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3 ブラッドリー・モーガン 1
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俺にはアドルフ・ヴァレンシュタインとエディット・ロワイエと言う幼馴染がいた。
アドルフは乱暴者の俺とは違い、なよなよしい話し方をするくせに妙に周囲の女どもからよくモテていた。しかも頭が良かった。だからいつも奴にコンプレックスを抱いていた。
そしてエディット。
輝くようなブロンドの髪に、海のような青い瞳の美少女。一目見たときからすぐに彼女が好きになってしまった。
けれどエディットが好きになった男は俺ではなく、アドルフだった。
そのくせ、肝心のアドルフは自分がエディットに好意を寄せられていることに全く気づいていない。
それがより一層……俺の嫉妬心を煽ることになった――。
あれは小学生の頃だった。
この日もいつものように三人でアドルフの屋敷で遊ぶ約束をしていた。俺はアドルフとエディットを二人きりにさせたくはなかったので、常に約束の時間よりも早い時間にアドルフの屋敷を訪ねていた。
それが、あの日に限って遅刻してしまった……。
「くそっ!約束の時間に二十分も遅れてしまった!」
三人で過ごす場所はサンルームと決まっていた。中庭から行けば時間が短縮される。少しでも長くアドルフとエディットの二人きりにさせたくはなかったからだ。
「!」
その光景を見た時、胸がズキリと傷んだ。二人はサンルームに置かれたテーブルで仲良さそうに本を読んでいた。そして時折顔を見合わせて笑い合っている。
エディットは決して俺に笑いかけたりはしない。アドルフにだけ笑顔を向ける。
「や……やめろよ……」
自分の中にどす黒い感情が宿る。
やめろ……やめてくれ、エディット。アドルフに……笑いかけるなよ!
気付けば足元に落ちていた石を拾い上げていた。エディットは再び本を読み始めたアドルフを幸せそうに見つめている。
「やめろって言ってるだろ!」
俺はエディットに向かって石を投げていた……。
「そ、そんな……」
目の前の光景が信じられなかった。
滅茶苦茶に割れたガラス破片。そしてテーブルに突っ伏しているアドルフの背中から流れ出ている真っ赤な血……。エディットはアドルフにしがみついて泣き叫んでいる。
「う、嘘だろう……?」
そこへ背後で茂みが揺れる音が聞こえた。
まずい!
急いでその場を離れると、逃げるように辻馬車に飛び乗って屋敷へと戻った――
****
母は突然帰宅してきた俺を見て驚いた。
「どうしたの?ブラッドリー。今日もアドルフの家に遊びに行ったはずなのに、何故戻ってきたの?それに……何だか顔色が悪いわよ?何があったの?」
「うるさいな!今日はアドルフの家に行ってない!ちょっと町まで行って帰ってきただけだよ!ほっといてくれよ!」
そして逃げるように自分の部屋に閉じこもった。今はそれどころじゃない。一人になりたかった。
「アドルフ……ま、まさか死んだりなんかしないよな……?」
震えながら、さっき見た光景を思い出し……身震いした。
「違う……俺は悪くない。悪いのはあの二人だ。俺を除け者にして、楽しそうに話しているからだ。だからバチがあたったんだ。そうに決まっている……」
だけど、絶対に俺が怪しまれるに決まっている。いつも遊びに行っていたのにアドルフが怪我をした日に限って来なければ窓ガラスを割った犯人だと思われるに違いない。
「くそ……!どうすればいいんだよ……!」
机に向かい、思わず頭をかかえてうつむいたその時。ふと机の上にペーパーナイフが置いてあることに気付いた。
「そうだ!あのナイフで怪我をすれば……怪我のせいでアドルフの屋敷に行けなかったと言い訳になるはずだ……!」
俺はペーパーナイフを手に取り……その鋭い刃先をゴクリと息を呑んで見つめた。
「大丈夫だ……アドルフだってあんなに大怪我したじゃないか……それ以上の怪我をすれば……きっとエディットは俺に同情してくれるはずだ……」
そして、俺は自分の腕にペーパーナイフを突き立てた――
アドルフは乱暴者の俺とは違い、なよなよしい話し方をするくせに妙に周囲の女どもからよくモテていた。しかも頭が良かった。だからいつも奴にコンプレックスを抱いていた。
そしてエディット。
輝くようなブロンドの髪に、海のような青い瞳の美少女。一目見たときからすぐに彼女が好きになってしまった。
けれどエディットが好きになった男は俺ではなく、アドルフだった。
そのくせ、肝心のアドルフは自分がエディットに好意を寄せられていることに全く気づいていない。
それがより一層……俺の嫉妬心を煽ることになった――。
あれは小学生の頃だった。
この日もいつものように三人でアドルフの屋敷で遊ぶ約束をしていた。俺はアドルフとエディットを二人きりにさせたくはなかったので、常に約束の時間よりも早い時間にアドルフの屋敷を訪ねていた。
それが、あの日に限って遅刻してしまった……。
「くそっ!約束の時間に二十分も遅れてしまった!」
三人で過ごす場所はサンルームと決まっていた。中庭から行けば時間が短縮される。少しでも長くアドルフとエディットの二人きりにさせたくはなかったからだ。
「!」
その光景を見た時、胸がズキリと傷んだ。二人はサンルームに置かれたテーブルで仲良さそうに本を読んでいた。そして時折顔を見合わせて笑い合っている。
エディットは決して俺に笑いかけたりはしない。アドルフにだけ笑顔を向ける。
「や……やめろよ……」
自分の中にどす黒い感情が宿る。
やめろ……やめてくれ、エディット。アドルフに……笑いかけるなよ!
気付けば足元に落ちていた石を拾い上げていた。エディットは再び本を読み始めたアドルフを幸せそうに見つめている。
「やめろって言ってるだろ!」
俺はエディットに向かって石を投げていた……。
「そ、そんな……」
目の前の光景が信じられなかった。
滅茶苦茶に割れたガラス破片。そしてテーブルに突っ伏しているアドルフの背中から流れ出ている真っ赤な血……。エディットはアドルフにしがみついて泣き叫んでいる。
「う、嘘だろう……?」
そこへ背後で茂みが揺れる音が聞こえた。
まずい!
急いでその場を離れると、逃げるように辻馬車に飛び乗って屋敷へと戻った――
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母は突然帰宅してきた俺を見て驚いた。
「どうしたの?ブラッドリー。今日もアドルフの家に遊びに行ったはずなのに、何故戻ってきたの?それに……何だか顔色が悪いわよ?何があったの?」
「うるさいな!今日はアドルフの家に行ってない!ちょっと町まで行って帰ってきただけだよ!ほっといてくれよ!」
そして逃げるように自分の部屋に閉じこもった。今はそれどころじゃない。一人になりたかった。
「アドルフ……ま、まさか死んだりなんかしないよな……?」
震えながら、さっき見た光景を思い出し……身震いした。
「違う……俺は悪くない。悪いのはあの二人だ。俺を除け者にして、楽しそうに話しているからだ。だからバチがあたったんだ。そうに決まっている……」
だけど、絶対に俺が怪しまれるに決まっている。いつも遊びに行っていたのにアドルフが怪我をした日に限って来なければ窓ガラスを割った犯人だと思われるに違いない。
「くそ……!どうすればいいんだよ……!」
机に向かい、思わず頭をかかえてうつむいたその時。ふと机の上にペーパーナイフが置いてあることに気付いた。
「そうだ!あのナイフで怪我をすれば……怪我のせいでアドルフの屋敷に行けなかったと言い訳になるはずだ……!」
俺はペーパーナイフを手に取り……その鋭い刃先をゴクリと息を呑んで見つめた。
「大丈夫だ……アドルフだってあんなに大怪我したじゃないか……それ以上の怪我をすれば……きっとエディットは俺に同情してくれるはずだ……」
そして、俺は自分の腕にペーパーナイフを突き立てた――
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