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第4夜
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「ううう…酷い…いきなりひっぱたくなんて…」
右頬を赤く腫らした彼が頬を手で抑えながら涙目で見る。
「な、何よ。それはトビーが痴漢まがいの事するからでしょう?勝手に人のおでこに自分のおでこをくっつけて…」
大体普段から剣を振るってブギーマンと戦い、傷だらけになっているくせに、私にひっぱたかれたくらいで頬を腫らして涙目になるなんて…。
「何故僕が痴漢になるのですかっ?口と口をくっつけたわけじゃあるまいし…」
彼の言葉に仰天した。
「えっ!ま、ま、まさか…トビー…誰かと…く、口と口を…くっつけたことあるの?!」
トビーは不思議そうな顔で首をかしげてこちらを見ている。
「どうなのよっ!正直に答えなさいっ!」
「ええっ?!知りませんよ!そんな事!」
「自分の事なのに知らないって事は無いでしょうっ?!」
彼の首根っこを掴んでグラグラと揺すぶる。
「うわっ!や、やめて下さい!ローザッ!だ、大体僕の記憶が殆ど無いことはローザだって知っているでしょう?!」
こうして私と彼は教会の前でしばらく揉め続けた―。
****
「うわ~!すっごい人ね!」
私と彼は今、町にやってきていた。今夜は年に一度の特別なカーニバルということで大勢の人々がまだ始まってもいないカーニバルの雰囲気を楽しんでいた。何故なら町を歩く人々の殆どが恐ろしい仮装をしていたからだ。顔に恐ろしい特殊メイク?を施していたり、顔にお面をつけて歩いていたり…。
「でも、こんな仮装をしていたら…本当にブギーマンが何処にいるのか分からないわね…」
私は彼の右袖を握りしめながら言った。
「ええ…そうですが…でも僕にはあるとっておきの秘策があるので大丈夫です。まぁ少々危険ではありますが…」
「え?まさかトビー…何か私にさせるつもりじゃないでしょうね?」
彼が言う『危険』とは大抵私にまで危害が及ぶことが多い。その為に命の危機にさらされた事など一度や二度ではすまされていない。
「大丈夫、ローザには危害が及ばないので大丈夫ですよ。でも今回は沢山栄養をつけたほうが良さそうですね。あ、あの串焼きのお肉なんか美味しそうですよ!あれを食べに行きましょう!」
彼が人混みをかき分けて進み始めたので、私も必死になって彼の服を掴んではぐれないようについていった―。
****
19時―
彼はまだ教会のベンチに横たわって眠っている。高い天井に取り付けられた窓ガラスからは月の光が差し込み、教会の内部を青白く照らしていた。
「もう~…いつまで眠っているつもりなのよ、トビーは…」
彼の側で様子を伺ってた時…。
キィ~…
扉が開かれる音が静かな教会に響き渡り、コツコツと足音がこちらに向かって近づいてくる。
「だ、誰っ?!」
恐怖で声を上ずらせながら言うと、暗闇の中からシスターのレリアナが現れた。
「あ…レ、レリアナ…?」
「こんばんは、ローザさん」
「こ、こんばんは…?」
何でまた挨拶をするのだろう。
「トビーはどうしてる?」
「あ、彼ならここのベンチで寝ているわ。起こさなくていいのかなと思ってるんだけど…」
「フフフ…カーニバルが始まるのは後1時間後だから…もう少し寝かせて大丈夫じゃないの?それより、ローザさん」
「はい?」
「貴女もブギーマンと戦っているのでしょう?」
「え?あ~いえ、私はたたか戦うというよりも彼のアシスタントですね。」
そう、私の役目はブギーマンと戦う為に人の姿から異形の姿へ変身したトビーを正気に戻す…それが私の役割なのだから。
「そう…そう言えば、ローザさん。この教会の裏手には井戸があるの。その井戸は聖水になっているのよ。ブギーマンと戦うのに必要になると思うから…これを貴女にあげるわ」
レリアナはポケットから蓋のついたガラス瓶を取り出すと言った。
「このガラス瓶に井戸水を汲んで入れてくるといいわ。きっと聖水が2人を守ってくれるから」
「え?ありがとう!それじゃ早速くんでくるわ!」
私はレリアナからガラス瓶を受け取ると、急いで井戸へ向かった。
井戸の中に桶を投げ落とし、水を組むとロープを掴んでガラガラと引き上げた。桶の中には水がたっぷりはいっている。
「う~ん…本当にこれが聖水なのかしら…?どう見てもただの水に見えるけどな…」
でも、教会の井戸で汲んだ水なのだから有り難いことに代わりはないだろう。
「それじゃ早速瓶にいれようかな?」
私はレリアナから貰った瓶に水をたっぷり入れると蓋を締めた。
「よし、2人のところへ戻ろう」
そして…教会に戻った私はとんでもないものを目撃することになる―。
右頬を赤く腫らした彼が頬を手で抑えながら涙目で見る。
「な、何よ。それはトビーが痴漢まがいの事するからでしょう?勝手に人のおでこに自分のおでこをくっつけて…」
大体普段から剣を振るってブギーマンと戦い、傷だらけになっているくせに、私にひっぱたかれたくらいで頬を腫らして涙目になるなんて…。
「何故僕が痴漢になるのですかっ?口と口をくっつけたわけじゃあるまいし…」
彼の言葉に仰天した。
「えっ!ま、ま、まさか…トビー…誰かと…く、口と口を…くっつけたことあるの?!」
トビーは不思議そうな顔で首をかしげてこちらを見ている。
「どうなのよっ!正直に答えなさいっ!」
「ええっ?!知りませんよ!そんな事!」
「自分の事なのに知らないって事は無いでしょうっ?!」
彼の首根っこを掴んでグラグラと揺すぶる。
「うわっ!や、やめて下さい!ローザッ!だ、大体僕の記憶が殆ど無いことはローザだって知っているでしょう?!」
こうして私と彼は教会の前でしばらく揉め続けた―。
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「うわ~!すっごい人ね!」
私と彼は今、町にやってきていた。今夜は年に一度の特別なカーニバルということで大勢の人々がまだ始まってもいないカーニバルの雰囲気を楽しんでいた。何故なら町を歩く人々の殆どが恐ろしい仮装をしていたからだ。顔に恐ろしい特殊メイク?を施していたり、顔にお面をつけて歩いていたり…。
「でも、こんな仮装をしていたら…本当にブギーマンが何処にいるのか分からないわね…」
私は彼の右袖を握りしめながら言った。
「ええ…そうですが…でも僕にはあるとっておきの秘策があるので大丈夫です。まぁ少々危険ではありますが…」
「え?まさかトビー…何か私にさせるつもりじゃないでしょうね?」
彼が言う『危険』とは大抵私にまで危害が及ぶことが多い。その為に命の危機にさらされた事など一度や二度ではすまされていない。
「大丈夫、ローザには危害が及ばないので大丈夫ですよ。でも今回は沢山栄養をつけたほうが良さそうですね。あ、あの串焼きのお肉なんか美味しそうですよ!あれを食べに行きましょう!」
彼が人混みをかき分けて進み始めたので、私も必死になって彼の服を掴んではぐれないようについていった―。
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19時―
彼はまだ教会のベンチに横たわって眠っている。高い天井に取り付けられた窓ガラスからは月の光が差し込み、教会の内部を青白く照らしていた。
「もう~…いつまで眠っているつもりなのよ、トビーは…」
彼の側で様子を伺ってた時…。
キィ~…
扉が開かれる音が静かな教会に響き渡り、コツコツと足音がこちらに向かって近づいてくる。
「だ、誰っ?!」
恐怖で声を上ずらせながら言うと、暗闇の中からシスターのレリアナが現れた。
「あ…レ、レリアナ…?」
「こんばんは、ローザさん」
「こ、こんばんは…?」
何でまた挨拶をするのだろう。
「トビーはどうしてる?」
「あ、彼ならここのベンチで寝ているわ。起こさなくていいのかなと思ってるんだけど…」
「フフフ…カーニバルが始まるのは後1時間後だから…もう少し寝かせて大丈夫じゃないの?それより、ローザさん」
「はい?」
「貴女もブギーマンと戦っているのでしょう?」
「え?あ~いえ、私はたたか戦うというよりも彼のアシスタントですね。」
そう、私の役目はブギーマンと戦う為に人の姿から異形の姿へ変身したトビーを正気に戻す…それが私の役割なのだから。
「そう…そう言えば、ローザさん。この教会の裏手には井戸があるの。その井戸は聖水になっているのよ。ブギーマンと戦うのに必要になると思うから…これを貴女にあげるわ」
レリアナはポケットから蓋のついたガラス瓶を取り出すと言った。
「このガラス瓶に井戸水を汲んで入れてくるといいわ。きっと聖水が2人を守ってくれるから」
「え?ありがとう!それじゃ早速くんでくるわ!」
私はレリアナからガラス瓶を受け取ると、急いで井戸へ向かった。
井戸の中に桶を投げ落とし、水を組むとロープを掴んでガラガラと引き上げた。桶の中には水がたっぷりはいっている。
「う~ん…本当にこれが聖水なのかしら…?どう見てもただの水に見えるけどな…」
でも、教会の井戸で汲んだ水なのだから有り難いことに代わりはないだろう。
「それじゃ早速瓶にいれようかな?」
私はレリアナから貰った瓶に水をたっぷり入れると蓋を締めた。
「よし、2人のところへ戻ろう」
そして…教会に戻った私はとんでもないものを目撃することになる―。
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