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第12話 夢見の悪い朝
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「おいっ!お前…よくも婚約者破棄を受け入れてくれたなっ?!そのせいでビクトリアに振られてしまっただろうっ?!お前のせいだっ!どうやって責任取ってくれるんだよっ!!」
トビーが眉間に青筋を立てて激しく激怒している。
「ご、ごめんなさいっ!アルト様に迫られて、どうしても拒むことが出来なかったんです!どうかお許し下さいっ!」
必死で彼に土下座する私。
「うるさいっ!俺は何が何でも婚約破棄を阻止しろと言っただろう?それなのにお前は、あっさり婚約破棄を受け入れやがって…っ!」
ますます怒りをぶちまけるトビー。
「お、お願いですっ!どうかお許し下さいっ!この通りですっ!」
「黙れっ!こうなったらお前を一生俺の奴隷として死ぬまでこき使ってやるっ!覚悟しておけっ!!」
「ええ~そ、そんなぁ…っ!!」
ジリリリリリ…ッ!
そこで、大きな目覚まし時計の音が鳴り響き…私は目を覚ました。気付くと目の前にはいつもと同じ、見慣れた白い天井が見えている。
「ゆ、夢…。よ、良かった…」
ムクリとベッドから起き上がり…先程の夢を思い出して身震いした―。
****
朝日が差し込む明るいダイニングルームで私と父、母の3人で大きな円卓テーブルで3人向き合って朝食を食べていた。
「はぁ~…」
フォークとナイフでベーコンを切り分けながら、つい溜息が出てしまう。
「どうしたの?エイミー。今朝はもう4回も溜息をついているわよ?」
「いいや、5回目の溜息だ。何か悩みがあるなら私達に話してごらん?」
父が私をじっと見つめた。
「い、いえ…。今日はアカデミーに行きたくない…と思いまして…」
行けば嫌でもアルトとは顔を合わせる事になるだろう。何しろ今日1日、全てアルトと同じ講義を選択しているからだ。せめて違う講義を選択していれば顔を合わせる事も無かったかもしれないのに…。
そしてもう一度溜息を吐く。
「ひょっとしてまだ具合が悪いのか?ならアカデミーを休んでもいいのだぞ?」
父の過保護っぷりが現れる。
「そうね。お休みした方がいいわね。私達の大切なエイミーに何かあったら大変だもの」
母もまた父に負けず劣らず過保護である。
「いいえ、大丈夫です。ただ、ちょっと口にしてみただけですから」
慌てて2人に言う。
「本当に大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫ですから」
尚も心配そうに尋ねて来る母に私は頷いた。
そう、今日ここでアカデミーに行かなければアルトは確実我が家にやって来るだろう。そして婚約破棄を告げて来るかも知れない。もしそうなった場合、私には拒む術が何もない。何しろ私の方が彼よりも爵位が下なのだから。それに私はアルトの事が好きだし、常に彼の幸せを一番に考えて来た。だから彼が望むなら婚約破棄を黙って受け入れてあげたいと思っているのだが…。
『こうなったらお前を一生俺の奴隷として死ぬまでこき使ってやるっ!覚悟しておけっ!!」
先程夢で見た光景が脳裏に浮かぶ。
「いいえ!駄目よっ!やっぱりそんな真似出来ないわっ!」
首をブンブン左右に振る。
「ど、どうしたのだっ?!さては体調が悪いのだな?!やはりアカデミーは休んだ方がいいっ!すぐに主治医を呼ぼうっ!」
「ええ、そうね。そうした方がいいわ!誰か!早く主治医を呼んで頂戴っ!」
母が近くに待機していたメイドに命じる。
「はい!承知致しました!」
ダイニングルームを出ようとするメイドを必死に止める私。
「あっ!違うのよっ!どこも具合は悪くないのよっ!お願いだから主治医を呼ぶのはやめて頂戴っ!」
…こうしてしばらくの間、ダイニングルームは喧騒に包まれるのだった―。
トビーが眉間に青筋を立てて激しく激怒している。
「ご、ごめんなさいっ!アルト様に迫られて、どうしても拒むことが出来なかったんです!どうかお許し下さいっ!」
必死で彼に土下座する私。
「うるさいっ!俺は何が何でも婚約破棄を阻止しろと言っただろう?それなのにお前は、あっさり婚約破棄を受け入れやがって…っ!」
ますます怒りをぶちまけるトビー。
「お、お願いですっ!どうかお許し下さいっ!この通りですっ!」
「黙れっ!こうなったらお前を一生俺の奴隷として死ぬまでこき使ってやるっ!覚悟しておけっ!!」
「ええ~そ、そんなぁ…っ!!」
ジリリリリリ…ッ!
そこで、大きな目覚まし時計の音が鳴り響き…私は目を覚ました。気付くと目の前にはいつもと同じ、見慣れた白い天井が見えている。
「ゆ、夢…。よ、良かった…」
ムクリとベッドから起き上がり…先程の夢を思い出して身震いした―。
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朝日が差し込む明るいダイニングルームで私と父、母の3人で大きな円卓テーブルで3人向き合って朝食を食べていた。
「はぁ~…」
フォークとナイフでベーコンを切り分けながら、つい溜息が出てしまう。
「どうしたの?エイミー。今朝はもう4回も溜息をついているわよ?」
「いいや、5回目の溜息だ。何か悩みがあるなら私達に話してごらん?」
父が私をじっと見つめた。
「い、いえ…。今日はアカデミーに行きたくない…と思いまして…」
行けば嫌でもアルトとは顔を合わせる事になるだろう。何しろ今日1日、全てアルトと同じ講義を選択しているからだ。せめて違う講義を選択していれば顔を合わせる事も無かったかもしれないのに…。
そしてもう一度溜息を吐く。
「ひょっとしてまだ具合が悪いのか?ならアカデミーを休んでもいいのだぞ?」
父の過保護っぷりが現れる。
「そうね。お休みした方がいいわね。私達の大切なエイミーに何かあったら大変だもの」
母もまた父に負けず劣らず過保護である。
「いいえ、大丈夫です。ただ、ちょっと口にしてみただけですから」
慌てて2人に言う。
「本当に大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫ですから」
尚も心配そうに尋ねて来る母に私は頷いた。
そう、今日ここでアカデミーに行かなければアルトは確実我が家にやって来るだろう。そして婚約破棄を告げて来るかも知れない。もしそうなった場合、私には拒む術が何もない。何しろ私の方が彼よりも爵位が下なのだから。それに私はアルトの事が好きだし、常に彼の幸せを一番に考えて来た。だから彼が望むなら婚約破棄を黙って受け入れてあげたいと思っているのだが…。
『こうなったらお前を一生俺の奴隷として死ぬまでこき使ってやるっ!覚悟しておけっ!!」
先程夢で見た光景が脳裏に浮かぶ。
「いいえ!駄目よっ!やっぱりそんな真似出来ないわっ!」
首をブンブン左右に振る。
「ど、どうしたのだっ?!さては体調が悪いのだな?!やはりアカデミーは休んだ方がいいっ!すぐに主治医を呼ぼうっ!」
「ええ、そうね。そうした方がいいわ!誰か!早く主治医を呼んで頂戴っ!」
母が近くに待機していたメイドに命じる。
「はい!承知致しました!」
ダイニングルームを出ようとするメイドを必死に止める私。
「あっ!違うのよっ!どこも具合は悪くないのよっ!お願いだから主治医を呼ぶのはやめて頂戴っ!」
…こうしてしばらくの間、ダイニングルームは喧騒に包まれるのだった―。
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