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9 耐え難い言葉
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カツーン
カツーン
冷たい石畳の上に私達の足音が響き渡る。
階段を登り切るとまっすぐに伸びる石の牢屋が通路に沿ってずらりと並んでいる。
騒ぎ超えが響き渡っている。
「誰だ? 誰か来たのか?」
「看守か? いつまで俺たちを閉じ込めるんだ!」
「早く出せよ!」
「戦争中に犯罪も何もないだろうが!!」
牢屋になど、一度も来たことのない私にとっては驚きの光景だった。冷たい石畳に鉄格子のはまった牢獄は薄暗くて肌寒い。
まさか、こんな場所にベルンハルト家の騎士たちは十年間も閉じ込められているのだろうか……?
しかも、何故かこの牢屋の光景を見ていると身体が震える。
「大丈夫か? ユリアナ」
私の異変に気づいたのか、ジェイクが声を掛けてきた。
「い、いえ。大丈夫です……少し驚いているだけですから」
「ユリアナ様。ここで待っていても宜しいですよ? 俺たちが牢屋を見て回りますから」
ラルフが尋ねてきた。
「いいえ。私も行くわ……本当に彼らがここにいるのか、自分のこの目で確かめたいから」
「分かりました、では皆で参りましょう。その代わり、ユリアナ様は決して顔が見られないようにフードはしっかり被っておいてくださいね」
エドモントに言われ、私は頷くとフードを目深に被った。そして私達は牢屋の通路をゆっくり歩き始めた。
牢屋にの中には一つの場所に四人が収容されていた。彼らは私達の姿を見ると、大きな声で自分たちをここから出せと叫んでくる。
思わず耳をふさいだその時――
「おい! た、頼む! ここから出してくれよ!」
突然鉄格子の間から無精髭を生やした男の腕が伸びてきて、マントをつかまれしまった。
「キャア!」
思わず叫び、私の悲鳴が牢屋に響き渡る。
「こいつ……! 離せ!」
エドモントが怒り、私のマントを掴んだ男の腕を無理やり引きはがすと、その人物ははずみで床に倒れ込んだ。
「お、女か……? 女だったのか!?」
倒れ込んだ男は驚きの目で私を見る。
「!」
慌ててフードを被り直したが、既に遅かった。
「何、女だと!?」
「まさか、女がここに来てるのか!」
「お、おい! その女をこっちによこせ!」
「俺たちの相手をしてくれよ!! な、頼む!」
その他にも聞くに耐えない、欲望にまみれた訴えに私はおぞましさのあまり、耳を塞いだ。
「チッ!! 何て下劣な奴らだ……!」
ジェイクは舌打ちすると、私の身体を抱え込んでエドモント達に声を掛けた。
「これ以上、ユリアナをここに置いておくわけにはいかない。悪いが彼女を連れて馬車の前で待機させてもらう。いいだろうか?」
「ええ、その方が良いでしょね」
「早くユリアナ様を連れて行って下さい」
ラルフとエドモントが交互に言った。
「……ごめんなさい、二人共……」
囚人たちが自分に向けてくる欲望に耐え難かった。
「行こう、ユリアナ」
ジェイクは私の肩を抱き寄せたまま、地下牢を後にした――
カツーン
冷たい石畳の上に私達の足音が響き渡る。
階段を登り切るとまっすぐに伸びる石の牢屋が通路に沿ってずらりと並んでいる。
騒ぎ超えが響き渡っている。
「誰だ? 誰か来たのか?」
「看守か? いつまで俺たちを閉じ込めるんだ!」
「早く出せよ!」
「戦争中に犯罪も何もないだろうが!!」
牢屋になど、一度も来たことのない私にとっては驚きの光景だった。冷たい石畳に鉄格子のはまった牢獄は薄暗くて肌寒い。
まさか、こんな場所にベルンハルト家の騎士たちは十年間も閉じ込められているのだろうか……?
しかも、何故かこの牢屋の光景を見ていると身体が震える。
「大丈夫か? ユリアナ」
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「い、いえ。大丈夫です……少し驚いているだけですから」
「ユリアナ様。ここで待っていても宜しいですよ? 俺たちが牢屋を見て回りますから」
ラルフが尋ねてきた。
「いいえ。私も行くわ……本当に彼らがここにいるのか、自分のこの目で確かめたいから」
「分かりました、では皆で参りましょう。その代わり、ユリアナ様は決して顔が見られないようにフードはしっかり被っておいてくださいね」
エドモントに言われ、私は頷くとフードを目深に被った。そして私達は牢屋の通路をゆっくり歩き始めた。
牢屋にの中には一つの場所に四人が収容されていた。彼らは私達の姿を見ると、大きな声で自分たちをここから出せと叫んでくる。
思わず耳をふさいだその時――
「おい! た、頼む! ここから出してくれよ!」
突然鉄格子の間から無精髭を生やした男の腕が伸びてきて、マントをつかまれしまった。
「キャア!」
思わず叫び、私の悲鳴が牢屋に響き渡る。
「こいつ……! 離せ!」
エドモントが怒り、私のマントを掴んだ男の腕を無理やり引きはがすと、その人物ははずみで床に倒れ込んだ。
「お、女か……? 女だったのか!?」
倒れ込んだ男は驚きの目で私を見る。
「!」
慌ててフードを被り直したが、既に遅かった。
「何、女だと!?」
「まさか、女がここに来てるのか!」
「お、おい! その女をこっちによこせ!」
「俺たちの相手をしてくれよ!! な、頼む!」
その他にも聞くに耐えない、欲望にまみれた訴えに私はおぞましさのあまり、耳を塞いだ。
「チッ!! 何て下劣な奴らだ……!」
ジェイクは舌打ちすると、私の身体を抱え込んでエドモント達に声を掛けた。
「これ以上、ユリアナをここに置いておくわけにはいかない。悪いが彼女を連れて馬車の前で待機させてもらう。いいだろうか?」
「ええ、その方が良いでしょね」
「早くユリアナ様を連れて行って下さい」
ラルフとエドモントが交互に言った。
「……ごめんなさい、二人共……」
囚人たちが自分に向けてくる欲望に耐え難かった。
「行こう、ユリアナ」
ジェイクは私の肩を抱き寄せたまま、地下牢を後にした――
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