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21 秘密の貯蔵庫
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あの後、私達は荷馬車を扱っている店を見つけた。
店主はガラの悪い男だった。馬と荷馬車を借りたいと申し出たところ、店主は私達の身なりから判断したのか、鼻であざ笑って追い払おうとした。
そこでエドモントがダガーの鞘に装飾された宝石を見せると途端に店主は態度を明らかに変え、あっさりと馬車を貸してくれたのだった。
「エドモント、良かったの? あのダガーを渡してしまって」
御者台に座り、隠れ家に向かうために手綱を握りしめたエドモントに私は話しかけた。
「ええ、いいのですよ。酒場のマスターも言っていたでしょう? このご時世、金はあまり意味がないと。宝石だって一緒です」
「そう? だけど……」
あのダガーはベルンハルト家の騎士の証として持たされるダガーだったはずなのに……
「それより、こちらこそすみません。公爵家から賜った大切なダガーだったのに、手放してしまいました」
申し訳無さそうに謝ってくるエドモント。
「そんなことは気にしなくていいわ」
「……ありがとうございます。ユリアナ様。もうすぐ日付が変わってしまいますから急ぎましょう」
「ええ、そうね」
そして私達四人を乗せた荷馬車は速度を上げた――
****
隠れ家に到着した私達は早速、ワインが貯蔵されている部屋へと向かった。
洞窟の中に作られた隠れ家は迷路のように入り組み、合計20の部屋に分かれてその一番奥の部屋にワイン貯蔵庫があるのだ。
広い部屋には大樽が左右に10個ずつ並べられている。
「これはすごいな……だけど、何故隠れ家に……」
松明に照らされた大樽を見て、ジェイクが感嘆のため息を漏らす。
「ベルンハルト家ではワインを作っていました。騎士たちは皆ワイン好きだったから、この隠れ家にも置くことにしたのです」
「なる程、そうだったのか」
私の言葉に頷くジェイク。
「それでは早速ワインの状況を確認してみましょう」
エドモントの言葉に、ラルフはグラスを持ってくると早速樽の栓をひねった。
すると注ぎ口から色鮮やかな赤ワインがグラスに注がれる。
「……良い香りだ」
ジェイクの言葉にラルフがワインが注がれたグラスを差し出す。
「ワインが好きなんですか? どうぞ、味見してみて下さい」
「いいのかい? ありがとう」
ジェイクは笑みを浮かべてグラスを受け取ると、香りを嗅ぎ口に含んだ。
「……うん、すごく美味しい……今まで飲んだことのあるワインの中でも最高だ」
その言葉に少しだけ私は驚いた。ワインといえば高級品で、中々庶民の間には広まっていないのに、彼は飲んだことがあるというのだろうか? しかもこの戦時下で。
「ジェイクさん。以前もワインを飲んだことがあるのですか?」
「え? あ、そ、そうなんだ。と言ってもほんの数回、飲んだだけだから。しかもとても安物のワインだよ。知り合いに分けてもらったんだ」
「そうなのですか」
少しジェイクの態度が腑に落ちなかったけれども私は頷いた。
「よし、この色と香りなら文句ないだろう。早速ワインを樽に移そう」
「はい」
エドモントの言葉にラルフはうなずき、早速ワインを樽に移す準備が始まった――
店主はガラの悪い男だった。馬と荷馬車を借りたいと申し出たところ、店主は私達の身なりから判断したのか、鼻であざ笑って追い払おうとした。
そこでエドモントがダガーの鞘に装飾された宝石を見せると途端に店主は態度を明らかに変え、あっさりと馬車を貸してくれたのだった。
「エドモント、良かったの? あのダガーを渡してしまって」
御者台に座り、隠れ家に向かうために手綱を握りしめたエドモントに私は話しかけた。
「ええ、いいのですよ。酒場のマスターも言っていたでしょう? このご時世、金はあまり意味がないと。宝石だって一緒です」
「そう? だけど……」
あのダガーはベルンハルト家の騎士の証として持たされるダガーだったはずなのに……
「それより、こちらこそすみません。公爵家から賜った大切なダガーだったのに、手放してしまいました」
申し訳無さそうに謝ってくるエドモント。
「そんなことは気にしなくていいわ」
「……ありがとうございます。ユリアナ様。もうすぐ日付が変わってしまいますから急ぎましょう」
「ええ、そうね」
そして私達四人を乗せた荷馬車は速度を上げた――
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隠れ家に到着した私達は早速、ワインが貯蔵されている部屋へと向かった。
洞窟の中に作られた隠れ家は迷路のように入り組み、合計20の部屋に分かれてその一番奥の部屋にワイン貯蔵庫があるのだ。
広い部屋には大樽が左右に10個ずつ並べられている。
「これはすごいな……だけど、何故隠れ家に……」
松明に照らされた大樽を見て、ジェイクが感嘆のため息を漏らす。
「ベルンハルト家ではワインを作っていました。騎士たちは皆ワイン好きだったから、この隠れ家にも置くことにしたのです」
「なる程、そうだったのか」
私の言葉に頷くジェイク。
「それでは早速ワインの状況を確認してみましょう」
エドモントの言葉に、ラルフはグラスを持ってくると早速樽の栓をひねった。
すると注ぎ口から色鮮やかな赤ワインがグラスに注がれる。
「……良い香りだ」
ジェイクの言葉にラルフがワインが注がれたグラスを差し出す。
「ワインが好きなんですか? どうぞ、味見してみて下さい」
「いいのかい? ありがとう」
ジェイクは笑みを浮かべてグラスを受け取ると、香りを嗅ぎ口に含んだ。
「……うん、すごく美味しい……今まで飲んだことのあるワインの中でも最高だ」
その言葉に少しだけ私は驚いた。ワインといえば高級品で、中々庶民の間には広まっていないのに、彼は飲んだことがあるというのだろうか? しかもこの戦時下で。
「ジェイクさん。以前もワインを飲んだことがあるのですか?」
「え? あ、そ、そうなんだ。と言ってもほんの数回、飲んだだけだから。しかもとても安物のワインだよ。知り合いに分けてもらったんだ」
「そうなのですか」
少しジェイクの態度が腑に落ちなかったけれども私は頷いた。
「よし、この色と香りなら文句ないだろう。早速ワインを樽に移そう」
「はい」
エドモントの言葉にラルフはうなずき、早速ワインを樽に移す準備が始まった――
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