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12 目指す場所は
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「行くあてって……本当にあるのかい?」
ジェイクは私が嘘をついているとでも思っているのだろうか?
「はい。大丈夫です。ちゃんとありますから」
けれど、彼は私をじっと見つめてくる。
「ユリアナ……」
「は、はい」
「君は確か、記憶があやふやなはずだったよね? それどころか、その顔も自分の顔かどうか認識できないと言っていたのにどうして行くあてが分かるんだい? いや、覚えているのかな?」
しまった、確かに私はジェイクにそう伝えてしまった。どうしよう、何とかしてごまかさなければ……。
「はい、そうなのですが……。今朝になって、少し思い出したことがあるのです。知り合いの家が所有していた隠れ家のような物があって、そこに行ってみようと思ったのです」
しどろもどろになりながらも何とか説明する。
「ふ~ん。それで? 場所は分かるのかい?」
「え? 場所……ですか?」
「そう、場所だよ。ここからその知り合いの隠れ家への道順は知っているのかい?」
「道順は良く分かりませんけど、地図があれば行けます。ジェイクさんはこの付近の地図をお持ちですか?」
「地図かい? 持っているよ」
「なら、それを見せていただいても宜しいでしょうか?」
「分かった。持ってくるよ」
ジェイクは部屋の片隅に置かれた棚から丸めた紙を持ってくるとテーブルの上に広げた。
「ほら、これが『アレス王国』の地図だ。そして、ここが現在地の『ナース』地区だ」
『ナース』地区は川沿いにある集落が幾つか点在している小さな地区だった。そしてベルンハルト公爵家のある『ウィスタリア』地区からは約四千メトロ離れている。恐らく十時間程歩けば辿り着ける筈だ。
「分かりました。どうもありがとうございます」
「え? 君はひょっとすると地図が読めるのか?」
ジェイクが意外そうな目で私を見つめて来た。
「はい。読めます」
仮にも公爵令嬢だった私は剣術だけを磨いてきたわけでは無い。生まれた時から、いずれは王族に嫁ぐことが決定していたので貴族令嬢の嗜みは全て学んできた。当然地図を読むくらいはどうということは無い。
「そうなのか。それでどこに行くつもりだい?」』
「はい、『ウィスタリア』地区へ向かうつもりです」
「何だって⁉ 『ウィスタリア』地区だって⁉ あんな遠くの地区まで行くつもりなのか?! それにあの地区はまずいぞ!」
するとジェイクが目を見開いた。
「何か問題でもあるのですか?」
「あるとも。大ありだ! あの場所は今、この国で一番治安が悪い地区なんだ。女性が一人で行くにはあまりに危険すぎる!」
「え? そうなのですか?」
『ウィスタリア』地区はベルンハルト家の領地なので、治安は王都と同じ位安全だったはずなのに?
けれど、ジェイクの目はとても嘘をついているようには思えなかった。
「ジェイクさん。何故『ウィスタリア』地区の治安が悪いのか教えて頂けますか」
「いいだろう。教えてあげるよ」
ジェイクは両手を組むと、説明を始めた――
ジェイクは私が嘘をついているとでも思っているのだろうか?
「はい。大丈夫です。ちゃんとありますから」
けれど、彼は私をじっと見つめてくる。
「ユリアナ……」
「は、はい」
「君は確か、記憶があやふやなはずだったよね? それどころか、その顔も自分の顔かどうか認識できないと言っていたのにどうして行くあてが分かるんだい? いや、覚えているのかな?」
しまった、確かに私はジェイクにそう伝えてしまった。どうしよう、何とかしてごまかさなければ……。
「はい、そうなのですが……。今朝になって、少し思い出したことがあるのです。知り合いの家が所有していた隠れ家のような物があって、そこに行ってみようと思ったのです」
しどろもどろになりながらも何とか説明する。
「ふ~ん。それで? 場所は分かるのかい?」
「え? 場所……ですか?」
「そう、場所だよ。ここからその知り合いの隠れ家への道順は知っているのかい?」
「道順は良く分かりませんけど、地図があれば行けます。ジェイクさんはこの付近の地図をお持ちですか?」
「地図かい? 持っているよ」
「なら、それを見せていただいても宜しいでしょうか?」
「分かった。持ってくるよ」
ジェイクは部屋の片隅に置かれた棚から丸めた紙を持ってくるとテーブルの上に広げた。
「ほら、これが『アレス王国』の地図だ。そして、ここが現在地の『ナース』地区だ」
『ナース』地区は川沿いにある集落が幾つか点在している小さな地区だった。そしてベルンハルト公爵家のある『ウィスタリア』地区からは約四千メトロ離れている。恐らく十時間程歩けば辿り着ける筈だ。
「分かりました。どうもありがとうございます」
「え? 君はひょっとすると地図が読めるのか?」
ジェイクが意外そうな目で私を見つめて来た。
「はい。読めます」
仮にも公爵令嬢だった私は剣術だけを磨いてきたわけでは無い。生まれた時から、いずれは王族に嫁ぐことが決定していたので貴族令嬢の嗜みは全て学んできた。当然地図を読むくらいはどうということは無い。
「そうなのか。それでどこに行くつもりだい?」』
「はい、『ウィスタリア』地区へ向かうつもりです」
「何だって⁉ 『ウィスタリア』地区だって⁉ あんな遠くの地区まで行くつもりなのか?! それにあの地区はまずいぞ!」
するとジェイクが目を見開いた。
「何か問題でもあるのですか?」
「あるとも。大ありだ! あの場所は今、この国で一番治安が悪い地区なんだ。女性が一人で行くにはあまりに危険すぎる!」
「え? そうなのですか?」
『ウィスタリア』地区はベルンハルト家の領地なので、治安は王都と同じ位安全だったはずなのに?
けれど、ジェイクの目はとても嘘をついているようには思えなかった。
「ジェイクさん。何故『ウィスタリア』地区の治安が悪いのか教えて頂けますか」
「いいだろう。教えてあげるよ」
ジェイクは両手を組むと、説明を始めた――
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