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ケリー ②
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アゼリア様が泣いている…!
「アゼリア様っ?!入りますねっ!」
アゼリア様の返事も待たずに扉を開けると、ベッドの上で顔を覆って肩を震わせているアゼリア様が目に飛び込んできた。
「アゼリア様っ!どうされたのですかっ?!」
私の声にアゼリア様が顔を上げた。その目は赤くなり、頬には涙が伝っている。
「泣いていたのですか?一体何故…」
アゼリア様に寄り添って手を握った。
「ケリー…」
「何故泣いていたのか…私でよければ話して頂けませんか…?」
するとアゼリア様が涙を流しながら言った。
「私…カイに告白されたの…。私の事が好きだって…側にいさせて欲しいって…」
やっぱり…カイザード王太子様はアゼリア様の事が好きだったんだ!私は嬉しくなった。
「そうなのですか?やはりカイザード王太子様はアゼリア様の事が好きだったのですね?それで会いに来られたのですね?」
「ええ…。カイはそう言っていたわ。私…カイに好きだと言って貰えて…とても嬉しかった。そういう感情を今迄男の人から向けられた事が無かったから…」
アゼリア様はポツリポツリと言う。
「それは…アゼリア様もカイザード王太子様のことが好きだって事ですよ」
私の言葉にアゼリア様は頷いた。
「ええ…ケリーの言う通り…私、カイに告白されて初めて自分の気持ちに気付いたの。私も…カイの事が好きだって…だけど…」
アゼリア様は言葉を切ってしまった。
「だけど…何ですか?」
「だ、だけど私は…もう半年も生きられない身体なのよ…。それなのに、カイの告白を受け入れる事は出来ないわ。だって私には未来が無いし…側にいてもいずれ別れが来るわ。私は…死んでいく身だけど…残されたカイはどうなるの…?だから私は告白は受け入れられないって断ったの…。貴方の事は別に好きでは無いって。私ではなく、どうか他の女性と結ばれて…幸せになって欲しいって…自分の気持ちに嘘を…」
アゼリア様の目から大粒の涙が零れ落ちた。
「ア、アゼリア様…」
アゼリア様の言葉に…その姿に私も胸に熱いものがこみ上げ、目頭が熱くなった。だけど、今私はここで泣くわけにはいかない。アゼリア様は以前私に話してくれたことがある。今こそ、その言葉を伝えなくては…!
「アゼリア様…私の話を聞いて下さい。以前アゼリア様は私に悔いを残したまま、この世を去りたくはないとお話されていましたよね?覚えていますか?」
私は泣きたい気持ちを堪えながらアゼリア様に語りかけた。
「え、ええ…言ったわ。覚えているわ…」
「カイザード王太子様は…アゼリア様の事が好きだと告白されたのですよね?そしてアゼリア様もカイザード王太子様の事を…お好きなのですよね?」
するとアゼリア様は黙ってコクリと頷く。
「アゼリア様は余命の事を…告げたのですか?」
「告げたわ…。でも、カイはそれでもいいからと言って…」
「だったら、ご自分の気持ちに嘘をつく必要は無いじゃありませんか。お2人は両思いなのです。今、ここでカイザード王太子様と別れ別れになる方が…それこそ悔いが残るのではないですか?」
けれど、アゼリア様は首を振った。
「で、出来ないわ…だ、だって仮にお付き合いする事になったとしても…私はカイを残して死んでしまうのよ?私は…カイが好きだから…悲しませたくないの…」
そこまで言ったアゼリア様は貧血が起きたのだろうか。ぐらりと身体が傾いた。
「アゼリア様っ!」
慌てて身体を支えると言った。
「大分お疲れではありませんか?少しベッドでお休みされてはいかがですか?この話の続きはまた後ほど致しましょう」
今はアゼリア様を休ませないと…。
「え、ええ…そうね。そうするわ」
アゼリア様は素直にベッドに横たわった。
「それでは夕食までお休み下さい」
「ええ、ありがとう。ケリー」
弱々しい顔で私を見て微笑むアゼリア様。その姿は…とても儚げで美しかった。
「では、失礼致しますね」
頭を下げて扉を開けた瞬間、私は驚きで声をあげそうになった。
「ケリー…今の話は一体…?」
そこには…青ざめた顔で立っているマルセル様の姿があった―。
「アゼリア様っ?!入りますねっ!」
アゼリア様の返事も待たずに扉を開けると、ベッドの上で顔を覆って肩を震わせているアゼリア様が目に飛び込んできた。
「アゼリア様っ!どうされたのですかっ?!」
私の声にアゼリア様が顔を上げた。その目は赤くなり、頬には涙が伝っている。
「泣いていたのですか?一体何故…」
アゼリア様に寄り添って手を握った。
「ケリー…」
「何故泣いていたのか…私でよければ話して頂けませんか…?」
するとアゼリア様が涙を流しながら言った。
「私…カイに告白されたの…。私の事が好きだって…側にいさせて欲しいって…」
やっぱり…カイザード王太子様はアゼリア様の事が好きだったんだ!私は嬉しくなった。
「そうなのですか?やはりカイザード王太子様はアゼリア様の事が好きだったのですね?それで会いに来られたのですね?」
「ええ…。カイはそう言っていたわ。私…カイに好きだと言って貰えて…とても嬉しかった。そういう感情を今迄男の人から向けられた事が無かったから…」
アゼリア様はポツリポツリと言う。
「それは…アゼリア様もカイザード王太子様のことが好きだって事ですよ」
私の言葉にアゼリア様は頷いた。
「ええ…ケリーの言う通り…私、カイに告白されて初めて自分の気持ちに気付いたの。私も…カイの事が好きだって…だけど…」
アゼリア様は言葉を切ってしまった。
「だけど…何ですか?」
「だ、だけど私は…もう半年も生きられない身体なのよ…。それなのに、カイの告白を受け入れる事は出来ないわ。だって私には未来が無いし…側にいてもいずれ別れが来るわ。私は…死んでいく身だけど…残されたカイはどうなるの…?だから私は告白は受け入れられないって断ったの…。貴方の事は別に好きでは無いって。私ではなく、どうか他の女性と結ばれて…幸せになって欲しいって…自分の気持ちに嘘を…」
アゼリア様の目から大粒の涙が零れ落ちた。
「ア、アゼリア様…」
アゼリア様の言葉に…その姿に私も胸に熱いものがこみ上げ、目頭が熱くなった。だけど、今私はここで泣くわけにはいかない。アゼリア様は以前私に話してくれたことがある。今こそ、その言葉を伝えなくては…!
「アゼリア様…私の話を聞いて下さい。以前アゼリア様は私に悔いを残したまま、この世を去りたくはないとお話されていましたよね?覚えていますか?」
私は泣きたい気持ちを堪えながらアゼリア様に語りかけた。
「え、ええ…言ったわ。覚えているわ…」
「カイザード王太子様は…アゼリア様の事が好きだと告白されたのですよね?そしてアゼリア様もカイザード王太子様の事を…お好きなのですよね?」
するとアゼリア様は黙ってコクリと頷く。
「アゼリア様は余命の事を…告げたのですか?」
「告げたわ…。でも、カイはそれでもいいからと言って…」
「だったら、ご自分の気持ちに嘘をつく必要は無いじゃありませんか。お2人は両思いなのです。今、ここでカイザード王太子様と別れ別れになる方が…それこそ悔いが残るのではないですか?」
けれど、アゼリア様は首を振った。
「で、出来ないわ…だ、だって仮にお付き合いする事になったとしても…私はカイを残して死んでしまうのよ?私は…カイが好きだから…悲しませたくないの…」
そこまで言ったアゼリア様は貧血が起きたのだろうか。ぐらりと身体が傾いた。
「アゼリア様っ!」
慌てて身体を支えると言った。
「大分お疲れではありませんか?少しベッドでお休みされてはいかがですか?この話の続きはまた後ほど致しましょう」
今はアゼリア様を休ませないと…。
「え、ええ…そうね。そうするわ」
アゼリア様は素直にベッドに横たわった。
「それでは夕食までお休み下さい」
「ええ、ありがとう。ケリー」
弱々しい顔で私を見て微笑むアゼリア様。その姿は…とても儚げで美しかった。
「では、失礼致しますね」
頭を下げて扉を開けた瞬間、私は驚きで声をあげそうになった。
「ケリー…今の話は一体…?」
そこには…青ざめた顔で立っているマルセル様の姿があった―。
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