上 下
25 / 98

3 現れた二人

しおりを挟む
「よし、二人共……手を頭の上に組んだならゆっくりとこちらを向け。少しでも妙な動きをした場合は容赦なく撃つからな」

 私達は言われるままにゆっくりと背後を振り向き……私は目を見開いた。

 そ、そんな……!

 こちらに銃を構えて向けていた男は二人だった。そして私は彼らを知っている。何故なら二人は私が率いる部隊の騎士だったからだ。

一番最年少で、まだ騎士になりたてだった新人のラルフ。そして副隊長を務めていたエドモント……。
 
 十年経過していても、すぐに分かった。それだけ私は自分の部隊の騎士たちとは親しい間柄だったからだ。

 良かった……二人は無事だったのだ……。思わず目尻に涙が浮かび、ジェイクが不思議そうな目で私を見つめてくる。

「お前たち……そのまま動くなよ」
「動けば撃つぞ」

 エドモントとラルフが銃を構えたままこちらにゆっくりと近づいてくる。

「くっ……」

 ジェイクは唇を噛み締めたまま二人を睨みつけているも、私の中にはもう彼らに対する恐怖心が薄れていた。危機的状況にあるのは変わりないが、この再会を密かに喜んでいる自分がいた。

 彼らは近距離まで近づいてくると、エドモントが銃を向けたまま尋問してきた。

「お前達……一体どうやってここまで辿り着いた? ここはベルンハルト公爵家の所有する隠れ家と知ってやってきたのか?」

「ベルンハルト公爵家だって……⁉」

 その言葉に驚いたかのようにジェイクが私を見つめる。

「ほう……ベルンハルト公爵家のことを知っているのか? なら公爵家の方々がどうなったのかも知っているのだな?」

 エドモントが銃口をジェイクに向ける。このままでは彼が……!

「待って下さい! ここへ案内したのは私です! 尋問なら……私にして下さい!」

 私はエドモントに訴えた。

「何? 女……お前が? なるほど……それならお前から話を聞いたほうが良さそうだな」

 エドモントはニヤリと笑い、今度は私に銃口を向ける。

「そこの女。それではどうやってこの隠れ家を見つけ出したのか……余すこと無く全て話せ!」

 そしてガチャリと引き金を引いた。

 どうしよう……?エドモントは本気だ。彼は本気で引き金を引こうとしている。
 うまくいくかどうかは分からないが、こうなったら方法はたった一つだけ……。
 彼を信じるのだ……!


「分かりました。お話致しますが……その代わりお願いがあります」

「願いだと?侵入者の癖にどこまでも図々しい女だな……余程さっさと死にたいと見える」

 ニヤリと笑うエドモント。そして先程からラルフはただ黙って見つめているだけであった。

「それほど難しいお願いではありません。ただ……貴方と二人だけで話をさせてもらいたいのです」

 「!」

 その言葉に驚いたかのようにこちらを見つめてくるジェイク。

「ふん……一体どういうつもりか分からんが……いいだろう。望み通り話を聞いてやろう」

 エドモントは頷くと、次にラルフに視線を移した。

「ラルフ」

「はい」

「その男はお前が見張っていろ。いいか?」

「分かりました」

 ラルフは頷くと、ジェイクを再び睨みつける。

「よし、ならこの奥に別に部屋がある。そこに移動するぞ」

 ジェイクは私に銃口を向けながら不敵な笑みを浮かべた――
 
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

幼い公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない… そんな中、夢の中の本を読むと、、、

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

慟哭の螺旋(「悪役令嬢の慟哭」加筆修正版)

浜柔
ファンタジー
前世で遊んだ乙女ゲームと瓜二つの世界に転生していたエカテリーナ・ハイデルフトが前世の記憶を取り戻した時にはもう遅かった。 運命のまま彼女は命を落とす。 だが、それが終わりではない。彼女は怨霊と化した。

悪役令嬢の矜持〜世界が望む悪役令嬢を演じればよろしいのですわね〜

白雲八鈴
ファンタジー
「貴様との婚約は破棄だ!」 はい、なんだか予想通りの婚約破棄をいただきました。ありきたりですわ。もう少し頭を使えばよろしいのに。 ですが、なんと世界の強制力とは恐ろしいものなのでしょう。 いいでしょう!世界が望むならば、悪役令嬢という者を演じて見せましょう。 さて、悪役令嬢とはどういう者なのでしょうか? *作者の目が節穴のため誤字脱字は存在します。 *n番煎じの悪役令嬢物です。軽い感じで読んでいただければと思います。 *小説家になろう様でも投稿しております。

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係

つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

処理中です...