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11 十年前の出来事 2
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「私を襲った証拠を残さないために……サムの遺体ごと、馬車を始末してしまったのかしら……」
「さぁ……そこまでのことは我々には……結局馬車もサムも見つかってはいませんから」
私の言葉にエドモントが答える。
「私が彼を巻き込んでしまったのよ。……こんなことならサムに馬車を頼まずに一人で馬に乗って行けば良かったのだわ」
顔を覆い隠しながら私はサムのことを思い出した。
「ですが、それは無理だったのではないですか? ドレス姿ではあの森の中、馬を走らせることは出来ないでしょう? しかもあの日は嵐がやってきましたから」
「そうです。どのみち、ユリアナ様が狙われていたのは間違いないでしょう。結果は同じ事です。ユリアナ様の為に、我々は動いていましたから」
ラルフの次に、エドモントが声を掛けてくる。
「だけど、結局は私がいけなかったのよ。あの時……追手から逃げることが出来ていれば……いいえ、そもそも離宮へ行きさえしなければ……」
すると、ジェイクが話しかけてきた。
「それでも、きっと敵は別の手段を使ってベルンハルト家を陥れようとしていたに決まっている。ユリアナは何も悪くないよ」
「ジェイクさん……」
ジェイクは私をみつめ、優しく笑いかけてくれた。その言葉が嬉しかった。
「それでは続きを話してくれる?」
気を取り直して、私はふたりに続きを促した。
「はい、その後我々は離宮へ続く森の中でユリアナ様のイヤリングが見つかったことを再度告げに城へ再び赴きました。ですが、結局のところ……言いがかりをつけるなと一喝された挙句ユリアナ様が行方不明になってしまったということで婚約は解消されたのです」
エドモントが沈痛な表情で語る。
「そう、王家では私が行方不明になったので、婚約を解消すると言ったのね? だけど、私はクラウス王子自ら婚約破棄を言い渡されたのよ? 彼の側にはオフィーリアという女性がいたわ。彼女は……『タリス』王国の第四王女だったわ」
私の言葉に、その場にいた全員が眉をしかめる。
「そうだったのですか……ユリアナ様が行方不明になられて、婚約解消されてすぐのことでした。クラウス王子とオフィーリア王女の婚約が結ばれたのは。そして時を置かずして、二人は結婚しました」
結婚……恐らく、そうではないかと思っていたがエドモントの口から実際に聞かされるとショックだった。
「そう……やっぱり結婚したのね……」
自分の声が震えている。
「はい……そしてその直後、何故か『アレス』国は『タリス』の実効支配下に置かれてしまったのです。『タリス』国は危険思想を持つ国で有名です。そのため、一気に国の治安は悪化しました。そこでベルンハルト公爵は『タリス』の実効支配を奪い返すように進言したところ、謀反の罪を着せられてしまったのです。表向きはユリアナ様が行方不明になったことを逆恨みして、王家に反旗を翻したとされていますが……」
「そ、そんな……!」
エドモントの話に私は自分の顔から血の気が引くのを感じた――
「さぁ……そこまでのことは我々には……結局馬車もサムも見つかってはいませんから」
私の言葉にエドモントが答える。
「私が彼を巻き込んでしまったのよ。……こんなことならサムに馬車を頼まずに一人で馬に乗って行けば良かったのだわ」
顔を覆い隠しながら私はサムのことを思い出した。
「ですが、それは無理だったのではないですか? ドレス姿ではあの森の中、馬を走らせることは出来ないでしょう? しかもあの日は嵐がやってきましたから」
「そうです。どのみち、ユリアナ様が狙われていたのは間違いないでしょう。結果は同じ事です。ユリアナ様の為に、我々は動いていましたから」
ラルフの次に、エドモントが声を掛けてくる。
「だけど、結局は私がいけなかったのよ。あの時……追手から逃げることが出来ていれば……いいえ、そもそも離宮へ行きさえしなければ……」
すると、ジェイクが話しかけてきた。
「それでも、きっと敵は別の手段を使ってベルンハルト家を陥れようとしていたに決まっている。ユリアナは何も悪くないよ」
「ジェイクさん……」
ジェイクは私をみつめ、優しく笑いかけてくれた。その言葉が嬉しかった。
「それでは続きを話してくれる?」
気を取り直して、私はふたりに続きを促した。
「はい、その後我々は離宮へ続く森の中でユリアナ様のイヤリングが見つかったことを再度告げに城へ再び赴きました。ですが、結局のところ……言いがかりをつけるなと一喝された挙句ユリアナ様が行方不明になってしまったということで婚約は解消されたのです」
エドモントが沈痛な表情で語る。
「そう、王家では私が行方不明になったので、婚約を解消すると言ったのね? だけど、私はクラウス王子自ら婚約破棄を言い渡されたのよ? 彼の側にはオフィーリアという女性がいたわ。彼女は……『タリス』王国の第四王女だったわ」
私の言葉に、その場にいた全員が眉をしかめる。
「そうだったのですか……ユリアナ様が行方不明になられて、婚約解消されてすぐのことでした。クラウス王子とオフィーリア王女の婚約が結ばれたのは。そして時を置かずして、二人は結婚しました」
結婚……恐らく、そうではないかと思っていたがエドモントの口から実際に聞かされるとショックだった。
「そう……やっぱり結婚したのね……」
自分の声が震えている。
「はい……そしてその直後、何故か『アレス』国は『タリス』の実効支配下に置かれてしまったのです。『タリス』国は危険思想を持つ国で有名です。そのため、一気に国の治安は悪化しました。そこでベルンハルト公爵は『タリス』の実効支配を奪い返すように進言したところ、謀反の罪を着せられてしまったのです。表向きはユリアナ様が行方不明になったことを逆恨みして、王家に反旗を翻したとされていますが……」
「そ、そんな……!」
エドモントの話に私は自分の顔から血の気が引くのを感じた――
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