罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

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18 無法地帯への入り口

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 17時――

「そろそろ出ましょうか?」

エドモントに声を掛けられ、私達は全員頷いた。全員が全身を覆うフード付きのマントを着用している。

「いいですか? ユリアナ様。ここはすっかり無法地帯になりました。民間人たちの多くは治安が悪い『ウィスタリア』を捨てて、去っていきました」

私は彼の言葉に頷く。

「今ここに残っているのは傭兵を生業としている者達や、お尋ね者……そんな連中ばかりです。まさにならず者たちの吹き溜まりのような場所になってしまいました。特に女性は殆ど残っておりません。もし女性だということがバレてしまえば、どんな目に遭うか分からないので、決してフードを外してはなりません」

「……分かったわ」

以前の身体だったら、鍛えていたし剣を振るうことも出来たので例え何かあっても自分の身を守れる自信はあった。
けれど、今のこの身体では……私は自分の手をじっと見つめる。

「……では行きましょう。酒場はウィスタリアの中心部にあります。歩くと1時間程かかります。急ぎましょう」

エドモントの言葉に私達は頷いた――



****


 洞窟を出た頃は赤い夕焼け空だった空も町に着いた頃にはすっかり日が落ち、星が空に瞬き始めていた。

町といっても、かつての美しかった『ウィスタリア』の町並みの面影は何もない。
戦火により、建物が失われてしまったのだろうか?
代わりに立ち並んでいる建物はまるでバラックのような粗末な小屋ばかりが多く目立つ。
町を歩く人々は男性ばかりで、ほぼ全員が剣を装備している。彼らの人相は凶悪でまともな人種がいるようには思えなかった。

「酷い有様ね……」

口元を布で隠し、目深にフードを被った私は思わずポツリと呟いた。

「ユリアナ。絶対に俺たちの傍から離れるなよ。なるべく声も出すな」

隣を歩くジェイクが小声でそっと囁いてきた。

「ええ」

短く返事をすると更に私はフードを目深にかぶり直し、前方を歩くエドモントとラルフの後に続いた。



****

「ここが、この地区で唯一の酒場です」

エドモントが案内したのは石造りの大きな建物だった。入り口は木の扉で、酒場を示すような看板も何もない。

「この建物はかつて貴族が住んでいた屋敷で作りが頑丈だったために砲撃にも耐えたそうです。今や酒場は非合法なので、看板のたぐいは一切出していないのです」

ラルフが説明してくれた。

「いいですか? この扉の先は無法地帯です。絶対に声を出したりはしないようにして下さい」

エドモントが真剣な目で語る。

「分かったわ」

返事をするとエドモントはうなずき、酒場の扉を開けた――
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