15 / 98
9 戦争が起こった理由とは
しおりを挟む
「その驚きよう……本当に何も知らなかったんだね。と言うか、覚えていないのか。この国に住む者なら誰もが知っているはずなのに」
「はい……ですが、ベルンハルト家が滅ぼされてしまったのは全てシュタイナー王家のせいだったのですね?」
許せない……。
テーブルの上で組んでいた両手に力を込める。
「いや、全て王家のせいにしても良いかどうか……。何しろベルンハルト一族が処刑されてすぐに、この国は半ば『タリス』の支配下に置かれてしまったようだし……。ユリアナは知らないだろうけど、一番危険な第一線で戦わされているのは全てアレスの兵士たちだからな」
「そうなのですか?」
「タリスの兵士達は比較的安全地帯で戦っている。戦争被害を被っているのはアレスばかりだ。それにしてもあまりにも話が出来すぎていると思わないか?この国が支配下に置かれてからすぐに、冷戦状態だった『モリス』国と戦争が勃発するなんて」
「確かに……そうですね……」
一体私の知らないところで何が起こっていたのだろう?でも今はそれよりも先に確認したいことがある。
「あの……それで、今ベルンハルト家の所有していた屋敷はどうなってしまったのでしょうか……?」
「公爵家達を処刑した後、全て焼き払われたらしいよ。でも、どのみちこの戦争下では屋敷は無事でいられなかったんじゃないかな?『アレス』の有力貴族たちは戦争に協力する為だと言われて、タリスの国王に財産から兵力まで全て奪われてしまったからね」
「!そ、そんな……!」
もしかすると、私が全ての原因で……この戦争が始まった……?
あまりにも恐ろしい話に身体が震えてしまう。
「大丈夫かい?ユリアナ。顔がさっきからずっと真っ青だ。今夜はもう遅いから……休んだほうがいい。君はあのままベッドを使えばいいから」
「ですが……」
命まで助けてもらって、これ以上ジェイクに迷惑を掛けたくはなかった。
「言っておくけど……病人で、しかも女性をベンチの上で寝かせられるほど僕は神経が図太くないんでね。頼むから言う通りにしてもらえないかな?」
「分かりました……」
頷くと、ようやくジェイクは笑みを浮かべた――
****
「……」
青白い月に照らされたベッドの上で私は窓から見える夜空を見つめていた。
部屋の片隅のベンチではジェイクが眠っており、規則正し寝息が聞こえている。
それにしてもジェイクは何故ここまで良くしてくれるのだろう?私などただのお荷物でしか無いのに、厄介者を引き入れるなんて。
ふと、脳裏に家族のすがたが蘇る。強かった父、優しかった母。
頼りになる二人の兄……そしてまだあどけなさが残る双子の弟と妹……。
私は家族がどのような方法で処刑されたかは聞いていない。いや、聞きたくは無かった。
ただ、どうか苦しまない方法で処刑されたことを願わずにはいられなかった。
私が何故、十年後のこの世界で……しかも別人の身体で蘇ったのか理由は分からない。
けれど、これは家族の敵を私に討つようにと神様が力を貸して下さったのかもしれない。
絶対に仇を討ってやるのだ。
私は心に強く誓った――
「はい……ですが、ベルンハルト家が滅ぼされてしまったのは全てシュタイナー王家のせいだったのですね?」
許せない……。
テーブルの上で組んでいた両手に力を込める。
「いや、全て王家のせいにしても良いかどうか……。何しろベルンハルト一族が処刑されてすぐに、この国は半ば『タリス』の支配下に置かれてしまったようだし……。ユリアナは知らないだろうけど、一番危険な第一線で戦わされているのは全てアレスの兵士たちだからな」
「そうなのですか?」
「タリスの兵士達は比較的安全地帯で戦っている。戦争被害を被っているのはアレスばかりだ。それにしてもあまりにも話が出来すぎていると思わないか?この国が支配下に置かれてからすぐに、冷戦状態だった『モリス』国と戦争が勃発するなんて」
「確かに……そうですね……」
一体私の知らないところで何が起こっていたのだろう?でも今はそれよりも先に確認したいことがある。
「あの……それで、今ベルンハルト家の所有していた屋敷はどうなってしまったのでしょうか……?」
「公爵家達を処刑した後、全て焼き払われたらしいよ。でも、どのみちこの戦争下では屋敷は無事でいられなかったんじゃないかな?『アレス』の有力貴族たちは戦争に協力する為だと言われて、タリスの国王に財産から兵力まで全て奪われてしまったからね」
「!そ、そんな……!」
もしかすると、私が全ての原因で……この戦争が始まった……?
あまりにも恐ろしい話に身体が震えてしまう。
「大丈夫かい?ユリアナ。顔がさっきからずっと真っ青だ。今夜はもう遅いから……休んだほうがいい。君はあのままベッドを使えばいいから」
「ですが……」
命まで助けてもらって、これ以上ジェイクに迷惑を掛けたくはなかった。
「言っておくけど……病人で、しかも女性をベンチの上で寝かせられるほど僕は神経が図太くないんでね。頼むから言う通りにしてもらえないかな?」
「分かりました……」
頷くと、ようやくジェイクは笑みを浮かべた――
****
「……」
青白い月に照らされたベッドの上で私は窓から見える夜空を見つめていた。
部屋の片隅のベンチではジェイクが眠っており、規則正し寝息が聞こえている。
それにしてもジェイクは何故ここまで良くしてくれるのだろう?私などただのお荷物でしか無いのに、厄介者を引き入れるなんて。
ふと、脳裏に家族のすがたが蘇る。強かった父、優しかった母。
頼りになる二人の兄……そしてまだあどけなさが残る双子の弟と妹……。
私は家族がどのような方法で処刑されたかは聞いていない。いや、聞きたくは無かった。
ただ、どうか苦しまない方法で処刑されたことを願わずにはいられなかった。
私が何故、十年後のこの世界で……しかも別人の身体で蘇ったのか理由は分からない。
けれど、これは家族の敵を私に討つようにと神様が力を貸して下さったのかもしれない。
絶対に仇を討ってやるのだ。
私は心に強く誓った――
29
お気に入りに追加
485
あなたにおすすめの小説

妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
ふしだらな母親の娘は、私なのでしょうか?【第5回ツギクル小説大賞 AIタイトル賞】
イチモンジ・ルル
恋愛
奪われ続けた少女に届いた未知の熱が、すべてを変える――
「ふしだら」と汚名を着せられた母。
その罪を背負わされ、虐げられてきた少女ノンナ。幼い頃から政略結婚に縛られ、美貌も才能も奪われ、父の愛すら失った彼女。だが、ある日奪われた魔法の力を取り戻し、信じられる仲間と共に立ち上がる。
歪められた世界で、隠された真実を暴き、奪われた人生を新たな未来に変えていく。
――これは、過去の呪縛に立ち向かい、愛と希望を掴み、自らの手で未来を切り開く少女の戦いと成長の物語――
旧タイトル ふしだらと言われた母親の娘は、実は私ではありません
他サイトにも投稿。
2025/2/28 第5回ツギクル小説大賞 AIタイトル賞をいただきました

【完結】不協和音を奏で続ける二人の関係
つくも茄子
ファンタジー
留学から戻られた王太子からの突然の婚約破棄宣言をされた公爵令嬢。王太子は婚約者の悪事を告発する始末。賄賂?不正?一体何のことなのか周囲も理解できずに途方にくれる。冤罪だと静かに諭す公爵令嬢と激昂する王太子。相反する二人の仲は実は出会った当初からのものだった。王弟を父に帝国皇女を母に持つ血統書付きの公爵令嬢と成り上がりの側妃を母に持つ王太子。貴族然とした計算高く浪費家の婚約者と嫌悪する王太子は公爵令嬢の価値を理解できなかった。それは八年前も今も同じ。二人は互いに理解できない。何故そうなってしまったのか。婚約が白紙となった時、どのような結末がまっているのかは誰にも分からない。
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故
ラララキヲ
ファンタジー
ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。
娘の名前はルーニー。
とても可愛い外見をしていた。
彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。
彼女は前世の記憶を持っていたのだ。
そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。
格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。
しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。
乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。
“悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。
怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。
そして物語は動き出した…………──
※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。
※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。
◇テンプレ乙女ゲームの世界。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇なろうにも上げる予定です。
冤罪を受けたため、隣国へ亡命します
しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」
呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。
「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」
突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。
友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。
冤罪を晴らすため、奮闘していく。
同名主人公にて様々な話を書いています。
立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。
サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。
変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。
ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます!
小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる