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『人魚姫』の王子の隣国に住む姫の場合 7
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それからというもの、毎日カインはヴァネッサに付き添って一緒に海に来るようになっていた。そしてヴァネッサはカインに見張られている手前、あまり長居は出来ないので、メルジーナに会いに来る回数も朝と昼、毎回30分だけという取り決めのもと、2人で岩場に座って会話を楽しんだ。
そして別れ際にメルジーナは必ずヴァネッサに口付けしてくるのだが、これがどうにも恥ずかしく、未だにヴァネッサは慣れなかった。
そんなヴァネッサを見てメルジーナは笑みを浮かべた。
「本当に・・・ヴァネッサは純情で・・・可愛らしいのね・・。だから私は貴女が大好きよ?」
美しいメルジーナに大好きと言われて嫌な気分がする者はいない。ヴァネッサも嬉しくて、返事を返した。
「私も・・・メルジーナが好きよ。大切なお友達だわ。」
するとメルジーナはパッと笑みを浮かべるとヴァネッサに抱き付いた。
「嬉しい・・・!ヴァネッサが私の事を好きって言ってくれて・・・!」
そして、再びメルジーナはヴァネッサに口付けして来た。その口付けは今まで以上に長く、ヴァネッサは息継ぎをする暇もない。
「ま・・待って・・メルジーナ・・・ん・・・い、息が・・・。」
するとメルジーナはようやく唇を離すと言った。
「あ・・ごめんなさい・・・ヴァネッサがあまりにも可愛くて・・・つい・・。」
「い、いいのよ・・・メルジーナ・・・。」
言いながら、ヴァネッサは浜辺にいるはずのカインを見ると、そこにはカインの姿が無い。
「え・・・?カインは・・・?」
「ええ。カインならさっき城に帰って行ったわ。」
「え?!何故?」
「カインはね、先程大きな波を被ってしまってびしょ濡れになったのよ。だから城へ着替えに行ったみたいよ。」
「そう・・・だったの・・・。」
(だから・・・カインは声を掛けにこなかったのね・・・。)
今迄のカインならヴァネッサがメルジーナにあまりにもしつこいキスをしてこようものなら止めに入って来たのに、今回に限って来なかったのは不在の為だった事が分かった。
(それにしても・・・本当にメルジーナはどういうつもりで私にキスしてくるのかしら・・・。メルジーナが私にしてくるキスは・・・まるで異性に対してしてくるキスの様に感じてしまうわ・・・。)
メルジーナはヴァネッサを黙って見つめていたが、顔を上げると言った。
「ヴァネッサ・・・。嵐が来そうだわ・・・。今日はもう帰った方がいいかもね。」
「え?!嵐っ?!」
ヴァネッサは驚いて顔を上げた。
「ええ、嵐よ。今夜あたりこの国一帯を襲ってくるかも。どうしたの?ヴァネッサ。震えているわよ?」
メルジーナはそれに答える事が出来なかった。
(嵐・・・きっと間違いない。この嵐でメルジーナは王子と出会って恋を・・!)
「メルジーナッ!」
ヴァネッサはメルジーナの肩に手を置くと言った。
「ひょっとすると・・・嵐の夜に大きな船が転覆するかも・・・もし、海に投げ出された男性がいたら・・助けてあげてっ!お願いッ!」
するとメルジーナは眉をしかめた。
「どうしたの?ヴァネッサ・・・もしかしてヴァネッサも海に棲む魔女の様に予知能力でもあるのかしら?」
メルジーナはクスクス笑いながらヴァネッサを見た。
「あ、あの・・夢をみたの・・男性が海に投げ出される夢を・・・あまりにも何度も同じ夢を見るから・・・怖くなって・・・。」
するとメルジーナはフッと笑ってヴァネッサを抱き寄せると言った。
「ええ、分かったわ。他ならぬ大切なヴァネッサの頼みだから・・・聞いてあげる。だから・・・もう一度・・・。」
言いながらメルジーナは再びヴァネッサに口付けた―。
その夜―
マレーヌ王国を大きな嵐が襲った。風は一晩中激しく吹き荒れ、雨は叩きつけるように降り続け・・・・ヴァネッサはついに王子が現れるのだと思うと、不安で一杯で殆ど眠れぬ夜を過ごし・・・そして夜が明けた—。
翌朝・・・外は素晴らしい天気に見舞われた。ただ嵐の余波の影響でいつもの海には白波が立っていた。
そんな景色を眺めながらヴァネッサは自分が過去に何度も繰り返してきた体験を思い出していた。
(そう言えば・・・私があの海に行ったのは正午少し前だった・・・。だからその時間に合わせて海へ行けば、メルジーナと王子の出会いの場面が・・・!)
ヴァネッサはこの日、午前中の時間をまんじりともせず過ごした。そして針が正午になる寸前―。
カインの目を盗んで、ヴァネッサは1人、海へ向かった。
何としても失敗してはいけない。今度こそ自分の運命を救うのだ。
浜辺に着くと今まさにメルジーナが助け出した王子を砂浜に寝かせている場面だった。
「メルジーナッ!!」
ヴァネッサが駆け寄るとメルジーナは顔を上げた。
「まあ、メルジーナッ!貴女の言った通りよ。昨晩の嵐でこの男性が海に投げ出されたの。」
ヴァネッサは見下ろすと、そこにいたのはやはり何度も何度もヴァネッサの前に現れた・・・
「ルーカス・フォン・ポートランド王子・・・。」
するとメルジーナが言った。
「あら、ヴァネッサ。貴女はこの男性を知っていたの?だったらヴァネッサ。貴女がこの方を助けた事にして頂戴。」
ヴァネッサはメルジーナの提案に驚いた。
「な、何を言ってるの?メルジーナッ!貴女がこの王子を助けたのよ?それなら貴女が助けた事にしなくては・・・。」
「いいのよ。別に・・ただ私はヴァネッサに頼まれて彼を助けただけなんだから。」
メルジーナはあくまでもひこうとしない。
「け、けど・・・。」
そこまでヴァネッサが言いかけた時・・・。
「うう・・・・。」
ルーカス王子が呻きだした。
「大変っ!目を覚ましてしまうわっ!いい?ヴァネッサ!貴女が彼を助け出した事にしてね?それじゃ後はよろしくっ!」
それだけ言い残すとメルジーナは海に潜って消えてしまった。
「あっ!待って!メルジーナッ!」
その次の瞬間・・・倒れていたルーカスが目を開けてヴァネッサを見つめた。
「あ・・・貴女は・・・?」
(大変・・・!とうとう王子が目を開けてしまった・・・!)
もうここまでくると・・・ヴァネッサは観念するしかなかった。
(そうよ・・・要は私と王子が恋仲にならなければいいのだから・・・。)
「大丈夫・・・ですか・・?」
青年は起き上がるとヴァネッサを見た。
(何て・・・美しい女性なんだろう・・・。)
「貴女が・・・私の命を救ってくれた方・・ですか・・?」
王子は熱い視線でヴァネッサを見つめてくる。
(どうしよう・・・助けたのは私では無いのに。でもメルジーナからは私が助けた事にして欲しいと頼まれているし・・。メルジーナは私の大切な親友だもの・・。)
そこで、ヴァネッサは仕方なく頷いた。
「は、はい・・・。私が・・あ、貴方をお助け致しました・・・。」
すると王子は目を輝かせると言った。
「貴女は私の命の恩人です。助けて頂き、ありがとうございますっ!」
そして青年はヴァネッサの腕を掴んで、自分の元へ引き寄せると強く自分の胸に抱き寄せた。
「貴女のお名前を・・・教えて下さい・・・。」
「ヴァネッサ・ドゥ・ウォールデンです・・・・。」
ヴァネッサは声を震わせながら答えた。
「ヴァネッサ・ドゥ・ウォールデン・・・・。」
王子は口の中でその名を小さく呟き・・息を飲む気配をヴァネッサは感じた。
「ウォールデン・・・まさか・・・貴女はこの国の・・姫だったのですね・・?!」
王子はますます嬉しそうにヴァネッサを抱きしめ・・そんな2人の様子を暗い表情のメルジーナがじっと見つめている事をヴァネッサは知る由も無かった―。
そして別れ際にメルジーナは必ずヴァネッサに口付けしてくるのだが、これがどうにも恥ずかしく、未だにヴァネッサは慣れなかった。
そんなヴァネッサを見てメルジーナは笑みを浮かべた。
「本当に・・・ヴァネッサは純情で・・・可愛らしいのね・・。だから私は貴女が大好きよ?」
美しいメルジーナに大好きと言われて嫌な気分がする者はいない。ヴァネッサも嬉しくて、返事を返した。
「私も・・・メルジーナが好きよ。大切なお友達だわ。」
するとメルジーナはパッと笑みを浮かべるとヴァネッサに抱き付いた。
「嬉しい・・・!ヴァネッサが私の事を好きって言ってくれて・・・!」
そして、再びメルジーナはヴァネッサに口付けして来た。その口付けは今まで以上に長く、ヴァネッサは息継ぎをする暇もない。
「ま・・待って・・メルジーナ・・・ん・・・い、息が・・・。」
するとメルジーナはようやく唇を離すと言った。
「あ・・ごめんなさい・・・ヴァネッサがあまりにも可愛くて・・・つい・・。」
「い、いいのよ・・・メルジーナ・・・。」
言いながら、ヴァネッサは浜辺にいるはずのカインを見ると、そこにはカインの姿が無い。
「え・・・?カインは・・・?」
「ええ。カインならさっき城に帰って行ったわ。」
「え?!何故?」
「カインはね、先程大きな波を被ってしまってびしょ濡れになったのよ。だから城へ着替えに行ったみたいよ。」
「そう・・・だったの・・・。」
(だから・・・カインは声を掛けにこなかったのね・・・。)
今迄のカインならヴァネッサがメルジーナにあまりにもしつこいキスをしてこようものなら止めに入って来たのに、今回に限って来なかったのは不在の為だった事が分かった。
(それにしても・・・本当にメルジーナはどういうつもりで私にキスしてくるのかしら・・・。メルジーナが私にしてくるキスは・・・まるで異性に対してしてくるキスの様に感じてしまうわ・・・。)
メルジーナはヴァネッサを黙って見つめていたが、顔を上げると言った。
「ヴァネッサ・・・。嵐が来そうだわ・・・。今日はもう帰った方がいいかもね。」
「え?!嵐っ?!」
ヴァネッサは驚いて顔を上げた。
「ええ、嵐よ。今夜あたりこの国一帯を襲ってくるかも。どうしたの?ヴァネッサ。震えているわよ?」
メルジーナはそれに答える事が出来なかった。
(嵐・・・きっと間違いない。この嵐でメルジーナは王子と出会って恋を・・!)
「メルジーナッ!」
ヴァネッサはメルジーナの肩に手を置くと言った。
「ひょっとすると・・・嵐の夜に大きな船が転覆するかも・・・もし、海に投げ出された男性がいたら・・助けてあげてっ!お願いッ!」
するとメルジーナは眉をしかめた。
「どうしたの?ヴァネッサ・・・もしかしてヴァネッサも海に棲む魔女の様に予知能力でもあるのかしら?」
メルジーナはクスクス笑いながらヴァネッサを見た。
「あ、あの・・夢をみたの・・男性が海に投げ出される夢を・・・あまりにも何度も同じ夢を見るから・・・怖くなって・・・。」
するとメルジーナはフッと笑ってヴァネッサを抱き寄せると言った。
「ええ、分かったわ。他ならぬ大切なヴァネッサの頼みだから・・・聞いてあげる。だから・・・もう一度・・・。」
言いながらメルジーナは再びヴァネッサに口付けた―。
その夜―
マレーヌ王国を大きな嵐が襲った。風は一晩中激しく吹き荒れ、雨は叩きつけるように降り続け・・・・ヴァネッサはついに王子が現れるのだと思うと、不安で一杯で殆ど眠れぬ夜を過ごし・・・そして夜が明けた—。
翌朝・・・外は素晴らしい天気に見舞われた。ただ嵐の余波の影響でいつもの海には白波が立っていた。
そんな景色を眺めながらヴァネッサは自分が過去に何度も繰り返してきた体験を思い出していた。
(そう言えば・・・私があの海に行ったのは正午少し前だった・・・。だからその時間に合わせて海へ行けば、メルジーナと王子の出会いの場面が・・・!)
ヴァネッサはこの日、午前中の時間をまんじりともせず過ごした。そして針が正午になる寸前―。
カインの目を盗んで、ヴァネッサは1人、海へ向かった。
何としても失敗してはいけない。今度こそ自分の運命を救うのだ。
浜辺に着くと今まさにメルジーナが助け出した王子を砂浜に寝かせている場面だった。
「メルジーナッ!!」
ヴァネッサが駆け寄るとメルジーナは顔を上げた。
「まあ、メルジーナッ!貴女の言った通りよ。昨晩の嵐でこの男性が海に投げ出されたの。」
ヴァネッサは見下ろすと、そこにいたのはやはり何度も何度もヴァネッサの前に現れた・・・
「ルーカス・フォン・ポートランド王子・・・。」
するとメルジーナが言った。
「あら、ヴァネッサ。貴女はこの男性を知っていたの?だったらヴァネッサ。貴女がこの方を助けた事にして頂戴。」
ヴァネッサはメルジーナの提案に驚いた。
「な、何を言ってるの?メルジーナッ!貴女がこの王子を助けたのよ?それなら貴女が助けた事にしなくては・・・。」
「いいのよ。別に・・ただ私はヴァネッサに頼まれて彼を助けただけなんだから。」
メルジーナはあくまでもひこうとしない。
「け、けど・・・。」
そこまでヴァネッサが言いかけた時・・・。
「うう・・・・。」
ルーカス王子が呻きだした。
「大変っ!目を覚ましてしまうわっ!いい?ヴァネッサ!貴女が彼を助け出した事にしてね?それじゃ後はよろしくっ!」
それだけ言い残すとメルジーナは海に潜って消えてしまった。
「あっ!待って!メルジーナッ!」
その次の瞬間・・・倒れていたルーカスが目を開けてヴァネッサを見つめた。
「あ・・・貴女は・・・?」
(大変・・・!とうとう王子が目を開けてしまった・・・!)
もうここまでくると・・・ヴァネッサは観念するしかなかった。
(そうよ・・・要は私と王子が恋仲にならなければいいのだから・・・。)
「大丈夫・・・ですか・・?」
青年は起き上がるとヴァネッサを見た。
(何て・・・美しい女性なんだろう・・・。)
「貴女が・・・私の命を救ってくれた方・・ですか・・?」
王子は熱い視線でヴァネッサを見つめてくる。
(どうしよう・・・助けたのは私では無いのに。でもメルジーナからは私が助けた事にして欲しいと頼まれているし・・。メルジーナは私の大切な親友だもの・・。)
そこで、ヴァネッサは仕方なく頷いた。
「は、はい・・・。私が・・あ、貴方をお助け致しました・・・。」
すると王子は目を輝かせると言った。
「貴女は私の命の恩人です。助けて頂き、ありがとうございますっ!」
そして青年はヴァネッサの腕を掴んで、自分の元へ引き寄せると強く自分の胸に抱き寄せた。
「貴女のお名前を・・・教えて下さい・・・。」
「ヴァネッサ・ドゥ・ウォールデンです・・・・。」
ヴァネッサは声を震わせながら答えた。
「ヴァネッサ・ドゥ・ウォールデン・・・・。」
王子は口の中でその名を小さく呟き・・息を飲む気配をヴァネッサは感じた。
「ウォールデン・・・まさか・・・貴女はこの国の・・姫だったのですね・・?!」
王子はますます嬉しそうにヴァネッサを抱きしめ・・そんな2人の様子を暗い表情のメルジーナがじっと見つめている事をヴァネッサは知る由も無かった―。
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