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第10話 小さい私
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「エイミーお腹の痛みは治まったのかしら?」
部屋に入って来るなり、母が心配そうに声を掛けて来た。
「はい、大分楽になりましたが…あの、婚約式はどうなりましたか…?」
きっと、大勢のお客様を前に帰ってしまったのでさぞかし怒っていらっしゃるに違いないだろう。
「ええ、すぐにクライス伯爵夫妻に伝えたわ。エイミーは婚約式を前に緊張し過ぎてお腹が痛くなり、帰りましたとね」
「すると伯爵夫妻が『婚約式で緊張して腹痛を起こすとは、本当にエイミーは繊細なのだな。お大事にするように伝えてくれ』と話されていた」
私はその言葉に耳を疑った。
「えっ?!ちょ、ちょっと待って下さいっ!お2人とも怒っていらっしゃらなかったのですか?」
「ええ」
「全く怒っていなかったな」
「そ、そうなんですか…?」
あまりにもあっけない反応に驚いていると、父と母が2人でにこやかに会話をし始めた。
「本当にクライス伯爵は昔からエイミーを我が子の様に可愛がって下さっているからな」
「あら、あなた。我が子の様にでは無く、いっそ養女にしたいくらいだと話されていたわ」
「ああ、そうだった。それで我々がそれは困ると断ったのだったな」
「ええ。それなら義理の娘にしてしまえば良いだろうと言う事で御子息のアルト様の婚約者に選ばれたのよね」
「…え?」
私はその言葉に目を丸くした。
「ちょ、ちょっと待って下さい…今の話、本当ですか?」
「ええ、そうよ」
「何だ?エイミーはその話を知らなかったのか?」
「知るも何も…私とアルト様が婚約する事になった経緯を誰も教えてくれなかったではないですか。だからてっきり政略結婚的な何かがあるのだろうと思っていたのに…」
「政略結婚?そんなものは無いぞ?」
「ええ、ただクライス伯爵夫妻が小さいエイミーが可愛くて、自分達の娘にしたいと願っていたからなのよ?」
「ええっ?!そ、そんな…っ!」
絶対私とアルトの婚約には政治的戦略が意味合いを兼ねていると思っていたのに、単に伯爵夫妻のお気に入りだったと言うだけで、私と言う人間をアルト様は婚約者にしなければならなかったなんて…。
「こ、これでは…ますますアルト様は私と言う婚約者を持つ意味が無いと言う事じゃないの…」
思わず口からポロリと出てしまった。
「え?今何か言ったか?」
父が首を傾げる。
「い、いえ。私ってそんなに小さいかなと思いまして」
「ええ、小さいわね。子供みたいだわ。そこが可愛らしいのだけどね」
「うう…た、確かにそれはあるかもしれませんが…」
何しろ私は母よりも背が低いのだ。2人で並んで立っても私は母の頭半位身長が足りない。まして、アルトと並べば私は彼の肩にも背が届かないのだから。
きっと、アルトはまるで子供みたいな私が嫌になってビクトリアさんのように綺麗な女性を好きになってしまったに違いない。そう思とますます惨めな気持ちになってきた。
「ど、どうしたのだ?エイミー。何だか目が赤いようだが?」
父が心配そうに尋ねて来た。
「い、いえ。ちょっとまだお腹が少し痛いだけです」
「え?まぁ…それは大変だわ。早く横になった方がいいわ。アルト様がお見舞いに来て下さるかもしれないから」
「え?!アルト様がっ?!」
「ああ、当然いらっしゃるだろうな。何しろ婚約者が腹痛で婚約式を欠席されたのだから」
「そ、そんな…会いたいけど会いたくないですっ!」
私は思わず本音を口走ってしまった―。
部屋に入って来るなり、母が心配そうに声を掛けて来た。
「はい、大分楽になりましたが…あの、婚約式はどうなりましたか…?」
きっと、大勢のお客様を前に帰ってしまったのでさぞかし怒っていらっしゃるに違いないだろう。
「ええ、すぐにクライス伯爵夫妻に伝えたわ。エイミーは婚約式を前に緊張し過ぎてお腹が痛くなり、帰りましたとね」
「すると伯爵夫妻が『婚約式で緊張して腹痛を起こすとは、本当にエイミーは繊細なのだな。お大事にするように伝えてくれ』と話されていた」
私はその言葉に耳を疑った。
「えっ?!ちょ、ちょっと待って下さいっ!お2人とも怒っていらっしゃらなかったのですか?」
「ええ」
「全く怒っていなかったな」
「そ、そうなんですか…?」
あまりにもあっけない反応に驚いていると、父と母が2人でにこやかに会話をし始めた。
「本当にクライス伯爵は昔からエイミーを我が子の様に可愛がって下さっているからな」
「あら、あなた。我が子の様にでは無く、いっそ養女にしたいくらいだと話されていたわ」
「ああ、そうだった。それで我々がそれは困ると断ったのだったな」
「ええ。それなら義理の娘にしてしまえば良いだろうと言う事で御子息のアルト様の婚約者に選ばれたのよね」
「…え?」
私はその言葉に目を丸くした。
「ちょ、ちょっと待って下さい…今の話、本当ですか?」
「ええ、そうよ」
「何だ?エイミーはその話を知らなかったのか?」
「知るも何も…私とアルト様が婚約する事になった経緯を誰も教えてくれなかったではないですか。だからてっきり政略結婚的な何かがあるのだろうと思っていたのに…」
「政略結婚?そんなものは無いぞ?」
「ええ、ただクライス伯爵夫妻が小さいエイミーが可愛くて、自分達の娘にしたいと願っていたからなのよ?」
「ええっ?!そ、そんな…っ!」
絶対私とアルトの婚約には政治的戦略が意味合いを兼ねていると思っていたのに、単に伯爵夫妻のお気に入りだったと言うだけで、私と言う人間をアルト様は婚約者にしなければならなかったなんて…。
「こ、これでは…ますますアルト様は私と言う婚約者を持つ意味が無いと言う事じゃないの…」
思わず口からポロリと出てしまった。
「え?今何か言ったか?」
父が首を傾げる。
「い、いえ。私ってそんなに小さいかなと思いまして」
「ええ、小さいわね。子供みたいだわ。そこが可愛らしいのだけどね」
「うう…た、確かにそれはあるかもしれませんが…」
何しろ私は母よりも背が低いのだ。2人で並んで立っても私は母の頭半位身長が足りない。まして、アルトと並べば私は彼の肩にも背が届かないのだから。
きっと、アルトはまるで子供みたいな私が嫌になってビクトリアさんのように綺麗な女性を好きになってしまったに違いない。そう思とますます惨めな気持ちになってきた。
「ど、どうしたのだ?エイミー。何だか目が赤いようだが?」
父が心配そうに尋ねて来た。
「い、いえ。ちょっとまだお腹が少し痛いだけです」
「え?まぁ…それは大変だわ。早く横になった方がいいわ。アルト様がお見舞いに来て下さるかもしれないから」
「え?!アルト様がっ?!」
「ああ、当然いらっしゃるだろうな。何しろ婚約者が腹痛で婚約式を欠席されたのだから」
「そ、そんな…会いたいけど会いたくないですっ!」
私は思わず本音を口走ってしまった―。
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