイクが心配そうに声を掛けてきたその時……
ドオオオオオオオンッ!!
突然激しい爆発音のような音が辺りに響き渡った――
荷馬車まで戻ってくるとジェイクが心配そうに声をかけてきた。
「は、はい……大丈夫です……」
両肩を抱きかかえながらも、何とか返事をする。今まであのように剥き出しの欲望の言葉をぶつけられたことが無かっただけに、ショックは大きかった。
「ユリアナ……正直に言うと俺は本当のところ、君には危険が伴うような場所に行ってもらいたくは無かったんだ」
ポツリとジェイクが語る。
「え……?」
「俺は戦争が始まってから人々の心が荒んで、ギリギリのところまで追い込まれて……挙げ句に女性を物のように扱う男たちを大勢見てきたんだ。そのことは以前にも話したよな?」
「は、はい……聞いています」
ジェイクの住んでいた村では兵士たちが責めてきたときに、若い女性達が慰み物にされて死んでいった話を聞かされている。
「まして、君は人目を惹く容姿をしている。なおさら悪い男たちに目をつけられてしまいやすくなる」
「ジェイクさん……」
「俺は君を危険な目に晒したくは無いんだ。出来れば……報復するのも考え直して貰いたいくらいに。」
「え!?」
ジェイクは私の驚きを他所に、じっと穏やかな目で見つめてくる。
「で、でも……今まで一度もそんなこと言いませんでしたよね? それどころか、まるで後押しするようなことを言っていたじゃありませんか」
俄かにジェイクの言葉が信じられなかった。
「そうだよ、今までなら言わなかった。君の助けに鳴りたいとも思っていた。だけど今回あの場に行って確信したよ。牢屋越しでさえ、あの騒ぎだ。やはりこれ以上危険な場所には行って貰いたくないとね」
「ジェイクさん……」
「どうだ? ユリアナ。報復なんてもう仲間に任せて、君は抜けた方がいいと思う。第一、その身体は……本来君の物では無いだろう?」
その言葉で、私は冷や水を浴びせられたかのような気持ちになってしまった。
「つ、つまり……この身体で勝手な真似をするなって……ことですか? 本当の持ち主じゃないから……?」
「ユリアナ?」
ジェイクは不思議そうな顔で私を見る。
ああ、そうか。私は今まで勘違いしていたのだ。ジェイクが私を気に掛けてくれているのは、私自身ではない。私の心が入り込んでしまったミレーユのこの身体を心配してのことだったのだ。
彼は私……ユリアナのことはどうでも良かったのだ。どのような関係があるのかは分からないが、ジェイクはユリアナと知り合いなのだから。
けれど、そのことすらジェイクは口にしてくれない。
「……っ」
どうして……そのことがこんなにもショックなのだろう。
「どうしたんだ? ユリアナ」
ジェイクが心配そうに声を掛けてきたその時……
ドオオオオオオオンッ!!
突然激しい爆発音のような音が辺りに響き渡った――
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