51 / 73
連載
第96話 病気の告白
しおりを挟む
「あ…カ、カイザード王太子様…」
私は震えながらその名を呼んだ。何故?何故彼がここに来たのだろう?どうやって私の居場所を…?すると私の目にマルセル様の姿が映った。そうだ…カイはマルセル様の元へ行き、私を探し出した…。カイザード王太子様は青ざめた顔で私に言った。
「その呼び方…ひょっとして、もう僕の正体に…?」
「はい、存じております…」
「「…」」
マルセル様とケリーは先ほどから黙って私とカイザード王太子様の会話を聞いている。彼が王太子という高い地位にある為にマルセル様も言葉を発する事が出来ないのかもしれない。
「すまないが、僕とアゼリアの2人きりにして貰えるかな?」
カイザード王太子様はマルセル様とケリーを交互に見ると言った。
「…分りました。ケリー、行こう」
マルセル様はケリーを促し、2人は部屋を出て行った。…出て行く途中私とマルセル様の視線が交錯する。その瞳は私をとても心配しているように見えた。
パタン…
部屋の扉が閉じられ、途端にシンと静まり返る。
「…」
カイザード王太子様は無言でベッドに近づき、傍らに置いてある椅子に座ると、私をじっと見つめてくる。
「あ、あの…」
どうしよう、何と言葉を掛ければよいのだろう。あれ程カイに会ってお礼を言いたいと思っていたのに本当は王太子様だったと知って、言葉が口から出てこない。
「アゼリア…」
カイザード王太子様は悲しげな目で私を見ると言った。
「僕はマルセルから何も聞かされていないんだ。君の主治医のヨハン先生もアゼリアから直接話を聞いてもらいたいと言ってる。お願いだ、教えてくれ。倒れたって言ってたよね?それに出血が酷かったとも言っていた。一体、どういう事なんだい?もしかすると君は…何か重い病気にかかっているのかい?」
「カイザード王太子様…わ、私は…」
するとカイザード王太子様は首を振った。
「アゼリア、そんな呼び方はやめてくれないかな?君には…カイと呼んでもらいたいんだ」
「で、ですが…」
「お願いだ。どうかカイと呼んでくれないか?王太子様なんて言葉もいらない。アゼリアの前では…ただの『カイ』でいたいんだ」
必死の目で私を見つめてくる。
「え…?」
それは一体どういう意味なのだろう?でもそこまで言われてしまえば…。
「分かりました、カイ…」
「うん、アゼリア…」
するとカイは笑みを浮かべて私を見た。それは…とても優しげな瞳で、あの頃と何ら変わるものではなかった。私は一度深呼吸すると、カイを見た。
「カイ…私の病気の事を知りたいのですよね?」
「うん、そうだよ。2年前も痩せていたけど…今は顔色も何だか青ざめているように見えるし…具合が悪いのかい?今迄横になっていたんだろう?」
「すみません。まさかマルセル様が連れてきたお方がカイだとは思いもしなかったので」
頭を下げるカイは慌てたように言った。
「いいんだよ、別に僕はアゼリアがベッドにいるのをどうこう言ってるわけじゃないんだ。それと…敬語も使わないでくれないかな?フレーベル家にいた時と同じ口調で話してくれるかい?」
ここは素直に従うことにした。
「ええ…分かったわ…」
「ありがとう。それじゃ…アゼリアの今の状況を教えてくれるかい?」
「ええ。あのね…あまり驚かないで聞いて欲しいのだけれど…私は白血病に侵されているの。そして一月ほど前に余命半年をヨハン先生から宣告されているの…」
「え…っ?!」
カイの目が驚愕で見開かれた―。
私は震えながらその名を呼んだ。何故?何故彼がここに来たのだろう?どうやって私の居場所を…?すると私の目にマルセル様の姿が映った。そうだ…カイはマルセル様の元へ行き、私を探し出した…。カイザード王太子様は青ざめた顔で私に言った。
「その呼び方…ひょっとして、もう僕の正体に…?」
「はい、存じております…」
「「…」」
マルセル様とケリーは先ほどから黙って私とカイザード王太子様の会話を聞いている。彼が王太子という高い地位にある為にマルセル様も言葉を発する事が出来ないのかもしれない。
「すまないが、僕とアゼリアの2人きりにして貰えるかな?」
カイザード王太子様はマルセル様とケリーを交互に見ると言った。
「…分りました。ケリー、行こう」
マルセル様はケリーを促し、2人は部屋を出て行った。…出て行く途中私とマルセル様の視線が交錯する。その瞳は私をとても心配しているように見えた。
パタン…
部屋の扉が閉じられ、途端にシンと静まり返る。
「…」
カイザード王太子様は無言でベッドに近づき、傍らに置いてある椅子に座ると、私をじっと見つめてくる。
「あ、あの…」
どうしよう、何と言葉を掛ければよいのだろう。あれ程カイに会ってお礼を言いたいと思っていたのに本当は王太子様だったと知って、言葉が口から出てこない。
「アゼリア…」
カイザード王太子様は悲しげな目で私を見ると言った。
「僕はマルセルから何も聞かされていないんだ。君の主治医のヨハン先生もアゼリアから直接話を聞いてもらいたいと言ってる。お願いだ、教えてくれ。倒れたって言ってたよね?それに出血が酷かったとも言っていた。一体、どういう事なんだい?もしかすると君は…何か重い病気にかかっているのかい?」
「カイザード王太子様…わ、私は…」
するとカイザード王太子様は首を振った。
「アゼリア、そんな呼び方はやめてくれないかな?君には…カイと呼んでもらいたいんだ」
「で、ですが…」
「お願いだ。どうかカイと呼んでくれないか?王太子様なんて言葉もいらない。アゼリアの前では…ただの『カイ』でいたいんだ」
必死の目で私を見つめてくる。
「え…?」
それは一体どういう意味なのだろう?でもそこまで言われてしまえば…。
「分かりました、カイ…」
「うん、アゼリア…」
するとカイは笑みを浮かべて私を見た。それは…とても優しげな瞳で、あの頃と何ら変わるものではなかった。私は一度深呼吸すると、カイを見た。
「カイ…私の病気の事を知りたいのですよね?」
「うん、そうだよ。2年前も痩せていたけど…今は顔色も何だか青ざめているように見えるし…具合が悪いのかい?今迄横になっていたんだろう?」
「すみません。まさかマルセル様が連れてきたお方がカイだとは思いもしなかったので」
頭を下げるカイは慌てたように言った。
「いいんだよ、別に僕はアゼリアがベッドにいるのをどうこう言ってるわけじゃないんだ。それと…敬語も使わないでくれないかな?フレーベル家にいた時と同じ口調で話してくれるかい?」
ここは素直に従うことにした。
「ええ…分かったわ…」
「ありがとう。それじゃ…アゼリアの今の状況を教えてくれるかい?」
「ええ。あのね…あまり驚かないで聞いて欲しいのだけれど…私は白血病に侵されているの。そして一月ほど前に余命半年をヨハン先生から宣告されているの…」
「え…っ?!」
カイの目が驚愕で見開かれた―。
85
お気に入りに追加
9,037
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。