余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

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マルセル・ハイム 14

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「しかし…余程アゼリアは我々に気を遣っているのだろうな?マルセルとの婚約を破棄して欲しいと訴えてきたのだから」

父は腕組みをしながらため息をつく。

「ええ、自分の命が限られているからと言って…それにしても驚いたわ。マルセルからその話を聞かされたときは」

母が険しい顔で俺の顔を見る。

「貴方も驚いたでしょう?病気の事でアゼリアが婚約破棄を言い出すとは思わなかったのではなくて?」

「…」

しかし、俺は母の問いにはすぐに答えられなかった。アゼリアが俺から婚約破棄を言い出して貰いたいという理由は疑問どころか心当たりしかなかったからだ。もう、俺はこれ以上黙っている事は出来なかった。アゼリアが死ぬ前に何故俺と婚約破棄をして欲しいと願い出て来たのか本当の理由を言っておかなければ、彼女が死んだ後…多分俺は一生後悔し続けて生きていくことになるだろう。

「父さん…母さん…聞いてください。アゼリアが何故…俺と婚約破棄をしたいと申し出て来たのか‥本当の理由を…」

「何?病気の事以外、他になにかあるのか?」

父がこちらを見た。

「マルセル…ひょっとして何かやましい事でもあるかしら?」

母の俺を見る目が…すわっていた。

「じ、実は…」

俺は意を決して2人に告白した。婚約が決まってから2年間、俺が今までアゼリアにどの様な扱いをしてきたのかを―。



****

1時間後―

「ふぅ…」

父と母に散々説教をされて、ようやく俺はソファに深く座り込んでため息をついた。それにしてもあれ程に父と母が感情を露わにするとは驚きだった。母は俺とフレーベル家い対し激しい怒りをぶつけ、父は俺がもっとアゼリアを気に掛けていればこんな事にはなってはいなかったと怒鳴られたのだ。そして俺に罰が下された。

『接近禁止令』

情けない事に俺は両親から、アゼリアの許可なしには彼女に勝手に会ってはいけないし、姿を見せる事もしてはいけないと命じられてしまったのだ。
父と母曰く…

『マルセルがそばにいるとアゼリアは安心して病気の治療に専念出来ない』

と判断した為だった。さらにアゼリアが俺との婚約破棄を望んでいるなら、潔く受け入れろと2人に釘を刺されてしまった。

そして今、俺は1人リビングに残されている。先程父と母はアゼリアのいる病床へ向かった。恐らく、2人の口からアゼリアに婚約破棄を受け入れたと話をしに行くのだろう。

「アゼリア…」

俺はポツリとアゼリアの名を口にした。いつからだろう?4年前、初めてあったばかりの頃のアゼリアは物静かで知性と理性に溢れた美しい少女だった。たまに母が屋敷に連れてくると、その度に3人でテーブルを囲んで会話をしたが、アゼリアは俺と目が合うだけで、頬を染めて視線を逸らすような少女だった。
2年前に母が俺とアゼリアの婚約者にしたいと持ちかけてきた時は、断る理由は何所にも無かった。彼女となら良い家庭を築けるだろう…俺はそう思っていた―。それに自惚れでは無く、きっとアゼリアも俺の事を好いてくれているだろう。そう思っていたのだ。
それがいつの日だろうか…気付けば俺を見る彼女の目に感情が伴わなくなっている事に気付いたのは…。

「俺がもっと早くアゼリアを気に掛けていれば‥アゼリアは病気になる事も‥悪化する事も無かったのか…?」

俺は1人、深いため息をついた―。



****

 点滴のお陰ですっかり身体が楽になった私はケリーと今後の事について色々話をしていた。

「アゼリア様、体調が良くなったら何かしてみたい事はありますか?」

ケリーが言いながら皮をむいて切り分けたリンゴをフォークに差して渡してくれた。

「ありがとう。」

早速リンゴを口に入れてシャクシャクと咀嚼した。甘いリンゴの味が口の中に広がる。

「リンゴ、とても美味しいわ。ありがとう」

「いいえ、とんでもありません。それで先程の話しの続きですけど…」

ケリーが言いかけた時、扉のノックの音が聞こえた―。
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