期間限定の悪役令嬢

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エピソード6 帰りたい私

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「は、話って・・・?一体何の事ですか?」

「ほら。それがお前の本来の素顔なんだろう?」

「ほ、本来の素顔・・?」

「ああ、そうだ。無理に高飛車な女の振りしたってすぐにボロが出るだけだ。」

「う・・・。」

駄目だ・・この付き人さんにはもう完全に私の本性が見抜かれているらしい。

「誰にも・・言わないで下さいよ・・?」

「それは約束できかねるな。」

「何故ですか?」

「どうせ、お前だってこのサマースクールに参加したのは後ろに座っている王子が目的で来ただけなんだろう?そういう女はあまり信頼できないんでね。」

付き人さんは溜息をつきながら言う。

「そんなんじゃないですよ。私はこの島に来るまではどんな人達が参加するのか知らなかったんですから。」

窓の外を眺めながらポツリと言う。

「え・・?マジか?その話。」

付き人さんは呆気にとられた顔で言う。

「こんな話嘘ついてどうするんですか?」

チラリと付き人さんを横目で見た。すると、次に付き人さんはとんでもないことを言い始めたのだ。

「あそこにいる女たちはみーんなあの王子が参加するからって来た連中ばかりだぞ?王子ってだけで群がってくる女たちもどうかしてるが、こんな企画を考える王子も酔狂な男だよ。ここはそんなイカレた連中の集まりさ。」

「ちょっと・・・・いいんですか?仮にも貴方はあの王子様の付き人なんですよね?雇い主さんなんですよね?そんな方に対して身もふたもない言い方をして・・。」

すると付き人さんが言う。

「大体・・・王子として生まれただけで・・集まってくる人間たちは・・誰1人として、1人の人間としては見てくれないんだ。王子という肩書でしか・・誰も見てくれないんだよ。そんな連中はイカレていると思わないか?」

「随分王子様に感情移入した物言いをするんですねえ・・・。付き人さんは、あの王子様の事を大切に思っているんですね?」

私は付き人さんの観察眼に思わず感心してしまった。

「い、いや・・・別にそういうわけじゃないが・・それより俺の事を付き人さんて呼ぶのはよせよ。俺の名前はアレクセイ・ロンドだ。アレクって呼べばいい。お前の名は何て言うんだ?」

「私はリアンナ・ウェストです。リアンナでもリアでもお好きなように呼んでください。」

「そうか。ならリアがいいかな?可愛らしい名前だからな。」

そして初めて笑った。その笑顔はまるで少年の様で、思わずドキリとしてしまった。

「ところで、リア。」

「何ですか。アレクさん。」

するとアレクさんは何故かムッとした表情を見せると言った。

「俺に敬語を使うのはやめろ。それにさん付けで名前も呼ぶな。何か他人行儀で嫌だからな。」

「え・・?」

だって、他人じゃないの・・・。私達、ついさっき空港で会ったばかりだよね?
そして私の考えは・・すぐにアレクさんにばれてしまった。

「何だ?その露骨に嫌そうな顔は・・俺たちは他人同士だと思ってるんじゃないのか?」

どうやら・・・私は思ったことがすぐに顔に出てしまうようだ。

「え・・ええ・・まあ確かにそう思いましたけど・・?」

「年だって俺たちはさほど変わりが無いんだし、1カ月この島で一緒に暮らすんだ。他人行儀な事はやめよう。」

「はーい、それじゃこれからよろしくね。アレク。」

「ああ、よろしくな。リア。ところで・・・まだ肝心な事を聞いていなかったな。どうしてこんな派手な格好に慣れない態度を取ろうとしていたんだ?」

アレクが身を乗り出してきた。

「やっぱり言わなきゃダメ?誰にも言わないって約束してくれなくちゃ話せないよ。」

思わず口をとがらせると、アレクは溜息をついた。

「分かったよ、誰にも言わないから・・言ってみろ。」

「実はね・・・あそこのグループには私の友達が参加していて・・・・。」

私は先ほどから後部座席で大騒ぎしている集団をチラリと見ながら言う。

「好きな人の気を引きたいから・・悪役令嬢になってその人の前で虐めて欲しいって頼まれちゃったのよ。それが・・まさか王子様だったなんて・・・最悪。もし友達が王子様に見初められちゃって、今まで虐めていた罰だって王子様に責められた挙句・・裁判にかけられたらどうしよう・・。」

すると、アレクは大声で笑った。

「ハハハハ・・!そ、そんなはずないだろう?たかがそれだけの事で・・第一、そんな王子の前でだけ、虐められたからって本気で気を引けると思ってるのか?!リアの友人は頭がおかしいんじゃないか?」

「あ、し~ッ!聞かれちゃうでしょう?!」

慌ててアレクに言うもすでに遅し。私をナンパしてきた男3人が恨めしそうな目で見ているではないか。

・・これでますます私は彼らに目をつけられてしまったかもしれない・・。

ああ、帰りたい・・・。

島について1時間もたたないうちに、私は激しく後悔するのだった―。









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