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第13話 予算削減
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4人のメイド達を追い払った翌日―
「えええっ?!一月をこの予算の食費に抑えるのですかっ?!」
私とフレデリックは厨房の忙しい時間帯を過ぎた10時半に料理長のニックを呼び出していた。
「ええ、そうよ。このまま今までの予算で食費にお金を回すことは出来ないのよ。これからは半分の額に押さえて頂戴」
「そんな!無理ですよっ!」
ニックは悲痛な叫びを上げる。
「いいや、やってもらう。出来ない、無理ですは受け付けないぞ?今迄食材を仕入れていた店よりも価格を安く提供してくれる店を探し出すように。野菜類は自給自足できるように畑を作ること」
フレデリックはニックに強い口調で命じる。
「そんな!我々にそんな時間があると思ってるんですかっ?!」
ニックは「出来ない」「無理です」と言うキーワードを避けて反論する。
「あ、ちょっと待って頂戴。フレデリック」
私はそこでフレデリックを止めた。
「奥様?分かってくれたんですね。我々の気持ちがっ!そう、厨房の仕事は本当に忙しくて余計な時間を割けないんですよ!」
ニックがすがりつくような目で私を見る。
「料理で作る香辛料のハーブなども自家栽培したほうがいいわね。少しでも予算を抑えられるわ」
「そんな!殺生な!」
ニックは喚くも、フレデリックはにべもなく言った。
「私と奥様の話はこれまでだ。こっちも忙しいのだ。すぐに持ち場に戻りなさい」
「ううっうう…」
ニックは半べそをかきながら自分の持ち場へと戻っていった。
「ふぅ…改革というものは難しいものね…私、これからこの屋敷を回していけるかしら…」
書類の束をトントンと束ねながら、つい弱音を吐いてしまった。
「いえいえ、見事な改革方法だと思いますよ。流石はリディア様です」
フレデリックは私が見直した予算削減についてまとめた書類をパラパラとめくりながら言う。
「でもこれだけではまだまだ足りないわ…増税すれば反発が起きるだろうし、何よりジルベールが勝手な事をした責任を領民達に取らせるわけにはいかないし…」
「なら…これからどうするのです?」
「決まっているわ。ジルベールの両親に訴えに行くのよ。ついでに資金を援助してもらうわ」
「え…ま、まさかギルバート様の所へ…行くつもりですか?」
フレデリックが眉をしかめながら言う。
「ええ、当然よ。もともとジルベールをあんな体たらくに育て上げたのはお義父様とお義母様のせいなのだから…。大体私とジルベールを結婚させた後、さっさと自分たちは別荘に隠居するなんてありえないと思わない?お義父様は47歳、お義母様に至ってはまだ44歳なのよ?私の父はまだ現役でバリバリ働いているというのに…」
なまじ、ジルベールの祖父がしっかりし過ぎていた為に…自分の息子は頼りない人間に育ってしまったのだろうか…?
「リディア様、それでいつ出発されるおつもりですか?」
義父母達が隠居し、優雅な別荘生活を送っている場所はここ『マルト』から馬車で3時間程南へ走った先にあり、美しい港町で有名な観光地でもあった。
「勿論、今から行くわ。11時には出発しないと。フレデリックは…」
「当然お供致します」
「ええ、そうね。義父母は貴方の事を信頼しているから…心強いわ」
「ありがとうございます。それにお二人にはジルベール様が愛人と現金を奪って逃げたことも報告しなければなりませんからね」
フレデリックは余程今回のことが腹に末兼ねているのか、もはやイザベラを私と同様『愛人』呼ばわりするようになっていた。
「それでは早速出かける準備をしましょう」
「はい、リディア様」
そして急遽、私とフレデリックは美しい港町『ヴヌート』に向かうことになった―。
「えええっ?!一月をこの予算の食費に抑えるのですかっ?!」
私とフレデリックは厨房の忙しい時間帯を過ぎた10時半に料理長のニックを呼び出していた。
「ええ、そうよ。このまま今までの予算で食費にお金を回すことは出来ないのよ。これからは半分の額に押さえて頂戴」
「そんな!無理ですよっ!」
ニックは悲痛な叫びを上げる。
「いいや、やってもらう。出来ない、無理ですは受け付けないぞ?今迄食材を仕入れていた店よりも価格を安く提供してくれる店を探し出すように。野菜類は自給自足できるように畑を作ること」
フレデリックはニックに強い口調で命じる。
「そんな!我々にそんな時間があると思ってるんですかっ?!」
ニックは「出来ない」「無理です」と言うキーワードを避けて反論する。
「あ、ちょっと待って頂戴。フレデリック」
私はそこでフレデリックを止めた。
「奥様?分かってくれたんですね。我々の気持ちがっ!そう、厨房の仕事は本当に忙しくて余計な時間を割けないんですよ!」
ニックがすがりつくような目で私を見る。
「料理で作る香辛料のハーブなども自家栽培したほうがいいわね。少しでも予算を抑えられるわ」
「そんな!殺生な!」
ニックは喚くも、フレデリックはにべもなく言った。
「私と奥様の話はこれまでだ。こっちも忙しいのだ。すぐに持ち場に戻りなさい」
「ううっうう…」
ニックは半べそをかきながら自分の持ち場へと戻っていった。
「ふぅ…改革というものは難しいものね…私、これからこの屋敷を回していけるかしら…」
書類の束をトントンと束ねながら、つい弱音を吐いてしまった。
「いえいえ、見事な改革方法だと思いますよ。流石はリディア様です」
フレデリックは私が見直した予算削減についてまとめた書類をパラパラとめくりながら言う。
「でもこれだけではまだまだ足りないわ…増税すれば反発が起きるだろうし、何よりジルベールが勝手な事をした責任を領民達に取らせるわけにはいかないし…」
「なら…これからどうするのです?」
「決まっているわ。ジルベールの両親に訴えに行くのよ。ついでに資金を援助してもらうわ」
「え…ま、まさかギルバート様の所へ…行くつもりですか?」
フレデリックが眉をしかめながら言う。
「ええ、当然よ。もともとジルベールをあんな体たらくに育て上げたのはお義父様とお義母様のせいなのだから…。大体私とジルベールを結婚させた後、さっさと自分たちは別荘に隠居するなんてありえないと思わない?お義父様は47歳、お義母様に至ってはまだ44歳なのよ?私の父はまだ現役でバリバリ働いているというのに…」
なまじ、ジルベールの祖父がしっかりし過ぎていた為に…自分の息子は頼りない人間に育ってしまったのだろうか…?
「リディア様、それでいつ出発されるおつもりですか?」
義父母達が隠居し、優雅な別荘生活を送っている場所はここ『マルト』から馬車で3時間程南へ走った先にあり、美しい港町で有名な観光地でもあった。
「勿論、今から行くわ。11時には出発しないと。フレデリックは…」
「当然お供致します」
「ええ、そうね。義父母は貴方の事を信頼しているから…心強いわ」
「ありがとうございます。それにお二人にはジルベール様が愛人と現金を奪って逃げたことも報告しなければなりませんからね」
フレデリックは余程今回のことが腹に末兼ねているのか、もはやイザベラを私と同様『愛人』呼ばわりするようになっていた。
「それでは早速出かける準備をしましょう」
「はい、リディア様」
そして急遽、私とフレデリックは美しい港町『ヴヌート』に向かうことになった―。
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