期間限定の悪役令嬢

結城芙由奈 

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エピソード31 多分、夕日のせい

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 あの後、私はフォスティーヌに海でニールに襲われそうになった所をアレクが助けてくれた話をすると、私に泣きながら謝ってきた。そしてもう過激な衣装は強要しないと約束してくれた。
うん、フォスティーヌはやっぱり悪い子じゃない。だって自分の非は素直に認めるし、あの事件の後は1週間ほどは落ち込んでいたからね。
そして一方のニールはどうなったかと言うと、規律を乱して無理やり参加者の女性を襲おうとした罰と言う事で、強制的にサマースクールを終了させられてリゾート島から追い出されてしまった。でもこれは私にとって喜ぶべきことだった。だって私を襲おうとしたニールと、この先も顔を合わせなければいけないなんて生きた心地がしないもの。

 そして時がたつのは早いもので、リゾート島へやってきて・・・気づけば3週間が経過していた―。


****

「おーい、リアーッ!」

今日、私はアレクと水族館に遊びに来ていた。

「何、アレク?」

するとアレクはペンギンのコーナーで私の事を手招きしている。

「ほら、こっち来いよ。ペンギンが沢山いる。可愛いぞぉ~。」

「へ~ペンギンか・・・。」

私はアレクの元へ向かうと、水槽の前に額をくっつけて食い入るようにアレクはペンギンを見つめていた。

「余程好きなんだね。ペンギンが。」

アレクの横顔を見ながら私は声を掛けた。

「ああ、まあな~・・・。だって可愛いじゃないか。ペンギン。」

目の前の水槽には子供の背丈よりも小さなペンギンが沢山並んでいた。このペンギンはケープペンギンと呼ばれ、身長が70㎝と表記されている。

「うん、確かに可愛いね・・・。でも不思議だよね~。私、昔はペンギンって言ったら寒い海にしかすまない生き物だと思っていたのに・・南国にも住んでいるんだから・・フフフ・・・小っちゃくて可愛い・・・あのヨチヨチ歩きなんて小さな子供みたいだと思わない?」

そしてアレクを見ると、何故かアレクはじ~っと私を見つめている。

「あ、ああ・・・確かに可愛いな・・・。」

その頬は・・少しだけ赤く染まっていた。

「な、何?どうしたの?アレク。」

すると、アレクはハッとした顔になって。慌てたように視線を私からそらした。

「い、いや・・・何でもない」

その時、私の視線の先に同じサマースクール参加者の男女のカップルを見た。2人は仲睦まじげに腕を組んで歩いている。

「あれ・・・あの人・・この間まで王子様にしか興味無かったのに・・。」

するとアレクが言った。

「ああ・・・きっと、王子の事は諦めて別の男に鞍替えしたんじゃないか?」

「ふ~ん・・そうなんだ。」

「きっとこのサマースクールが終わるころには・・皆収まるべきところにおさまってるんじゃないのか?何せもう3週間も過ぎたし・・・。」

「そ、そうか・・・残りはあと1週間ちょっとしかないんだね・・。フォスティーヌと王子様はうまくいくかな・・・大分私の悪役令嬢をぶりをあの2人の前で披露してきたからね・・・他の人達よりは距離感が近い気がするけどな・・・。」

「・・・・。」

しかし、アレクは無反応で・・どこか思いつめた顔をしている。

「ねえ?聞いてるのアレク?」

私はアレクの顔を覗き込んだ。

「うわあ!お、驚かせるなよ、リアッ!」

アレクは胸を押さえて私を見下ろした。

「別に驚かしたつもりはないけど・・。ねぇ、そろそろ帰らない?もう夕方の4時だし。」

「ん?あ、ああ・・・確かにそうだな。それじゃ・・帰るか。」

「うん。帰ろう?」

そして私はアレクの数歩前を歩いていると、突然アレクに右手を握り締められた。

「え?な、何?」

「・・はぐれるといけないからな。」

「・・・へ?」

私は館内をキョロキョロ見渡したが、お客は数えるほどしか来ていない。

「ねぇ・・・お客さん・・全然いないけど?」

「・・・いいから帰るぞ。」

私の前を歩くアレクは・・・耳まで真っ赤になっていたけど、うん。きっとあれは・・夕日のせいだろう。

こうして私とアレクは互いに黙って手をつないだまま、水族館を後にした―。


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