18 / 27
3 ブラッドリー・モーガン 5
しおりを挟む
翌日――
何食わぬ顔で俺は登校した。教室の中を覗いてみると、案の定アドルフとエディットは既に登校していて仲良さげに話をしている。
「おはよう、2人とも」
背後から笑顔で声を掛けるとアドルフがいつも通り挨拶してきた。
「うん、おはよう。ブラッドリー」
「お、おはようございます」
エディットは視線をそらし、明らかに動揺している。その姿を見て思った。
やはり、エディットは俺からの婚約の話を聞いているのだと。あっさり拒絶されてしまったことは腹立たしかったが、それでも俺を意識してくれているのだと思うとそれだけで嬉しい気持ちになる。
例え、それがどんな感情でも。やっぱりエディットが好きだ。絶対にアドルフなんかに渡すものか。
大丈夫、アドルフは呆れるくらいお人よしだ。不本意だが、エディットを好きだと言う気持ちを打ち明け、譲ってくれと言おう。きっと奴のことだ。婚約者と言う立場から手を引こうとするに違いない。
こうなったら、もうアドルフを利用するしかなさそうだ。
そうだ。卒業記念パーティーの時がチャンスだ。その日にアドルフに俺はエディットが好きだと話すんだ。
アドルフは俺のどす黒い感情に気付くことなく、笑顔で俺と話をしている。
俺がエディットを好きだと告げれば、奴はどんな表情を浮かべるのだろう?
今からその日が楽しみでたまらない――
****
エディットに婚約の申し出を断られてから半月後――
今日はいよいよ卒業記念パーティーだった。女子生徒達よりも早く会場入りしたのは男子生徒達。
パーティ会場でアドルフに会うと、早速話を持ち掛けることにした。いきなり告白の話をするのはまずい。そこで中等部進学へ向けての話から始めた。お人よしなアドルフは俺達3人が同じクラスになれるように勉強を頑張ろうなどと言っている。
その言葉に苛立ちが募る。俺が絶望的に頭が悪いのを知っているくせに、お前はそんなことを言うのかよ?
そこでついに俺は例の話をすることにした。
「なぁ、親友のお前にだから話すんだけど……俺の話、聞いてくれるか?」
わざと深刻そうな顔で小声でアドルフに話を持ち掛けた。
「いいよ、どんな話?」
何も知らないアドルフが頷く。
「絶対誰にも言わないって約束するか?」
「分かった、誰にも言わないよ。それでどんな話?」
「うん……。俺、今日の卒業パーティーで……エディットに告白しようと思っているんだ。中等部に上がったら……彼女として付き合って貰いたいって。お前もエディットのこと好きだろう?だから先に伝えて置きたくて……」
「え……?」
俺の言葉にアドルフの顔が青ざめる。やっぱり、こいつはエディットのことが好きだったんだ。
その様子がおかしくて、笑いだしたくなるのを必死で堪えながら次の言葉を待つ。
すると……。
「僕はエディットのことは友達として好きなんだよ。だから僕に遠慮しないで告白するといいよ。応援してるから」
案の定、アドルフは笑いながら返事をした。
奴はまんまと俺の策にはまったのだ――
何食わぬ顔で俺は登校した。教室の中を覗いてみると、案の定アドルフとエディットは既に登校していて仲良さげに話をしている。
「おはよう、2人とも」
背後から笑顔で声を掛けるとアドルフがいつも通り挨拶してきた。
「うん、おはよう。ブラッドリー」
「お、おはようございます」
エディットは視線をそらし、明らかに動揺している。その姿を見て思った。
やはり、エディットは俺からの婚約の話を聞いているのだと。あっさり拒絶されてしまったことは腹立たしかったが、それでも俺を意識してくれているのだと思うとそれだけで嬉しい気持ちになる。
例え、それがどんな感情でも。やっぱりエディットが好きだ。絶対にアドルフなんかに渡すものか。
大丈夫、アドルフは呆れるくらいお人よしだ。不本意だが、エディットを好きだと言う気持ちを打ち明け、譲ってくれと言おう。きっと奴のことだ。婚約者と言う立場から手を引こうとするに違いない。
こうなったら、もうアドルフを利用するしかなさそうだ。
そうだ。卒業記念パーティーの時がチャンスだ。その日にアドルフに俺はエディットが好きだと話すんだ。
アドルフは俺のどす黒い感情に気付くことなく、笑顔で俺と話をしている。
俺がエディットを好きだと告げれば、奴はどんな表情を浮かべるのだろう?
今からその日が楽しみでたまらない――
****
エディットに婚約の申し出を断られてから半月後――
今日はいよいよ卒業記念パーティーだった。女子生徒達よりも早く会場入りしたのは男子生徒達。
パーティ会場でアドルフに会うと、早速話を持ち掛けることにした。いきなり告白の話をするのはまずい。そこで中等部進学へ向けての話から始めた。お人よしなアドルフは俺達3人が同じクラスになれるように勉強を頑張ろうなどと言っている。
その言葉に苛立ちが募る。俺が絶望的に頭が悪いのを知っているくせに、お前はそんなことを言うのかよ?
そこでついに俺は例の話をすることにした。
「なぁ、親友のお前にだから話すんだけど……俺の話、聞いてくれるか?」
わざと深刻そうな顔で小声でアドルフに話を持ち掛けた。
「いいよ、どんな話?」
何も知らないアドルフが頷く。
「絶対誰にも言わないって約束するか?」
「分かった、誰にも言わないよ。それでどんな話?」
「うん……。俺、今日の卒業パーティーで……エディットに告白しようと思っているんだ。中等部に上がったら……彼女として付き合って貰いたいって。お前もエディットのこと好きだろう?だから先に伝えて置きたくて……」
「え……?」
俺の言葉にアドルフの顔が青ざめる。やっぱり、こいつはエディットのことが好きだったんだ。
その様子がおかしくて、笑いだしたくなるのを必死で堪えながら次の言葉を待つ。
すると……。
「僕はエディットのことは友達として好きなんだよ。だから僕に遠慮しないで告白するといいよ。応援してるから」
案の定、アドルフは笑いながら返事をした。
奴はまんまと俺の策にはまったのだ――
20
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
平和的に婚約破棄したい悪役令嬢 vs 絶対に婚約破棄したくない攻略対象王子
深見アキ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・シェリルに転生した主人公は平和的に婚約破棄しようと目論むものの、何故かお相手の王子はすんなり婚約破棄してくれそうになくて……?
タイトルそのままのお話。
(4/1おまけSS追加しました)
※小説家になろうにも掲載してます。
※表紙素材お借りしてます。
【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…
【完結】攻略を諦めたら騎士様に溺愛されました。悪役でも幸せになれますか?
うり北 うりこ
恋愛
メイリーンは、大好きな乙女ゲームに転生をした。しかも、ヒロインだ。これは、推しの王子様との恋愛も夢じゃない! そう意気込んで学園に入学してみれば、王子様は悪役令嬢のローズリンゼットに夢中。しかも、悪役令嬢はおかめのお面をつけている。
これは、巷で流行りの悪役令嬢が主人公、ヒロインが悪役展開なのでは?
命一番なので、攻略を諦めたら騎士様の溺愛が待っていた。
婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?
ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
ざまぁされるのが確実なヒロインに転生したので、地味に目立たず過ごそうと思います
真理亜
恋愛
私、リリアナが転生した世界は、悪役令嬢に甘くヒロインに厳しい世界だ。その世界にヒロインとして転生したからには、全てのプラグをへし折り、地味に目立たず過ごして、ざまぁを回避する。それしかない。生き延びるために! それなのに...なぜか悪役令嬢にも攻略対象にも絡まれて...
不機嫌な悪役令嬢〜王子は最強の悪役令嬢を溺愛する?〜
晴行
恋愛
乙女ゲームの貴族令嬢リリアーナに転生したわたしは、大きな屋敷の小さな部屋の中で窓のそばに腰掛けてため息ばかり。
見目麗しく深窓の令嬢なんて噂されるほどには容姿が優れているらしいけど、わたしは知っている。
これは主人公であるアリシアの物語。
わたしはその当て馬にされるだけの、悪役令嬢リリアーナでしかない。
窓の外を眺めて、次の転生は鳥になりたいと真剣に考えているの。
「つまらないわ」
わたしはいつも不機嫌。
どんなに努力しても運命が変えられないのなら、わたしがこの世界に転生した意味がない。
あーあ、もうやめた。
なにか他のことをしよう。お料理とか、お裁縫とか、魔法がある世界だからそれを勉強してもいいわ。
このお屋敷にはなんでも揃っていますし、わたしには才能がありますもの。
仕方がないので、ゲームのストーリーが始まるまで悪役令嬢らしく不機嫌に日々を過ごしましょう。
__それもカイル王子に裏切られて婚約を破棄され、大きな屋敷も貴族の称号もすべてを失い終わりなのだけど。
頑張ったことが全部無駄になるなんて、ほんとうにつまらないわ。
の、はずだったのだけれど。
アリシアが現れても、王子は彼女に興味がない様子。
ストーリーがなかなか始まらない。
これじゃ二人の仲を引き裂く悪役令嬢になれないわ。
カイル王子、間違ってます。わたしはアリシアではないですよ。いつもツンとしている?
それは当たり前です。貴方こそなぜわたしの家にやってくるのですか?
わたしの料理が食べたい? そんなのアリシアに作らせればいいでしょう?
毎日つくれ? ふざけるな。
……カイル王子、そろそろ帰ってくれません?
緋色の魔女と帝国の皇子
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
カレスティア王国の侯爵令嬢エレナ・ディアスは、クルス王太子の婚約者候補を選ぶ夜会に参加していた。
美しく誰からも愛される双子の姉リアナといつも比べられ『じゃない方令嬢』と呼ばれて蔑まれているエレナ。ところがその晩、クルス王太子は一番にエレナにダンスを申し込んだ。夢のような心地のエレナ。
しかし、遅れて現れたリアナにクルスの心は奪われてしまう。リアナはその日のうちに婚約者に決まり、一方エレナは辺境の老男爵へ嫁ぐことを父から命じられる。
誰からも顧みられないエレナは、せめて辺境では嫌われないことだけを願って旅立った。
しかしその道中、エレナは命を狙われる。助けてくれたのは美しい黒髪の青年でーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる