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第1章 安西航 2
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航はコンビニへ来ていた。レジカゴに大盛りのカップ麺、袋売りのカットサラダ、そしてオリオンビールに手を伸ばし掛け・・ため息をついて安い発泡酒を冷蔵庫から取り出すとカゴに入れてレジへと持っていく。そしてアイスコーヒーを注文した。
男性店員が言った。
「657円になります。」
航はスマホ決済をすると、レジ横にあるコーヒーマシンにレジで受け取ったカップをセットしてボタンを押した。
ウィ~ン・・・
コーヒーが注がれる音がして、やがてマシンが止まったので航はカップを取り出すと出入り口へ向かい・・・。
ドンッ!!
出会い頭に店内へ入って来た女性とぶつかってしまった。
「ウワッ!!」
「キャアッ!!」
航は手に持っていたコーヒーをぶちまけてしまい・・航も女性も互いの服にコーヒーを被ってしまった。途端に航の来ていた黄色いTシャツがこげ茶色に染まる。
「あ・・・。」
ポタポタと垂れる空になってしまったカップを手に持ったまま航は呆然としていると、突然女性が謝って来た。
「ご、ごめんなさいっ!!」
見ると、その女性は白いTシャツにデニムのスカートを履いていて、コーヒーがすっかり染みて茶色くなっている。
「い、いや・・むしろ謝るのは俺の方・・・。」
航が言うと、女性は顔を上げた。
「いいえっ!実は・・私ぼんやりしていて下を向いてコンビニへ入ってしまったんです。ちゃんと前を向いていれば・・・貴方にぶつかることも・・コーヒーをこぼさせて服を汚してしまう事も無かったんですっ!本当にごめんなさいっ!」
そして再び女性は頭を下げてきた。
「い、いや・・・だけど、俺よりもむしろそっちの方が汚れているだろう?」
相手の女性はどう見ても航より年下に見えたので、ついいつもの口調で航は話してしまった。
「いいえ!だって・・・せっかく買ったコーヒーを駄目にしてしまって・・。」
その時、レジから店員がモップを持ってやって来た。
「御客様方、大丈夫ですか?」
すると女性が言った。
「あ、す・すみません!私が原因でこぼしてしまったのでお掃除しますっ!」
「「え?」」
女性店員のあまりに突拍子もない台詞に航と男性店員が同時に声を上げてしまった。
「い、いえ。お客様・・掃除はこちらで行いますので、お気になさらないでください。」
「でも・・・。」
尚も女性が言うので航は口を挟んだ。
「いいから店員の言う通りにした方がいい、ほら。困ってるじゃないか。」
航の言葉に女性は店員を見た。するとそこにはやはり航の言った通り困り顔の男性店員が立っている。
「す、すみませんでした・・。」
女性は頭を下げると、今度は航の方を見た。
「あの、少し外でお話しできますか?」
「あ?ああ・・・別に構わないけど・・・?」
そして航と女性は2人でコンビニの外へ出た。
2人でコンビニの駐輪スペースに来ると女性が言った。
「あの、クリーニング代をお支払いします。」
そして手に持っていたトートバックから財布を出そうとした。
「うわっ!ちょ、ちょっと待てって!何でそうなるんだよ?どう見てもそっちの方がコーヒーで汚れてるじゃないか?」
見ると先ほどよりコーヒーのシミが広がっている。
「ですけど・・・飲み物を駄目にしてしまって・・・。そうだ!連絡先教えてくださいっ!万一の為に・・。あ、私はこういう者です。」
女性は持っていたトートバックから1枚の名刺を取り出して航に差し出した。
「アロマ・・・セラピスト・・?岩崎・・・茜・・。」
(茜・・・少しだけ・・朱莉と名前が似てる・・。)
航はその時になって、初めて女性の顔をよく見た。
その女性は・・小柄な身体で、ふわりと肩まで届くウェーブのかかった黒髪の二重瞼の・・愛らしい顔立ちをした女性だった―。
男性店員が言った。
「657円になります。」
航はスマホ決済をすると、レジ横にあるコーヒーマシンにレジで受け取ったカップをセットしてボタンを押した。
ウィ~ン・・・
コーヒーが注がれる音がして、やがてマシンが止まったので航はカップを取り出すと出入り口へ向かい・・・。
ドンッ!!
出会い頭に店内へ入って来た女性とぶつかってしまった。
「ウワッ!!」
「キャアッ!!」
航は手に持っていたコーヒーをぶちまけてしまい・・航も女性も互いの服にコーヒーを被ってしまった。途端に航の来ていた黄色いTシャツがこげ茶色に染まる。
「あ・・・。」
ポタポタと垂れる空になってしまったカップを手に持ったまま航は呆然としていると、突然女性が謝って来た。
「ご、ごめんなさいっ!!」
見ると、その女性は白いTシャツにデニムのスカートを履いていて、コーヒーがすっかり染みて茶色くなっている。
「い、いや・・むしろ謝るのは俺の方・・・。」
航が言うと、女性は顔を上げた。
「いいえっ!実は・・私ぼんやりしていて下を向いてコンビニへ入ってしまったんです。ちゃんと前を向いていれば・・・貴方にぶつかることも・・コーヒーをこぼさせて服を汚してしまう事も無かったんですっ!本当にごめんなさいっ!」
そして再び女性は頭を下げてきた。
「い、いや・・・だけど、俺よりもむしろそっちの方が汚れているだろう?」
相手の女性はどう見ても航より年下に見えたので、ついいつもの口調で航は話してしまった。
「いいえ!だって・・・せっかく買ったコーヒーを駄目にしてしまって・・。」
その時、レジから店員がモップを持ってやって来た。
「御客様方、大丈夫ですか?」
すると女性が言った。
「あ、す・すみません!私が原因でこぼしてしまったのでお掃除しますっ!」
「「え?」」
女性店員のあまりに突拍子もない台詞に航と男性店員が同時に声を上げてしまった。
「い、いえ。お客様・・掃除はこちらで行いますので、お気になさらないでください。」
「でも・・・。」
尚も女性が言うので航は口を挟んだ。
「いいから店員の言う通りにした方がいい、ほら。困ってるじゃないか。」
航の言葉に女性は店員を見た。するとそこにはやはり航の言った通り困り顔の男性店員が立っている。
「す、すみませんでした・・。」
女性は頭を下げると、今度は航の方を見た。
「あの、少し外でお話しできますか?」
「あ?ああ・・・別に構わないけど・・・?」
そして航と女性は2人でコンビニの外へ出た。
2人でコンビニの駐輪スペースに来ると女性が言った。
「あの、クリーニング代をお支払いします。」
そして手に持っていたトートバックから財布を出そうとした。
「うわっ!ちょ、ちょっと待てって!何でそうなるんだよ?どう見てもそっちの方がコーヒーで汚れてるじゃないか?」
見ると先ほどよりコーヒーのシミが広がっている。
「ですけど・・・飲み物を駄目にしてしまって・・・。そうだ!連絡先教えてくださいっ!万一の為に・・。あ、私はこういう者です。」
女性は持っていたトートバックから1枚の名刺を取り出して航に差し出した。
「アロマ・・・セラピスト・・?岩崎・・・茜・・。」
(茜・・・少しだけ・・朱莉と名前が似てる・・。)
航はその時になって、初めて女性の顔をよく見た。
その女性は・・小柄な身体で、ふわりと肩まで届くウェーブのかかった黒髪の二重瞼の・・愛らしい顔立ちをした女性だった―。
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