47 / 73
連載
マルセル・ハイム 19
しおりを挟む
この日は土曜日だったので、いつもよりも遅めの朝食を1人ダイニングルームで取っていた。父は出張でいなかったし、母は…。
バンッ!
突如、乱暴に扉が開かれた。そこには丸めた新聞を手に取り、肩で息をしている母の姿があった。
「おはようございます。母さん…一体どうなさったのですか?いつも冷静沈着な母さんがそんなに慌てた様子で駆け込んでくるなんて…」
食事を食べ終えたのでコーヒーに手を伸ばしながら母を見た。
「大変よっ!マルセルッ!呑気に朝食を食べている事態じゃないのよっ!これを御覧なさいっ!」
母は丸めていた新聞紙をテーブルの上に広げた。
「え…?」
俺は新聞記事を見て…目を見開いた。
「な、何だって?!い、一体これはどういう事だっ!」
そこの新聞記事には大きく、フレーベル家の事が取り上げられていたからである。俺は新聞記事の見出しを声に出して読んだ。
「『フレーベル家一族、全員逮捕。彼らは全員爵位剥奪。フレーベル家は実質的に取り潰し』…?」
「な、何故こんな事に…?」
俺は震えながら新聞記事の内容を読んだ。するとそこにはフレーベル家が犯した様々な罪が書かれていた。使用人達に行って来た体罰の数々、王族に働いた不敬罪、中でも一番大きく取り上げられていたのは娘への虐待…これらの悪行から逮捕される事となったと記されている。そして以上のことから貴族の爵位を持つにはふさわしくないと言う理由で爵位を剥奪されたと最期は締めくくられていた。
「この娘への虐待と言うのは…間違いなくアゼリアの事でしょうね…」
母が溜息をつきながら言う。
「ええ。そうですね。けれど…この『王族に対する不敬罪』と言うのは何でしょうね?フレーベル家の者は王族に対して何か無礼を働いたのでしょうか?」
「そうよね。そこが謎だわ…。あ、そう言えば先程ヨハン先生から電話があったのよ。アゼリアの体調がどうもあまり良くないみたいでウォルターの診察をお願いしたと言って来たのよ。アゼリア…大丈夫かしら…」
「何ですって?アゼリアがっ?!」
思わず大きな声を上げてしまった。
「ええ、そうよ。いつも以上に鼻から出血して、部屋で倒れていたそうなのよ…ってマルセルッ!一体何所へいくつもりなのっ?!」
上着を持って立ち上がった俺に母が声を掛けて来た。
「何所って…アゼリアの処に行くに決まってるじゃないですか!」
「落ち着きなさい、アゼリアは体調を崩して今は点滴を打って眠っているそうよ。今貴方がアゼリアの元へ行ったとして、何か出来る事でもあるの?!」
「あ…」
そうだった…俺は医学の知識なんかまるで持ち合わせていない。体調が悪いアゼリアに会いに行ったところで迷惑を掛けてしまうかもしれない。第一…俺はもう婚約者でも何でもないのだから。
力なく椅子に座り込むと母が言った。
「どうやら少しは冷静になれたようね。とりあえず…ヨハン先生がお昼休みの時に電話を掛けて、アゼリアの様子を教えてもらおうかと思っているのよ」
「ええ、そうですね…その方が良いかもしれません」
その時―
「た、大変ですっ!奥様!マルセル様っ!」
この屋敷で長年執事を務めるエドモンドが駆け込んできた。
「何事ですか?」
母の問いに、エドモンドは荒い息を整えると言った。
「はい、この国の王太子様がお見えになりました。どうしてもマルセル様とお話したい事があるそうです」
「え…?」
俺はその言葉に耳を疑った―。
バンッ!
突如、乱暴に扉が開かれた。そこには丸めた新聞を手に取り、肩で息をしている母の姿があった。
「おはようございます。母さん…一体どうなさったのですか?いつも冷静沈着な母さんがそんなに慌てた様子で駆け込んでくるなんて…」
食事を食べ終えたのでコーヒーに手を伸ばしながら母を見た。
「大変よっ!マルセルッ!呑気に朝食を食べている事態じゃないのよっ!これを御覧なさいっ!」
母は丸めていた新聞紙をテーブルの上に広げた。
「え…?」
俺は新聞記事を見て…目を見開いた。
「な、何だって?!い、一体これはどういう事だっ!」
そこの新聞記事には大きく、フレーベル家の事が取り上げられていたからである。俺は新聞記事の見出しを声に出して読んだ。
「『フレーベル家一族、全員逮捕。彼らは全員爵位剥奪。フレーベル家は実質的に取り潰し』…?」
「な、何故こんな事に…?」
俺は震えながら新聞記事の内容を読んだ。するとそこにはフレーベル家が犯した様々な罪が書かれていた。使用人達に行って来た体罰の数々、王族に働いた不敬罪、中でも一番大きく取り上げられていたのは娘への虐待…これらの悪行から逮捕される事となったと記されている。そして以上のことから貴族の爵位を持つにはふさわしくないと言う理由で爵位を剥奪されたと最期は締めくくられていた。
「この娘への虐待と言うのは…間違いなくアゼリアの事でしょうね…」
母が溜息をつきながら言う。
「ええ。そうですね。けれど…この『王族に対する不敬罪』と言うのは何でしょうね?フレーベル家の者は王族に対して何か無礼を働いたのでしょうか?」
「そうよね。そこが謎だわ…。あ、そう言えば先程ヨハン先生から電話があったのよ。アゼリアの体調がどうもあまり良くないみたいでウォルターの診察をお願いしたと言って来たのよ。アゼリア…大丈夫かしら…」
「何ですって?アゼリアがっ?!」
思わず大きな声を上げてしまった。
「ええ、そうよ。いつも以上に鼻から出血して、部屋で倒れていたそうなのよ…ってマルセルッ!一体何所へいくつもりなのっ?!」
上着を持って立ち上がった俺に母が声を掛けて来た。
「何所って…アゼリアの処に行くに決まってるじゃないですか!」
「落ち着きなさい、アゼリアは体調を崩して今は点滴を打って眠っているそうよ。今貴方がアゼリアの元へ行ったとして、何か出来る事でもあるの?!」
「あ…」
そうだった…俺は医学の知識なんかまるで持ち合わせていない。体調が悪いアゼリアに会いに行ったところで迷惑を掛けてしまうかもしれない。第一…俺はもう婚約者でも何でもないのだから。
力なく椅子に座り込むと母が言った。
「どうやら少しは冷静になれたようね。とりあえず…ヨハン先生がお昼休みの時に電話を掛けて、アゼリアの様子を教えてもらおうかと思っているのよ」
「ええ、そうですね…その方が良いかもしれません」
その時―
「た、大変ですっ!奥様!マルセル様っ!」
この屋敷で長年執事を務めるエドモンドが駆け込んできた。
「何事ですか?」
母の問いに、エドモンドは荒い息を整えると言った。
「はい、この国の王太子様がお見えになりました。どうしてもマルセル様とお話したい事があるそうです」
「え…?」
俺はその言葉に耳を疑った―。
67
お気に入りに追加
9,037
あなたにおすすめの小説
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。