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6 刑務所の場所
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階下に降りると、既に全員が席についていた。
「おはようございます、ユリアナ様。ゆっくりお休み出来ましたか?」
私の姿を見たエドモントが笑顔で挨拶してくる。
「ええ、お陰様でね」
「でもお湯が使えないのは残念でしたけどね」
「そ、そうね。お湯があればもっと良かったわ」
ラルフの言葉にドキリとしながら返事をする。
そうだ……この身体は炎の魔法を出すことが出来る。この魔法を皆の為に使ってあげられれば……
しかし、ジェイクには私が魔法を使えることを知られたくは無かった。彼は間違いなく、この身体の持ち主の正体を知っているからだ。
「ユリアナ、今日はこの後いよいよ刑務所に向かうからしっかり食事はしておいたほうがいいよ」
ジェイクが声を掛けてきた。
「は、はい。そうですね」
平静を装いながら返事をするも私は落ち着かない気持ちで一杯だった。そこへ店主が朝食を運んできてくれた。
「どうぞ、お客様」
店主は私達の前に料理を並べていく。サラダにパン、そしてスープ。戦時下に置かれながら、まともな料理だった。
「それではごゆっくりどうぞ」
料理を並べ終えた店主が立ち去ろうとしたところをエドモントが引き止める。
「ところで、店主。聞きたいことがあるのだが」
「はい、何でしょう?」
「我々はこの後、囚人が収監されている刑務所に行きたいのだが、町外れにあるとしか聞かされていない。道順を教えてもらえないか?」
すると店主は眉をしかめる。
「お客さん……本当に刑務所に行きたいのですか。あそこに収監されている者たちは皆戦争犯罪者や人殺しと行った重い罪を課せられた者たちばかりですよ?まぁ、どうしても行きたいっていうのなら教えて上げますが」
「本当ですか? では教えてください」
私は店主に尋ねた。
「ええ、この宿屋を出て東にどこまでも進んで下さい。するといずれ巨大な石造りの建物が見えてきます。その建物が刑務所ですよ。言っておきますが、あの場所には徒歩ではとても行けるような距離ではありませんよ。脱走して町中に紛れ込むのを防ぐ為に、わざと人里離れた場所に建てたのですからね」
「ありがとうございます」
店主にお礼を述べると、彼は「ごゆっくり」と言って、店の奥へと引っ込んでいった。
「それでは頂きましょう」
ベルモントに促され、わたしたちは食事を開始した。
「それにしても、脱走を防ぐために人里離れた場所に刑務所があるなんて……」
「一体どれくらいの人間が刑務所に入れられているのでしょうね」
ベルモントとラルフの会話を聞きながら、私はジェイクの様子をそっと伺った。
「ユリアナ、どうかしたか?」
私の視線に気づいたのか、ジェイクが声を掛けてきた。
「いえ、何でもありません」
さり気なく視線をそらせながら、私は食事を口に運んだ。
今後はジェイクに気を許してはいけないと思いながら――
「おはようございます、ユリアナ様。ゆっくりお休み出来ましたか?」
私の姿を見たエドモントが笑顔で挨拶してくる。
「ええ、お陰様でね」
「でもお湯が使えないのは残念でしたけどね」
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そうだ……この身体は炎の魔法を出すことが出来る。この魔法を皆の為に使ってあげられれば……
しかし、ジェイクには私が魔法を使えることを知られたくは無かった。彼は間違いなく、この身体の持ち主の正体を知っているからだ。
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すると店主は眉をしかめる。
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「本当ですか? では教えてください」
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「ええ、この宿屋を出て東にどこまでも進んで下さい。するといずれ巨大な石造りの建物が見えてきます。その建物が刑務所ですよ。言っておきますが、あの場所には徒歩ではとても行けるような距離ではありませんよ。脱走して町中に紛れ込むのを防ぐ為に、わざと人里離れた場所に建てたのですからね」
「ありがとうございます」
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「それでは頂きましょう」
ベルモントに促され、わたしたちは食事を開始した。
「それにしても、脱走を防ぐために人里離れた場所に刑務所があるなんて……」
「一体どれくらいの人間が刑務所に入れられているのでしょうね」
ベルモントとラルフの会話を聞きながら、私はジェイクの様子をそっと伺った。
「ユリアナ、どうかしたか?」
私の視線に気づいたのか、ジェイクが声を掛けてきた。
「いえ、何でもありません」
さり気なく視線をそらせながら、私は食事を口に運んだ。
今後はジェイクに気を許してはいけないと思いながら――
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