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19 酒場での会話

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 酒場の扉が開いた途端、アルコールやタバコと言ったむせるような匂いが部屋一帯に充満していた。

部屋は薄暗く、いかにもガラの悪そうな男たちがひしめき合い、アルコールを口にしている。
中にはアルコールを飲みながらカードゲームに興じている男たちもいる。

「店内に入ったはいいが、これからどうするんです?」

ジェイクがエドモントに尋ねた。

「とりあえず、カウンターへ行こう。この酒場のマスターがいるからな」

エドモントの言葉に私達はうなずき、人の間を縫うようにカウンターへ向かった。


「……いらっしゃい。何にしますか」

カウンターには白いシャツにループタイをつけた黒髪の男がいた。年の頃は30代前後だろうか?
カウンター席は空席になっていたため私達は全員着席すると、エドモントが口を開いた。

「ああ、ちょっとな。実は俺の仲間たちがヘマをしちまって牢屋に入れられてしまったらしいんだが、なにぶん俺たちも牢屋から出たばかりで場所が分からないんだよ」

ぞんざいな口の聞き方でエドモントはマスターに尋ねた。

「ほぅ……あなた方はもしや牢屋を脱走でもした手配犯ですかな?」

マスターの目が怪しげに光る。

「いや、そうじゃない。たまたま俺たちのいた場所が戦場になってな。あちこちで砲撃が起こって監獄が破壊された。そこでドサクサに紛れて逃げてきたのさ」

「砲撃で破壊された……? もしやそこは『キルケ』の町のことか? あの町は確か巨大な火薬倉庫がある町だったが……」

「ああ、そうだ。敵の奴らはよりにもよって武力を行使して火薬倉庫を奪い、その火薬を使って町を砲撃した。あの町にはまだ沢山民間人達が残っていたというのに……俺達が牢屋から出てきたときには、町の殆どが焼け落ちていた」

「ふむ……しかし、まさかあの町に生き残りがいたとはな……驚きだ。余程腕に自信でもあるようだ。それで? 一帯どんな罪で投獄されていたんだ?」

マスターが私達を値踏みするようにじっくりみる。そして私に目を留めた。

「まさか、この子供も牢屋に入れられていたのか?」

するとジェイクが素早く口を開いた。

「いや、この子は違う。『キルケ』の町の生き残りだ。両親を亡くしたショックで口が聞けなくなってしまっていたところを俺たちが保護したのだ」

ジェイクの咄嗟に着いた嘘に私は思わず感心してしまった。特に打ち合わせをしたわけでもないのに、よくも考えついたものだ。

「俺達は……もともと犯罪なんかおかしちゃいない。ただ単に戦争反対を訴えただけなのに捕まって投獄されちまったのさ。俺たちはこんな不毛な戦争を終わらせたい。だから仲間を捜しているのさ」

エドモントはニヤリと笑みを浮かべた――
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