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アルト・クライス ②
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翌朝―
僕はいつものように窓際の席、前から3列目の席に座っていた。そしてエイミーがやってくるのを待っていた。エイミーはアカデミーに入学してから一度も僕から離れたことはない。講義は同じものを選択し、ランチは同じ席で食べる。僕がエイミーから開放されるのは放課後だけだった。
エイミーは僕と同じ馬車に乗って帰りたがったけれども、僕が断っていたからだ。放課後は忙しいから一緒に帰ることが出来ないのだと嘘をついて…。
そしてエイミーがいなくなった後に、僕はビクトリアと逢瀬を楽しんでいた―。
「エイミー…今日は遅いな…」
隣の席に座ってきたら僕は彼女に婚約破棄を告げるつもりだったのに、今日はなかなか隣の席に現れない。…ひょっとして今日も体調が悪くてアカデミーを休んだのだろうか?そして何気なく後ろを振り返り、驚いた。なんとエイミーは既に教室の一番後ろの席に座っていたからだ。それだけじゃない。
「エイミー…どうして…?」
彼女は親友のジャスティンと親しげに話をしている。しかも彼はエイミーの頭を撫でているし、彼女もまんざらでもなさげな態度を取っている。
一体どういうことなのだろう…?
そしてジャスティンはエイミーに手を振る素振りを見せた。
…まずいっ!
慌てて2人から視線をそらし、僕は何喰わぬ顔で窓の外を眺めているとジャスティンが声を掛けてきた。
「おはよう、アルト」
「うん、おはよう」
「今日もいい天気だよな~」
ジャスティンは昨日僕とエイミーの婚約式であることを知っているはずなのに、その事には一切触れずに当たり障りの無い会話ばかりしてくる。
けれども僕自身、昨日の事ではやましいことしかないので、ジャスティンが何も尋ねてこないのはむしろ好都合だった。
だから僕も彼の話に合わせながら、そっとエイミーの様子を見ると彼女は2人の女子学生に囲まれて楽しげに会話をしている姿がそこにあった―。
****
キーンコーンカーンコーン…
1時限目の講義の終了のチャイムが鳴り響き、休み時間に入った。
よし、今度はこちらからエイミーに話しかけに行こう。そして昨日の件と婚約破棄の話をエイミーに…。
そして彼女が座っていた席を振り向くと、あろう事か既にエイミーは教室を出ていった後だった。
「え…?」
どうしてさっさといなくなってしまったのだろう…?
訳が分からず首をひねっているとジャスティンが声を掛けてきた。
「どうしたんだ?アルト」
「い、いや…エイミーが…」
「エイミーがどうかしたのか?」
「な、何でも無い。…次の教室へ移動するよ」
「ふ~ん…」
ジャスティンは何か言いたげに僕を見ていたが、それには気付かない素振りで彼に声を掛けた。
「早く行こう」
「ああ、そうだな」
そして僕とジャスティンは次の教室へと向かった。
何、大丈夫だ。
この後にもエイミーと話をする機会はあるのだから。
例え次の休み時間が駄目でも昼休みは必ず僕の所へ来るはずだ。
何故ならエイミーには友人が誰もいないのだから―。
僕はいつものように窓際の席、前から3列目の席に座っていた。そしてエイミーがやってくるのを待っていた。エイミーはアカデミーに入学してから一度も僕から離れたことはない。講義は同じものを選択し、ランチは同じ席で食べる。僕がエイミーから開放されるのは放課後だけだった。
エイミーは僕と同じ馬車に乗って帰りたがったけれども、僕が断っていたからだ。放課後は忙しいから一緒に帰ることが出来ないのだと嘘をついて…。
そしてエイミーがいなくなった後に、僕はビクトリアと逢瀬を楽しんでいた―。
「エイミー…今日は遅いな…」
隣の席に座ってきたら僕は彼女に婚約破棄を告げるつもりだったのに、今日はなかなか隣の席に現れない。…ひょっとして今日も体調が悪くてアカデミーを休んだのだろうか?そして何気なく後ろを振り返り、驚いた。なんとエイミーは既に教室の一番後ろの席に座っていたからだ。それだけじゃない。
「エイミー…どうして…?」
彼女は親友のジャスティンと親しげに話をしている。しかも彼はエイミーの頭を撫でているし、彼女もまんざらでもなさげな態度を取っている。
一体どういうことなのだろう…?
そしてジャスティンはエイミーに手を振る素振りを見せた。
…まずいっ!
慌てて2人から視線をそらし、僕は何喰わぬ顔で窓の外を眺めているとジャスティンが声を掛けてきた。
「おはよう、アルト」
「うん、おはよう」
「今日もいい天気だよな~」
ジャスティンは昨日僕とエイミーの婚約式であることを知っているはずなのに、その事には一切触れずに当たり障りの無い会話ばかりしてくる。
けれども僕自身、昨日の事ではやましいことしかないので、ジャスティンが何も尋ねてこないのはむしろ好都合だった。
だから僕も彼の話に合わせながら、そっとエイミーの様子を見ると彼女は2人の女子学生に囲まれて楽しげに会話をしている姿がそこにあった―。
****
キーンコーンカーンコーン…
1時限目の講義の終了のチャイムが鳴り響き、休み時間に入った。
よし、今度はこちらからエイミーに話しかけに行こう。そして昨日の件と婚約破棄の話をエイミーに…。
そして彼女が座っていた席を振り向くと、あろう事か既にエイミーは教室を出ていった後だった。
「え…?」
どうしてさっさといなくなってしまったのだろう…?
訳が分からず首をひねっているとジャスティンが声を掛けてきた。
「どうしたんだ?アルト」
「い、いや…エイミーが…」
「エイミーがどうかしたのか?」
「な、何でも無い。…次の教室へ移動するよ」
「ふ~ん…」
ジャスティンは何か言いたげに僕を見ていたが、それには気付かない素振りで彼に声を掛けた。
「早く行こう」
「ああ、そうだな」
そして僕とジャスティンは次の教室へと向かった。
何、大丈夫だ。
この後にもエイミーと話をする機会はあるのだから。
例え次の休み時間が駄目でも昼休みは必ず僕の所へ来るはずだ。
何故ならエイミーには友人が誰もいないのだから―。
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