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第91話 カイへの思い
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「そ、そんな…まさか…カイ…」
王太子様の写真を見つめる私の顔色は余程悪かったのだろう。
「アゼリア?どうしたんだ?」
オリバーさんが声を掛けてきた。
「アゼリア、具合でも悪いのかい?顔色が真っ青じゃないか!」
ヨハン先生に肩に手を置かれてハッとなって顔を上げると、私の事を心配そうに見つめるケリーと視線が合った。
「アゼリア様、どうされたのですか…?」
「あ…ケリー…」
オリバーさんはテーブルの上の写真をチラリと見ると尋ねてきた。
「アゼリア、この写真がどうかしたのか?この人はこの国の王太子様だぞ?」
「ひょっとすると王太子様を知ってるのかい?」
私はヨハン先生をじっと見つめた。
「あの…この写真の方が私が探している『カイ』という方によく似て…いいえ、そっくりなんです。恐らく王太子様が私が探していたカイだと思います。で、でも何故そんな方がフレーベル家で御者を…?」
私にはさっぱり分らなかった。けれどもカイが身分を隠して働いていたのは間違いないだろう。そうでなければ王太子様を鞭で打つ等非道な事が出来る筈が無い。
「え?!ま、まさか…!」
ヨハン先生が目を見開く。ケリーはじっと私の話を聞いている。
「うん?そう言えば王太子様の名前は『カイザード』って名前なんだ…。ま、まさか…!」
オリバーさんは驚愕の表情を浮かべると私に言った。
「アゼリア、今日王太子様のインタビューで話を聞いたんだが、彼はずっと外国に海外留学をしていて、ほんのつい最近になって城に戻ってきたらしいんだよ。アゼリアはいつ『カイ』という人物に会ったんだい?」
「私がカイに会ったのは4年前です。そして2年前に彼は…フレーベル家を追い出されました。私を冷遇するのを辞めるようにフレーベル家の人達に訴えて、それに激怒した義父が…カイを激しく鞭で打って、そのまま追い出してしまったそうです」
私はもうフレーベル家の父を『お父様』と呼びたくはなかったので、『義父』と呼んだ。
「そうなのか?でも…名前も似ているし、年齢も同じ22歳か…。海外留学をしていたという話もどこか引っかかるな。もしかして社会勉強の為に平民として働いていた可能性もあるしな…。そう考えるとやはりカイザード王太子様はアゼリアの探しているカイと言う人物と同一人物なのかもしれない」
オリバーさんは腕組みしながら写真をじっと見つめた。
「アゼリア…どうするんだい?君はカイを探していただろう?大切な人だって…彼の事を好きだったんだろう?」
「え?」
ヨハン先生の突然の言葉に驚いた。私がカイを好きだった?
「あ、あの…ヨハン先生。私は別にカイを好きだったとか言うわけでは…」
「え?違ったのですか?!私もそう思っていましたが」
ケリーが言った。
「いいえ、私がカイを探していたのは大切な恩人だったからです。フレーベル家で辛い目に遭っていた時に、彼は本当に親切にしてくれました。そして私のせいで酷い罰を受けて屋敷を追い出されてしまったので、どうしてもカイに謝罪して私の持っているお金を分けてあげたかったのです。でも王太子様だったなんて…それではとても会えそうにはありませんね」
カイが王太子様なら、雲の上の人で会えるはずもないだろう。それに私のせいで鞭で打たれたのだから、ひょっとすると仮に会えたとしても迷惑にしか感じないかも知れない。
思わずうつむくとオリバーさんが声を掛けてきた。
「知ってたか?この国の王族の人達は皆気さくな人達ばかりなんだぞ。平民だって謁見を望めば会ってくれるんだからアゼリアが望めばきっと王太子様は会ってくれるに違いないさ」
「けれど、果たして王太子様が私と会うことを望むでしょうか?何故王太子様が御者としてフレーベル家で働いていたかは分かりませんが、この方は私をかばった為に酷い罰を受けたのです。会いに行っても迷惑に感じるかも知れません。でも無事だということが分かったので…それだけで十分です」
「アゼリア…」
「アゼリア様…」
ヨハン先生もケリーも心配そうに私を見ている。
でもカイに会いに行って仮に迷惑そうな顔をされるくらいなら、いっそ会わない方が良いだろう。せめてお礼の手紙を送るくらいなら…王太子様の迷惑にはならないかもしれない。
それに私の余命は半年を切っている。会えば病気の事を知られてしまうかもしれない。
私は…カイには余計な心配をかけさせたくは無かった―。
王太子様の写真を見つめる私の顔色は余程悪かったのだろう。
「アゼリア?どうしたんだ?」
オリバーさんが声を掛けてきた。
「アゼリア、具合でも悪いのかい?顔色が真っ青じゃないか!」
ヨハン先生に肩に手を置かれてハッとなって顔を上げると、私の事を心配そうに見つめるケリーと視線が合った。
「アゼリア様、どうされたのですか…?」
「あ…ケリー…」
オリバーさんはテーブルの上の写真をチラリと見ると尋ねてきた。
「アゼリア、この写真がどうかしたのか?この人はこの国の王太子様だぞ?」
「ひょっとすると王太子様を知ってるのかい?」
私はヨハン先生をじっと見つめた。
「あの…この写真の方が私が探している『カイ』という方によく似て…いいえ、そっくりなんです。恐らく王太子様が私が探していたカイだと思います。で、でも何故そんな方がフレーベル家で御者を…?」
私にはさっぱり分らなかった。けれどもカイが身分を隠して働いていたのは間違いないだろう。そうでなければ王太子様を鞭で打つ等非道な事が出来る筈が無い。
「え?!ま、まさか…!」
ヨハン先生が目を見開く。ケリーはじっと私の話を聞いている。
「うん?そう言えば王太子様の名前は『カイザード』って名前なんだ…。ま、まさか…!」
オリバーさんは驚愕の表情を浮かべると私に言った。
「アゼリア、今日王太子様のインタビューで話を聞いたんだが、彼はずっと外国に海外留学をしていて、ほんのつい最近になって城に戻ってきたらしいんだよ。アゼリアはいつ『カイ』という人物に会ったんだい?」
「私がカイに会ったのは4年前です。そして2年前に彼は…フレーベル家を追い出されました。私を冷遇するのを辞めるようにフレーベル家の人達に訴えて、それに激怒した義父が…カイを激しく鞭で打って、そのまま追い出してしまったそうです」
私はもうフレーベル家の父を『お父様』と呼びたくはなかったので、『義父』と呼んだ。
「そうなのか?でも…名前も似ているし、年齢も同じ22歳か…。海外留学をしていたという話もどこか引っかかるな。もしかして社会勉強の為に平民として働いていた可能性もあるしな…。そう考えるとやはりカイザード王太子様はアゼリアの探しているカイと言う人物と同一人物なのかもしれない」
オリバーさんは腕組みしながら写真をじっと見つめた。
「アゼリア…どうするんだい?君はカイを探していただろう?大切な人だって…彼の事を好きだったんだろう?」
「え?」
ヨハン先生の突然の言葉に驚いた。私がカイを好きだった?
「あ、あの…ヨハン先生。私は別にカイを好きだったとか言うわけでは…」
「え?違ったのですか?!私もそう思っていましたが」
ケリーが言った。
「いいえ、私がカイを探していたのは大切な恩人だったからです。フレーベル家で辛い目に遭っていた時に、彼は本当に親切にしてくれました。そして私のせいで酷い罰を受けて屋敷を追い出されてしまったので、どうしてもカイに謝罪して私の持っているお金を分けてあげたかったのです。でも王太子様だったなんて…それではとても会えそうにはありませんね」
カイが王太子様なら、雲の上の人で会えるはずもないだろう。それに私のせいで鞭で打たれたのだから、ひょっとすると仮に会えたとしても迷惑にしか感じないかも知れない。
思わずうつむくとオリバーさんが声を掛けてきた。
「知ってたか?この国の王族の人達は皆気さくな人達ばかりなんだぞ。平民だって謁見を望めば会ってくれるんだからアゼリアが望めばきっと王太子様は会ってくれるに違いないさ」
「けれど、果たして王太子様が私と会うことを望むでしょうか?何故王太子様が御者としてフレーベル家で働いていたかは分かりませんが、この方は私をかばった為に酷い罰を受けたのです。会いに行っても迷惑に感じるかも知れません。でも無事だということが分かったので…それだけで十分です」
「アゼリア…」
「アゼリア様…」
ヨハン先生もケリーも心配そうに私を見ている。
でもカイに会いに行って仮に迷惑そうな顔をされるくらいなら、いっそ会わない方が良いだろう。せめてお礼の手紙を送るくらいなら…王太子様の迷惑にはならないかもしれない。
それに私の余命は半年を切っている。会えば病気の事を知られてしまうかもしれない。
私は…カイには余計な心配をかけさせたくは無かった―。
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