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マルセル・ハイム 21
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「ば、罰を与えたって…?ま、まさか…フレーベル家の爵位を剥奪して逮捕させた事ですかっ?!」
「ええ、そうですよ。彼等は弱い立場の人間に非人道的な仕打ちばかりしてきたのですから当然です。でも…もう知ってたんですね?」
カイ王子はニコリと笑みを浮かべて俺を見た。
「そ、それでアゼリアの事を尋ねに私の所へ…?」
緊張で喉がカラカラになっている。目の前に座るカイ王子からは言い知れぬ圧力を感じる。
「はい、フレーベル家の人々に聞いても誰一人アゼリアの行方を知らなかったからです。貴方がアゼリアと婚約破棄した事と、その後彼女は行方知れずになったと言う事を聞かされただけですから。それ以上の事は彼等は何も知らなかったのでね」
「そうですか…」
ゴクリと息を呑む。
「ですが、アゼリアの元婚約者である貴方なら彼女の行方を知っているのではないかと思いましてね」
「そ、それは…っ!」
「あ、でもその前に聞きたいことがあります。何故貴方とアゼリアは未だに結婚せず…挙げ句に婚約破棄をしてしまったのですか?差し支えなければ理由を教えて頂けませんか?」
カイ王子は一番聞かれたくない核心に触れてきた。
「結婚することが出来なかったのは…フレーベル家の人々が…アゼリアにはまだ花嫁修業が必要で結婚させる事が出来ないと言われたから…です。」
「そうですか…では貴方は知っていましたか?アゼリアがフレーベル家で虐待を受けていた事実を」
カイ王子は俺をじっと見つめながら言う。…こうして追求されていると、酷く自分が責められているような気持ちになってくる。
「いいえ…お恥ずかしながら…全く知りませんでした」
思わずうなだれてしまった。
「そうですか。貴方はアゼリアの婚約者であるにも関わらず彼女が置かれていた境遇に全く気付かなかったと言う訳ですね?」
「は、はい。…本当に返す言葉もありません…」
「…」
カイ王子は少しの沈黙の後、口を開いた。
「何故、貴方とアゼリアが婚約を破棄したのか理由を聞いてもいいですか?フレーベル家の話では貴方から婚約破棄をしたと言っていましたが?」
「それは違います。本当はアゼリアの方から私に婚約破棄をして欲しいと頼んできたのです」
「アゼリアから…?何故ですか?」
「そ、それは…私が良い婚約者では…無かったからです…」
俺の口からアゼリアの病気の事を口にするのはやめた。以前、アゼリアの許可を得ずに白血病の事を口にしてしまい、周囲から責められた苦い経験が脳裏をよぎったからだ。
「そうですか。先程から貴方と話をしていて感じたのですが…マルセル。貴方はアゼリアの行方を知っていますね?」
「!」
その言葉に思わず肩がピクリと反応する。
「僕はどうしてもアゼリアに会いたいのです。教えてもらえますね?」
この国の…まして、次期国王になる方の願いを断る事は流石に出来なかった。
「分かりました…。その代わり、アゼリアが何故そこにいるかは…尋ねないで頂けますか?出来ればアゼリア本人から話を聞いて下さい」
「ええ、分かりました。アゼリアの居場所さえ聞ければ何故そこにいるのか理由は尋ねません」
カイ王子は頷いてくれた。
「今アゼリアは町医者のヨハン・ブレイズという方の診療所に身を寄せています」
「え…?診療所に…?場所を教えて頂けますか?」
カイ王子が眉を潜めながら尋ねてきた。
「いいですよ。ただ…一度ヨハン先生の診療所に電話をかけてからでも良いですか?もし都合が良いなら私が案内します」
アゼリアは今体調が悪いはずだ。まずは彼女が面会出来る状態にあるかどうかを尋ねなくてはならない。
「ええ。ではその様にお願いします」
頷くカイ王子を見て、俺は思った。
一体カイ王子は何の為にアゼリアに会いたいのだろう…と―。
「ええ、そうですよ。彼等は弱い立場の人間に非人道的な仕打ちばかりしてきたのですから当然です。でも…もう知ってたんですね?」
カイ王子はニコリと笑みを浮かべて俺を見た。
「そ、それでアゼリアの事を尋ねに私の所へ…?」
緊張で喉がカラカラになっている。目の前に座るカイ王子からは言い知れぬ圧力を感じる。
「はい、フレーベル家の人々に聞いても誰一人アゼリアの行方を知らなかったからです。貴方がアゼリアと婚約破棄した事と、その後彼女は行方知れずになったと言う事を聞かされただけですから。それ以上の事は彼等は何も知らなかったのでね」
「そうですか…」
ゴクリと息を呑む。
「ですが、アゼリアの元婚約者である貴方なら彼女の行方を知っているのではないかと思いましてね」
「そ、それは…っ!」
「あ、でもその前に聞きたいことがあります。何故貴方とアゼリアは未だに結婚せず…挙げ句に婚約破棄をしてしまったのですか?差し支えなければ理由を教えて頂けませんか?」
カイ王子は一番聞かれたくない核心に触れてきた。
「結婚することが出来なかったのは…フレーベル家の人々が…アゼリアにはまだ花嫁修業が必要で結婚させる事が出来ないと言われたから…です。」
「そうですか…では貴方は知っていましたか?アゼリアがフレーベル家で虐待を受けていた事実を」
カイ王子は俺をじっと見つめながら言う。…こうして追求されていると、酷く自分が責められているような気持ちになってくる。
「いいえ…お恥ずかしながら…全く知りませんでした」
思わずうなだれてしまった。
「そうですか。貴方はアゼリアの婚約者であるにも関わらず彼女が置かれていた境遇に全く気付かなかったと言う訳ですね?」
「は、はい。…本当に返す言葉もありません…」
「…」
カイ王子は少しの沈黙の後、口を開いた。
「何故、貴方とアゼリアが婚約を破棄したのか理由を聞いてもいいですか?フレーベル家の話では貴方から婚約破棄をしたと言っていましたが?」
「それは違います。本当はアゼリアの方から私に婚約破棄をして欲しいと頼んできたのです」
「アゼリアから…?何故ですか?」
「そ、それは…私が良い婚約者では…無かったからです…」
俺の口からアゼリアの病気の事を口にするのはやめた。以前、アゼリアの許可を得ずに白血病の事を口にしてしまい、周囲から責められた苦い経験が脳裏をよぎったからだ。
「そうですか。先程から貴方と話をしていて感じたのですが…マルセル。貴方はアゼリアの行方を知っていますね?」
「!」
その言葉に思わず肩がピクリと反応する。
「僕はどうしてもアゼリアに会いたいのです。教えてもらえますね?」
この国の…まして、次期国王になる方の願いを断る事は流石に出来なかった。
「分かりました…。その代わり、アゼリアが何故そこにいるかは…尋ねないで頂けますか?出来ればアゼリア本人から話を聞いて下さい」
「ええ、分かりました。アゼリアの居場所さえ聞ければ何故そこにいるのか理由は尋ねません」
カイ王子は頷いてくれた。
「今アゼリアは町医者のヨハン・ブレイズという方の診療所に身を寄せています」
「え…?診療所に…?場所を教えて頂けますか?」
カイ王子が眉を潜めながら尋ねてきた。
「いいですよ。ただ…一度ヨハン先生の診療所に電話をかけてからでも良いですか?もし都合が良いなら私が案内します」
アゼリアは今体調が悪いはずだ。まずは彼女が面会出来る状態にあるかどうかを尋ねなくてはならない。
「ええ。ではその様にお願いします」
頷くカイ王子を見て、俺は思った。
一体カイ王子は何の為にアゼリアに会いたいのだろう…と―。
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