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第38話 ジルベールの末路と幸せな未来 <完>
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「な、何だよっ!夫婦の寝室に勝手に入ってくるなよっ!」
ジルベールの喚き声にセイラとフレデリックがますます殺気を帯びてくる。
「誰が夫婦ですって…?良くもリディア様に手を出そうとしわねっ?!」
そしてセイラはジルベールに足早に近づいていく。
「うわあっ!く、来るなよっ!」
その隙にフレデリックがベッドの上の私に駆け寄ってきた。
「リディア様っ!」
「フ、フレデリックッ!」
思わず手を伸ばすと、力強く抱きしめられた。その強さが嬉しかった。
「リディア様…大丈夫でしたか…?」
フレデリックは私の髪に顔を埋めながら声を震わせて尋ねてくる。
「え、ええ…大丈夫…未遂で終わったから…」
「良かった…っ!」
そう言うとフレデリックはますます強く私を抱きしめてくる。
「本当に遅くなって申し訳ございません。でも手続きは全て終了致しました。もうあの男を追い出しても何も問題はありません」
「…本当?」
するとフレデリックはようやく私を離すと言った。
「ええ、本当です」
その時―
「は、離せよっ!やめてくれっ!」
ジルベールの声に振り向くと、そこにはセイラに襟首を掴まれて持ち上げられて足をばたつかせているジルベールの姿があった。
「本当に恥知らずの男ですね…もう二度と悪さ出来ないようにちょん切ってやりましょうか?」
言いながら懐からナイフを取り出す。
「ヒイィッ!!」
涙目になるジルベール。
「どうします?リディア様」
セイラが振り向き、私に尋ねてきた。
「いいわよ、そこまでしなくても。もうその男はこの世に存在しない人間になったから。身ぐるみはいで、遠くへ捨ててくるだけで構わないわ」
私の言葉にジルベールが震えながら尋ねてきた。
「な、何だよっ!そ、その…死んだことって…」
するとフレデリックが言った。
「お前はもう戸籍上から死亡したとされて存在を抹消されたんだ。それにお前の両親も言っていた。『息子の事は煮るなり、焼くなり好きにしてくれと。クレメンス家から除籍されたのだ。そしてリディア様がこのクレメンス家の正当なる領主となったのだよ。もうお前の生存を証明するものは何も無くなったのだ。奥様と旦那様から
書類にサインも頂いている」
フレデリックがポケットから封筒を取り出しながら言った。
「そ、そんな…。リ、リディアッ!」
「…」
しかし、私はその言葉を無視してフレデリックに尋ねた。
「私の実家では何と言ってる?」
「はい、約束の婚姻期間は継続出来たのでもう何も言う必要は無いと仰っておられました。それどころか。リディア様の手腕に驚き、これからもクレメンス家の当主として頑張るようにとのことでした」
「う、嘘だ…」
がっくりと項垂れるジルベールに言った。
「さよなら。もう二度と貴方に会うことも無いでしょうね」
「ぼ、僕を…こ、殺すつもりか…?」
ガタガタ震えるジルベール。
「…貴方なんか殺す価値も無いわ。死んだほうがマシだと思える人生を歩みなさい」
そしてセイラに言った。
「この男を連れて、遠くまで捨ててくるように伝えておいて頂戴」
「はい、かしこまりました。行くわよ、罪人」
セイラは床にうずくまるジルベールの襟首を掴むとズルズル引きずって部屋を出ていく。
「や、やめろっ!助けてくれよ!リディアーッ!!」
遠のいていくジルベールの喚く声。やがて静かになるとフレデリックが言った。
「リディア様…遅くなって申し訳ございませんでした…」
フレデリックが申し訳無さげに言う。
「ええ、大丈夫よ」
すると次の瞬間―
「!」
私は再びフレデリックに抱きしめられていた。
「良かった…貴女が無事で…あの男に組み伏せられていた貴女を見た時、頭に血が上りました。セイラさんがいなければ…自分が何をするか分かりませんでした…」
「フレデリック…」
「愛しています」
「え?!」
突然の告白だった。
「リディア様…私は貴女を愛しています。その賢さも…美しさも…貴女の側で仕事をしている時は本当に幸せな時間でした…」
まるで夢を見ているようだった。本当に…本当に私の事を…?
「フレデリック…今日1日貴方がそばにいなくて…どれほど私が不安だったか分かる?」
「リディア様…」
「私…貴方がいないと駄目みたい…これからも私を支えてくれる…?」
「ええ、勿論です」
フレデリックの顔が近づいてきた。目を閉じるとそっと唇が重ねられる。少しのキスの後、フレデリックが唇を離すと言った。
「貴女を愛しています…。あの男に…どこも汚されていませんよね…?」
「…なら…確認してみる?」
するとその言葉にフレデリックは笑みを浮かべ再びキスされた。
そして…その夜、私とフレデリックは結ばれた―。
****
ジルベールを荒野へ追い払ってから7年の歳月が流れた―。
今や、クレメンス家の領地は目覚ましい発展を遂げ、全ての領民達が幸せに暮らしている。
「お母様ー早くおいでよー」
「早く早くーっ!」
今年5歳になる双子の娘と息子が湖のほとりで手を振っている。今日は家族水入らずで久々に休暇を取り、観光地として発展している領地に遊びにやってきたのだ。
「待ってー今行くから」
すると隣に立つフレデリックに手を握られた。彼の右腕には今年生まれた息子が寝息を立てて眠っている。
「行こうか。リディア。子どもたちが呼んでいるよ」
「ええ、貴方」
そして私達は手を繋いで子どもたちの元へと歩いていく。
風の噂によるとジルベールらしき人物は奴隷商人につかまり、何処か遠くの土地へ売り飛ばされたという。
でも、そんな事はもう私にとってはどうでも良い。
何故なら私には大事な使命があるのだから。
大切な子どもたちと領地を私はこの先も守続けていくという使命が…。
愛するフレデリックと共に―。
<完>
ジルベールの喚き声にセイラとフレデリックがますます殺気を帯びてくる。
「誰が夫婦ですって…?良くもリディア様に手を出そうとしわねっ?!」
そしてセイラはジルベールに足早に近づいていく。
「うわあっ!く、来るなよっ!」
その隙にフレデリックがベッドの上の私に駆け寄ってきた。
「リディア様っ!」
「フ、フレデリックッ!」
思わず手を伸ばすと、力強く抱きしめられた。その強さが嬉しかった。
「リディア様…大丈夫でしたか…?」
フレデリックは私の髪に顔を埋めながら声を震わせて尋ねてくる。
「え、ええ…大丈夫…未遂で終わったから…」
「良かった…っ!」
そう言うとフレデリックはますます強く私を抱きしめてくる。
「本当に遅くなって申し訳ございません。でも手続きは全て終了致しました。もうあの男を追い出しても何も問題はありません」
「…本当?」
するとフレデリックはようやく私を離すと言った。
「ええ、本当です」
その時―
「は、離せよっ!やめてくれっ!」
ジルベールの声に振り向くと、そこにはセイラに襟首を掴まれて持ち上げられて足をばたつかせているジルベールの姿があった。
「本当に恥知らずの男ですね…もう二度と悪さ出来ないようにちょん切ってやりましょうか?」
言いながら懐からナイフを取り出す。
「ヒイィッ!!」
涙目になるジルベール。
「どうします?リディア様」
セイラが振り向き、私に尋ねてきた。
「いいわよ、そこまでしなくても。もうその男はこの世に存在しない人間になったから。身ぐるみはいで、遠くへ捨ててくるだけで構わないわ」
私の言葉にジルベールが震えながら尋ねてきた。
「な、何だよっ!そ、その…死んだことって…」
するとフレデリックが言った。
「お前はもう戸籍上から死亡したとされて存在を抹消されたんだ。それにお前の両親も言っていた。『息子の事は煮るなり、焼くなり好きにしてくれと。クレメンス家から除籍されたのだ。そしてリディア様がこのクレメンス家の正当なる領主となったのだよ。もうお前の生存を証明するものは何も無くなったのだ。奥様と旦那様から
書類にサインも頂いている」
フレデリックがポケットから封筒を取り出しながら言った。
「そ、そんな…。リ、リディアッ!」
「…」
しかし、私はその言葉を無視してフレデリックに尋ねた。
「私の実家では何と言ってる?」
「はい、約束の婚姻期間は継続出来たのでもう何も言う必要は無いと仰っておられました。それどころか。リディア様の手腕に驚き、これからもクレメンス家の当主として頑張るようにとのことでした」
「う、嘘だ…」
がっくりと項垂れるジルベールに言った。
「さよなら。もう二度と貴方に会うことも無いでしょうね」
「ぼ、僕を…こ、殺すつもりか…?」
ガタガタ震えるジルベール。
「…貴方なんか殺す価値も無いわ。死んだほうがマシだと思える人生を歩みなさい」
そしてセイラに言った。
「この男を連れて、遠くまで捨ててくるように伝えておいて頂戴」
「はい、かしこまりました。行くわよ、罪人」
セイラは床にうずくまるジルベールの襟首を掴むとズルズル引きずって部屋を出ていく。
「や、やめろっ!助けてくれよ!リディアーッ!!」
遠のいていくジルベールの喚く声。やがて静かになるとフレデリックが言った。
「リディア様…遅くなって申し訳ございませんでした…」
フレデリックが申し訳無さげに言う。
「ええ、大丈夫よ」
すると次の瞬間―
「!」
私は再びフレデリックに抱きしめられていた。
「良かった…貴女が無事で…あの男に組み伏せられていた貴女を見た時、頭に血が上りました。セイラさんがいなければ…自分が何をするか分かりませんでした…」
「フレデリック…」
「愛しています」
「え?!」
突然の告白だった。
「リディア様…私は貴女を愛しています。その賢さも…美しさも…貴女の側で仕事をしている時は本当に幸せな時間でした…」
まるで夢を見ているようだった。本当に…本当に私の事を…?
「フレデリック…今日1日貴方がそばにいなくて…どれほど私が不安だったか分かる?」
「リディア様…」
「私…貴方がいないと駄目みたい…これからも私を支えてくれる…?」
「ええ、勿論です」
フレデリックの顔が近づいてきた。目を閉じるとそっと唇が重ねられる。少しのキスの後、フレデリックが唇を離すと言った。
「貴女を愛しています…。あの男に…どこも汚されていませんよね…?」
「…なら…確認してみる?」
するとその言葉にフレデリックは笑みを浮かべ再びキスされた。
そして…その夜、私とフレデリックは結ばれた―。
****
ジルベールを荒野へ追い払ってから7年の歳月が流れた―。
今や、クレメンス家の領地は目覚ましい発展を遂げ、全ての領民達が幸せに暮らしている。
「お母様ー早くおいでよー」
「早く早くーっ!」
今年5歳になる双子の娘と息子が湖のほとりで手を振っている。今日は家族水入らずで久々に休暇を取り、観光地として発展している領地に遊びにやってきたのだ。
「待ってー今行くから」
すると隣に立つフレデリックに手を握られた。彼の右腕には今年生まれた息子が寝息を立てて眠っている。
「行こうか。リディア。子どもたちが呼んでいるよ」
「ええ、貴方」
そして私達は手を繋いで子どもたちの元へと歩いていく。
風の噂によるとジルベールらしき人物は奴隷商人につかまり、何処か遠くの土地へ売り飛ばされたという。
でも、そんな事はもう私にとってはどうでも良い。
何故なら私には大事な使命があるのだから。
大切な子どもたちと領地を私はこの先も守続けていくという使命が…。
愛するフレデリックと共に―。
<完>
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