33 / 45
エピソード31 多分、夕日のせい
しおりを挟む
あの後、私はフォスティーヌに海でニールに襲われそうになった所をアレクが助けてくれた話をすると、私に泣きながら謝ってきた。そしてもう過激な衣装は強要しないと約束してくれた。
うん、フォスティーヌはやっぱり悪い子じゃない。だって自分の非は素直に認めるし、あの事件の後は1週間ほどは落ち込んでいたからね。
そして一方のニールはどうなったかと言うと、規律を乱して無理やり参加者の女性を襲おうとした罰と言う事で、強制的にサマースクールを終了させられてリゾート島から追い出されてしまった。でもこれは私にとって喜ぶべきことだった。だって私を襲おうとしたニールと、この先も顔を合わせなければいけないなんて生きた心地がしないもの。
そして時がたつのは早いもので、リゾート島へやってきて・・・気づけば3週間が経過していた―。
****
「おーい、リアーッ!」
今日、私はアレクと水族館に遊びに来ていた。
「何、アレク?」
するとアレクはペンギンのコーナーで私の事を手招きしている。
「ほら、こっち来いよ。ペンギンが沢山いる。可愛いぞぉ~。」
「へ~ペンギンか・・・。」
私はアレクの元へ向かうと、水槽の前に額をくっつけて食い入るようにアレクはペンギンを見つめていた。
「余程好きなんだね。ペンギンが。」
アレクの横顔を見ながら私は声を掛けた。
「ああ、まあな~・・・。だって可愛いじゃないか。ペンギン。」
目の前の水槽には子供の背丈よりも小さなペンギンが沢山並んでいた。このペンギンはケープペンギンと呼ばれ、身長が70㎝と表記されている。
「うん、確かに可愛いね・・・。でも不思議だよね~。私、昔はペンギンって言ったら寒い海にしかすまない生き物だと思っていたのに・・南国にも住んでいるんだから・・フフフ・・・小っちゃくて可愛い・・・あのヨチヨチ歩きなんて小さな子供みたいだと思わない?」
そしてアレクを見ると、何故かアレクはじ~っと私を見つめている。
「あ、ああ・・・確かに可愛いな・・・。」
その頬は・・少しだけ赤く染まっていた。
「な、何?どうしたの?アレク。」
すると、アレクはハッとした顔になって。慌てたように視線を私からそらした。
「い、いや・・・何でもない」
その時、私の視線の先に同じサマースクール参加者の男女のカップルを見た。2人は仲睦まじげに腕を組んで歩いている。
「あれ・・・あの人・・この間まで王子様にしか興味無かったのに・・。」
するとアレクが言った。
「ああ・・・きっと、王子の事は諦めて別の男に鞍替えしたんじゃないか?」
「ふ~ん・・そうなんだ。」
「きっとこのサマースクールが終わるころには・・皆収まるべきところにおさまってるんじゃないのか?何せもう3週間も過ぎたし・・・。」
「そ、そうか・・・残りはあと1週間ちょっとしかないんだね・・。フォスティーヌと王子様はうまくいくかな・・・大分私の悪役令嬢をぶりをあの2人の前で披露してきたからね・・・他の人達よりは距離感が近い気がするけどな・・・。」
「・・・・。」
しかし、アレクは無反応で・・どこか思いつめた顔をしている。
「ねえ?聞いてるのアレク?」
私はアレクの顔を覗き込んだ。
「うわあ!お、驚かせるなよ、リアッ!」
アレクは胸を押さえて私を見下ろした。
「別に驚かしたつもりはないけど・・。ねぇ、そろそろ帰らない?もう夕方の4時だし。」
「ん?あ、ああ・・・確かにそうだな。それじゃ・・帰るか。」
「うん。帰ろう?」
そして私はアレクの数歩前を歩いていると、突然アレクに右手を握り締められた。
「え?な、何?」
「・・はぐれるといけないからな。」
「・・・へ?」
私は館内をキョロキョロ見渡したが、お客は数えるほどしか来ていない。
「ねぇ・・・お客さん・・全然いないけど?」
「・・・いいから帰るぞ。」
私の前を歩くアレクは・・・耳まで真っ赤になっていたけど、うん。きっとあれは・・夕日のせいだろう。
こうして私とアレクは互いに黙って手をつないだまま、水族館を後にした―。
うん、フォスティーヌはやっぱり悪い子じゃない。だって自分の非は素直に認めるし、あの事件の後は1週間ほどは落ち込んでいたからね。
そして一方のニールはどうなったかと言うと、規律を乱して無理やり参加者の女性を襲おうとした罰と言う事で、強制的にサマースクールを終了させられてリゾート島から追い出されてしまった。でもこれは私にとって喜ぶべきことだった。だって私を襲おうとしたニールと、この先も顔を合わせなければいけないなんて生きた心地がしないもの。
そして時がたつのは早いもので、リゾート島へやってきて・・・気づけば3週間が経過していた―。
****
「おーい、リアーッ!」
今日、私はアレクと水族館に遊びに来ていた。
「何、アレク?」
するとアレクはペンギンのコーナーで私の事を手招きしている。
「ほら、こっち来いよ。ペンギンが沢山いる。可愛いぞぉ~。」
「へ~ペンギンか・・・。」
私はアレクの元へ向かうと、水槽の前に額をくっつけて食い入るようにアレクはペンギンを見つめていた。
「余程好きなんだね。ペンギンが。」
アレクの横顔を見ながら私は声を掛けた。
「ああ、まあな~・・・。だって可愛いじゃないか。ペンギン。」
目の前の水槽には子供の背丈よりも小さなペンギンが沢山並んでいた。このペンギンはケープペンギンと呼ばれ、身長が70㎝と表記されている。
「うん、確かに可愛いね・・・。でも不思議だよね~。私、昔はペンギンって言ったら寒い海にしかすまない生き物だと思っていたのに・・南国にも住んでいるんだから・・フフフ・・・小っちゃくて可愛い・・・あのヨチヨチ歩きなんて小さな子供みたいだと思わない?」
そしてアレクを見ると、何故かアレクはじ~っと私を見つめている。
「あ、ああ・・・確かに可愛いな・・・。」
その頬は・・少しだけ赤く染まっていた。
「な、何?どうしたの?アレク。」
すると、アレクはハッとした顔になって。慌てたように視線を私からそらした。
「い、いや・・・何でもない」
その時、私の視線の先に同じサマースクール参加者の男女のカップルを見た。2人は仲睦まじげに腕を組んで歩いている。
「あれ・・・あの人・・この間まで王子様にしか興味無かったのに・・。」
するとアレクが言った。
「ああ・・・きっと、王子の事は諦めて別の男に鞍替えしたんじゃないか?」
「ふ~ん・・そうなんだ。」
「きっとこのサマースクールが終わるころには・・皆収まるべきところにおさまってるんじゃないのか?何せもう3週間も過ぎたし・・・。」
「そ、そうか・・・残りはあと1週間ちょっとしかないんだね・・。フォスティーヌと王子様はうまくいくかな・・・大分私の悪役令嬢をぶりをあの2人の前で披露してきたからね・・・他の人達よりは距離感が近い気がするけどな・・・。」
「・・・・。」
しかし、アレクは無反応で・・どこか思いつめた顔をしている。
「ねえ?聞いてるのアレク?」
私はアレクの顔を覗き込んだ。
「うわあ!お、驚かせるなよ、リアッ!」
アレクは胸を押さえて私を見下ろした。
「別に驚かしたつもりはないけど・・。ねぇ、そろそろ帰らない?もう夕方の4時だし。」
「ん?あ、ああ・・・確かにそうだな。それじゃ・・帰るか。」
「うん。帰ろう?」
そして私はアレクの数歩前を歩いていると、突然アレクに右手を握り締められた。
「え?な、何?」
「・・はぐれるといけないからな。」
「・・・へ?」
私は館内をキョロキョロ見渡したが、お客は数えるほどしか来ていない。
「ねぇ・・・お客さん・・全然いないけど?」
「・・・いいから帰るぞ。」
私の前を歩くアレクは・・・耳まで真っ赤になっていたけど、うん。きっとあれは・・夕日のせいだろう。
こうして私とアレクは互いに黙って手をつないだまま、水族館を後にした―。
22
お気に入りに追加
130
あなたにおすすめの小説
旦那様の様子がおかしいのでそろそろ離婚を切り出されるみたいです。
バナナマヨネーズ
恋愛
とある王国の北部を治める公爵夫婦は、すべての領民に愛されていた。
しかし、公爵夫人である、ギネヴィアは、旦那様であるアルトラーディの様子がおかしいことに気が付く。
最近、旦那様の様子がおかしい気がする……。
わたしの顔を見て、何か言いたそうにするけれど、結局何も言わない旦那様。
旦那様と結婚して十年の月日が経過したわ。
当時、十歳になったばかりの幼い旦那様と、見た目十歳くらいのわたし。
とある事情で荒れ果てた北部を治めることとなった旦那様を支える為、結婚と同時に北部へ住処を移した。
それから十年。
なるほど、とうとうその時が来たのね。
大丈夫よ。旦那様。ちゃんと離婚してあげますから、安心してください。
一人の女性を心から愛する旦那様(超絶妻ラブ)と幼い旦那様を立派な紳士へと育て上げた一人の女性(合法ロリ)の二人が紡ぐ、勘違いから始まり、運命的な恋に気が付き、真実の愛に至るまでの物語。
全36話
モブですら無いと落胆したら悪役令嬢だった~前世コミュ障引きこもりだった私は今世は素敵な恋がしたい~
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
前世コミュ障で話し下手な私はゲームの世界に転生できた。しかし、ヒロインにしてほしいと神様に祈ったのに、なんとモブにすらなれなかった。こうなったら仕方がない。せめてゲームの世界が見れるように一生懸命勉強して私は最難関の王立学園に入学した。ヒロインの聖女と王太子、多くのイケメンが出てくるけれど、所詮モブにもなれない私はお呼びではない。コミュ障は相変わらずだし、でも、折角神様がくれたチャンスだ。今世は絶対に恋に生きるのだ。でも色々やろうとするんだけれど、全てから回り、全然うまくいかない。挙句の果てに私が悪役令嬢だと判ってしまった。
でも、聖女は虐めていないわよ。えええ?、反逆者に私の命が狙われるている?ちょっと、それは断罪されてた後じゃないの? そこに剣構えた人が待ち構えているんだけど・・・・まだ死にたくないわよ・・・・。
果たして主人公は生き残れるのか? 恋はかなえられるのか?
ハッピーエンド目指して頑張ります。
小説家になろう、カクヨムでも掲載中です。
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
完 あの、なんのことでしょうか。
水鳥楓椛
恋愛
私、シェリル・ラ・マルゴットはとっても胃が弱わく、前世共々ストレスに対する耐性が壊滅的。
よって、三大公爵家唯一の息女でありながら、王太子の婚約者から外されていた。
それなのに………、
「シェリル・ラ・マルゴット!卑しく僕に噛み付く悪女め!!今この瞬間を以て、貴様との婚約を破棄しゅるっ!!」
王立学園の卒業パーティー、赤の他人、否、仕えるべき未来の主君、王太子アルゴノート・フォン・メッテルリヒは壁際で従者と共にお花になっていた私を舞台の中央に無理矢理連れてた挙句、誤り満載の言葉遣いかつ最後の最後で舌を噛むというなんとも残念な婚約破棄を叩きつけてきた。
「あの………、なんのことでしょうか?」
あまりにも素っ頓狂なことを叫ぶ幼馴染に素直にびっくりしながら、私は斜め後ろに控える従者に声をかける。
「私、彼と婚約していたの?」
私の疑問に、従者は首を横に振った。
(うぅー、胃がいたい)
前世から胃が弱い私は、精神年齢3歳の幼馴染を必死に諭す。
(だって私、王妃にはゼッタイになりたくないもの)
悪役令嬢が死んだ後
ぐう
恋愛
王立学園で殺人事件が起きた。
被害者は公爵令嬢 加害者は男爵令嬢
男爵令嬢は王立学園で多くの高位貴族令息を侍らせていたと言う。
公爵令嬢は婚約者の第二王子に常に邪険にされていた。
殺害理由はなんなのか?
視察に訪れていた第一王子の目の前で事件は起きた。第一王子が事件を調査する目的は?
*一話に流血・残虐な表現が有ります。話はわかる様になっていますのでお嫌いな方は二話からお読み下さい。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる