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2 森の中の第二離宮
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森を抜けると、目の前に無数の松明に照らされた石造りの城が浮かび上がっていた。
あの城が今回クラウスが私を呼び出した第二離宮だ。城門は閉ざされ、門番の兵士が2名で扉を守っている。
「着いたようね……」
私の呟きと同時に、馬車は止り御者のサムが扉を開けてくれた。
「ユリアナ様。第二離宮に到着致しました」
今にも雨が降り出しそうな夜空の下、馬車から降りると御者のサムに声を掛けた。
「ありがとう、サム。悪いけどここで待っていてくれるかしら。きっと今回もすぐに話は終わると思うから。1時間以内には戻るわ」
「分かりました。しかし相変わらず身勝手な王子ですね。勝手に呼びつけて30分も経たないうちに追い返すのですから」
サムが眉をしかめて私を見る。彼は18歳の若者だ。だからなのか、相手が王族であろうと私の前で平気で不平不満を言う。
「気にしても仕方ないわ。いつものことだから。それでは行ってくるわね」
サムに背を向けると、私は門番のいる城門へと向かった。
「お待ちしておりました。ユリアナ様」
「クラウス殿下がお待ちです」
2人の門番は私を見ると敬礼し、鉄製の城門を開けてくれた。
「ありがとう」
門をくぐり抜けようとした時、1人の門番が声を掛けてきた。
「ところでユリアナ様、剣は今お持ちなのでしょうか?」
「え?剣?」
妙なことを尋ねてくる門番だ。今迄城に入るときに剣を持っているかなど聞かれたことが無いのに」
「いいえ。持ってないわ。そもそも剣を持っているように見える?」
今の私はつま先まで隠れているドレス姿である。
普段の私はあまりロングドレスを着用することは無い。けれど王族であるクラウスと会うときだけは、礼儀を尽くす為にロングドレスを着用することにしていた。
「そうですね。剣は所持されていないようですね。妙なことを尋ねてしまい、申し訳ございませんでした」
「いえ……?別に構わないけど……?」
訝しげに思いながら、私は城門をくぐり抜け、目の前にそびえ立つ城を目指した。
「このような夜分にようこそ、おいで下さいました」
城の大扉の前で私を待っていたのは、この第二離宮で執事を務める顔なじみの初老の男性だった。
「クラウス殿下はもういらしているのかしら?」
「はい。すでに大広間にてユリアナ様をお待ちになっております。御案内致しますので、こちらへどうぞ」
恭しく頭を下げる執事。
「ありがとう」
そして私は執事に連れられて、大広間へと向かった。
松明で照らされた長い廊下を歩いていると、突然雷のゴロゴロと鳴り響く音が城内に響き渡ってきた。
「どうやら雨になりそうですね」
前を歩く執事が私に声を掛けてきた。
「ええ、そうですね……」
サムは大丈夫だろうか……。私は彼の心配をしながら、これから対面するべきクラウスのことを思い、再び憂鬱な気分がこみ上げてくるのだった。
「こちらの大広間にてクラウス様がお待ちしております」
白い大きな扉の前に立つと執事は扉を開けた。
ギィィ~……
重い扉の開く音と同時に目の前に大広間が現れ、私は中へと足を踏み入れた。
そして私は見た。
大広間の中心に、クラウスと……今迄見たことのない女性が彼の側に寄り添うように立っている姿を――。
あの城が今回クラウスが私を呼び出した第二離宮だ。城門は閉ざされ、門番の兵士が2名で扉を守っている。
「着いたようね……」
私の呟きと同時に、馬車は止り御者のサムが扉を開けてくれた。
「ユリアナ様。第二離宮に到着致しました」
今にも雨が降り出しそうな夜空の下、馬車から降りると御者のサムに声を掛けた。
「ありがとう、サム。悪いけどここで待っていてくれるかしら。きっと今回もすぐに話は終わると思うから。1時間以内には戻るわ」
「分かりました。しかし相変わらず身勝手な王子ですね。勝手に呼びつけて30分も経たないうちに追い返すのですから」
サムが眉をしかめて私を見る。彼は18歳の若者だ。だからなのか、相手が王族であろうと私の前で平気で不平不満を言う。
「気にしても仕方ないわ。いつものことだから。それでは行ってくるわね」
サムに背を向けると、私は門番のいる城門へと向かった。
「お待ちしておりました。ユリアナ様」
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2人の門番は私を見ると敬礼し、鉄製の城門を開けてくれた。
「ありがとう」
門をくぐり抜けようとした時、1人の門番が声を掛けてきた。
「ところでユリアナ様、剣は今お持ちなのでしょうか?」
「え?剣?」
妙なことを尋ねてくる門番だ。今迄城に入るときに剣を持っているかなど聞かれたことが無いのに」
「いいえ。持ってないわ。そもそも剣を持っているように見える?」
今の私はつま先まで隠れているドレス姿である。
普段の私はあまりロングドレスを着用することは無い。けれど王族であるクラウスと会うときだけは、礼儀を尽くす為にロングドレスを着用することにしていた。
「そうですね。剣は所持されていないようですね。妙なことを尋ねてしまい、申し訳ございませんでした」
「いえ……?別に構わないけど……?」
訝しげに思いながら、私は城門をくぐり抜け、目の前にそびえ立つ城を目指した。
「このような夜分にようこそ、おいで下さいました」
城の大扉の前で私を待っていたのは、この第二離宮で執事を務める顔なじみの初老の男性だった。
「クラウス殿下はもういらしているのかしら?」
「はい。すでに大広間にてユリアナ様をお待ちになっております。御案内致しますので、こちらへどうぞ」
恭しく頭を下げる執事。
「ありがとう」
そして私は執事に連れられて、大広間へと向かった。
松明で照らされた長い廊下を歩いていると、突然雷のゴロゴロと鳴り響く音が城内に響き渡ってきた。
「どうやら雨になりそうですね」
前を歩く執事が私に声を掛けてきた。
「ええ、そうですね……」
サムは大丈夫だろうか……。私は彼の心配をしながら、これから対面するべきクラウスのことを思い、再び憂鬱な気分がこみ上げてくるのだった。
「こちらの大広間にてクラウス様がお待ちしております」
白い大きな扉の前に立つと執事は扉を開けた。
ギィィ~……
重い扉の開く音と同時に目の前に大広間が現れ、私は中へと足を踏み入れた。
そして私は見た。
大広間の中心に、クラウスと……今迄見たことのない女性が彼の側に寄り添うように立っている姿を――。
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