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第19話 信じられない事実

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「そうか、市長さんの息子さんだったのか? アンナが色々世話になったようだな。ありがとうよ」

「いいえ。僕は大したことはしておりませんから。」

どこまでも上から目線な父。確かに彼は父に比べると子供のようなものだが、仮にも市長の息子であり、私の恩人なのだ。もう少し丁寧な態度をとってもらいたい。

「それで、今日はどれくらい売り上げてきたんだ?」

父は満面の笑みを浮かべながら尋ねてくる。

「そうね。これくらいだわ」

私はテーブルの上に売上金の半分15万エンをテーブルに置いた。マッチを仕入れたのは、この父親かも知れない。けれど体を張って売ったのはこの私なのだから、売上の半分は貰う権利がある。
何しろ売れなければただのゴミなのだから。

「おおっ!! す、すごい!! こんなに売れたのか!!」

父は目の色を変えて、お金を手に取る。そこへハンスがこっそり耳打ちしてきた。

「ねぇ……アンナ。もっとたくさんお金貰ってるよね?」

「ええ、そうです。だけど売ったのは私です。当然分前は半分ですよ。そうは思いませんか?」

「うん、僕もそう思うよ。アンナの言ってることは間違いじゃない」

「ありがとうございます」

そんな会話をコソコソしていると、父が私達を見る。

「何だ? どうかしたのか?」

「何でも無いわ」

「はい、何でもありせん」

私とハンスは頷く。

「いや~それにしても知らなかった。まさかアンナに商才があったとは……驚いた」

「ええ、まぁね」

「それじゃ、これからもバンバンマッチを売ってもらおうかな? よろしくな」

笑顔の父。

「え? マッチってここにあるだけじゃないの? まだあったの?」

もう在庫は無くなったと思ったのに。

「あるに決まっているじゃないか。何と言ったって、我がカメリア家の全財産をはたいて買い上げたんだからな!」

すると何故か驚くハンス。

「何ですって!? カメリア家ですって!?」

「え? どうしたの? ハンス」

するとハンスが私を見た。

「アンナ。何故黙っていたんだい? 君は貴族令嬢だったんじゃないか」

「は? 私が……と言うか、ええっ!? この品位の欠片もない父親が貴族だってこと!?」

私は父を指さしながら叫んだ。

「こら! 誰が品位の無い父親だ! そうだ。我がカメリア家はこの町では数少ない男爵家だ」

怒りながらも偉そうな態度を取る父親。

「そうなんだよ、アンナ。カメリア家と言えば、有名な名家だったのに……ここ数年で屋敷は手放され、行方不明になったと言われていたんだけど……何故、こんな暮らしをしているのですか?」

ハンスが父に尋ねる。

「そんなことは簡単だ。財産を増やす為に、高額なマッチを買い集めたからだ。なのに少しもマッチは売れずに……落ちるところまで落ちたというわけさ」

父は肩をすくめて、キザにフッと笑う。

「な、何ですって……」

私が軽く殺意を覚えたのは……言うまでも無い――
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