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5 エドモント
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「え? 何故謝るの?」
突然の謝罪に訳が分からなかった。
「先程の無礼な態度もそうですし、それに何よりベルンハルト公爵家をお守りすることが出来なかったからです! 我らが至らなかったばかりに皆さまを死なせてしまいました……。本来なら死を以て詫びなければならない程です」
肩を落として俯くエドモント。
「エドモント……顔を上げてくれる?」
私の言葉に彼は恐る恐る顔を上げた。
「私の話を信じてくれるのね?」
「ええ、信じます」
「今まで何があったのか、詳しい話は後で聞かせてもらうわ。とりあえず、二人共心配しているだろうから戻りましょう?」
「はい、分かりました。ですが……一体あの人物は何者ですか?」
「彼はジェイク。この身体に宿った私が川で溺れているところを助けてくれた人なの。何から何までお世話になった命の恩人よ。それどころか、私の為にここまでついてきてくれたのよ」
「そうだったのですか? ですが何故そこまであの人物は……」
エドモントが不思議がるのも無理はないだろう。私自身、何故ジェイクがそこまで助けてくれるのか謎だった。
「私もそこが不思議なのよ。でも、いつか必ず恩は返すつもりよ。それで貴方に一つお願いがあるのだけど、いいかしら?」
「お願い……ですか?」
私の言葉にエドモントは首を傾げた――
****
「エドモントさん!」
「ユリアナ!」
先程の場所へ戻ると、ラルフとジェイクが同時に声を上げた。見るとジェイクは未だにラルフに銃口を突き付けられている。
「ラルフ、やめろ。その人物から銃を下ろせ」
すると、途端にラルフの顔に困惑の表情が浮かぶ。
「な、何故ですか? 二人はこの隠れ家に……」
「やめろと言っているだろう? 理由なら俺から話す」
腕組みをしながらエドモントはラルフを睨みつけた。
「わ、分かりました……」
渋々、ラルフは銃を下ろしたところへジェイクが私に駆け寄ってきた。
「ユリアナ!」
「ジェイクさん」
「大丈夫だったのか? 君があの目付きの悪い男と別の部屋へ行った時は気が気じゃなかった」
そしてジェイクはエドモントを睨んだ。
「ええ。私は大丈夫よ」
目付きが悪いと言われた、エドモントはムッとした表情を浮かべながらも説明を始めた。
「大丈夫だ。二人は怪しい者ではない。この女性はベルンハルト家の遠縁に当たる方だから安心してくれ。何しろ十年以上昔にお会いして以来だったので、すっかり俺も忘れてしまっていたんだよ。ユリアナ公女と同じ名前だったので思い出したのさ」
そしてエドモントは私に視線を送って来た。
「え……?ですが、俺は初耳ですが……」
「それは当たり前だ。お前はまだ騎士になりたてで、ベルンハルト公爵家に仕えたばかりだったからな。当時どのような方々が公爵家を訪れていたか全てを把握してはいないだろう?」
もっともらしい話を並べ立てるエドモントだったが、彼を慕っていたラルフはその言葉を信じてくれた。
「そうだったのですか。ベルンハルト公爵家の遠縁の方とは知らず、失礼致しました」
ラルフは私に謝罪してきた。
一方のジェイクは明らかに不審な眼差しを私に向けてくる。確かに彼の立場から見れば怪しく思うのは無理もない話だ。
すると突然ジェイクが口を開いた。
「ユリアナ。二人だけで話がしたい」
「ジェイクさん……」
それは有無を言わさない、強い口調だった――
突然の謝罪に訳が分からなかった。
「先程の無礼な態度もそうですし、それに何よりベルンハルト公爵家をお守りすることが出来なかったからです! 我らが至らなかったばかりに皆さまを死なせてしまいました……。本来なら死を以て詫びなければならない程です」
肩を落として俯くエドモント。
「エドモント……顔を上げてくれる?」
私の言葉に彼は恐る恐る顔を上げた。
「私の話を信じてくれるのね?」
「ええ、信じます」
「今まで何があったのか、詳しい話は後で聞かせてもらうわ。とりあえず、二人共心配しているだろうから戻りましょう?」
「はい、分かりました。ですが……一体あの人物は何者ですか?」
「彼はジェイク。この身体に宿った私が川で溺れているところを助けてくれた人なの。何から何までお世話になった命の恩人よ。それどころか、私の為にここまでついてきてくれたのよ」
「そうだったのですか? ですが何故そこまであの人物は……」
エドモントが不思議がるのも無理はないだろう。私自身、何故ジェイクがそこまで助けてくれるのか謎だった。
「私もそこが不思議なのよ。でも、いつか必ず恩は返すつもりよ。それで貴方に一つお願いがあるのだけど、いいかしら?」
「お願い……ですか?」
私の言葉にエドモントは首を傾げた――
****
「エドモントさん!」
「ユリアナ!」
先程の場所へ戻ると、ラルフとジェイクが同時に声を上げた。見るとジェイクは未だにラルフに銃口を突き付けられている。
「ラルフ、やめろ。その人物から銃を下ろせ」
すると、途端にラルフの顔に困惑の表情が浮かぶ。
「な、何故ですか? 二人はこの隠れ家に……」
「やめろと言っているだろう? 理由なら俺から話す」
腕組みをしながらエドモントはラルフを睨みつけた。
「わ、分かりました……」
渋々、ラルフは銃を下ろしたところへジェイクが私に駆け寄ってきた。
「ユリアナ!」
「ジェイクさん」
「大丈夫だったのか? 君があの目付きの悪い男と別の部屋へ行った時は気が気じゃなかった」
そしてジェイクはエドモントを睨んだ。
「ええ。私は大丈夫よ」
目付きが悪いと言われた、エドモントはムッとした表情を浮かべながらも説明を始めた。
「大丈夫だ。二人は怪しい者ではない。この女性はベルンハルト家の遠縁に当たる方だから安心してくれ。何しろ十年以上昔にお会いして以来だったので、すっかり俺も忘れてしまっていたんだよ。ユリアナ公女と同じ名前だったので思い出したのさ」
そしてエドモントは私に視線を送って来た。
「え……?ですが、俺は初耳ですが……」
「それは当たり前だ。お前はまだ騎士になりたてで、ベルンハルト公爵家に仕えたばかりだったからな。当時どのような方々が公爵家を訪れていたか全てを把握してはいないだろう?」
もっともらしい話を並べ立てるエドモントだったが、彼を慕っていたラルフはその言葉を信じてくれた。
「そうだったのですか。ベルンハルト公爵家の遠縁の方とは知らず、失礼致しました」
ラルフは私に謝罪してきた。
一方のジェイクは明らかに不審な眼差しを私に向けてくる。確かに彼の立場から見れば怪しく思うのは無理もない話だ。
すると突然ジェイクが口を開いた。
「ユリアナ。二人だけで話がしたい」
「ジェイクさん……」
それは有無を言わさない、強い口調だった――
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