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第4話 まずは身なりから
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「ところで、まだお互い自己紹介していなかったね? 僕はハンス・イーデン。君は?」
「私はアンナです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
これから先があるかも分からないのに、つい営業の挨拶をしてしまう。それにしても、こんなに身なりの良い少年が私のように小汚い? 娘と歩いても良いのだろうか?
「え? う、うん。そうだね、これからもよろしく。ところで……」
少年は足を止めると、私を上から下まで眺める。
「なんですか?」
やっぱり彼も私のことを小汚いと思っているのだろう。何しろバリキャリだった私はたとえ、安物でも常にスーツを身につけて身綺麗にしていたのだから。
「う~ん。その格好だと、お店に入れてもらえないかもしれないなぁ……」
首をひねる少年。
「ええ!? 駄目なのですか!?」
その辺の酒場? ならどんな格好でも良いと思っていたのに……まさか、彼は高級な店に連れて行こうと考えているのだろうか?
「うん。その姿じゃ、やっぱりマズイかも。だから今から洋品店に行こう。服を変えたほうがいいよ」
「そんな! 無理ですよ! 洋服なんか買えませんてば!」
首をブンブン振って断る。何しろ私の全財産は3300エンしかないのだから。……今のところは。
「もしかしてお金の心配をしているの? それなら大丈夫。僕が買ってあげるよ。何しろ格安でマッチを売ってくれるんだからね。それじゃ、早速行こう。ついておいでよ」
少年が前に立って、手招きする。ここはありがたく好意に預かろう。
「はい、ではよろしくお願いします」
こうして私は美少年ハンスと一緒に洋品店へ向かった。
****
「ここだよ、洋品店は」
連れてきてくれた店は2階建ての中々立派な建物だった。大きな窓からは大勢の女性客がいる様子が見える。
「大勢お客様がいますね」
「うん。ここは人気の店だからね。それじゃ入ろうか」
ハンスは扉を開けると、手招きした。
「いらっしゃいませ……あ! イーデン様ではありませんか!」
店内に入ると、女性店員らしき人物が駆け寄ってきた。
「今日は服をお買い上げにいらして下さったのですか?」
ニコニコと笑みを浮かべる女性店員。
「うん、そうだよ。ただし、僕のではなく……彼女のね」
ハンスが私を紹介する。途端に女性店員の顔から笑顔が消えた。
あ~……これはちょっと、あまりにも露骨だなぁ。
「あの、失礼ですが……こちらの女性は?」
「うん、僕の連れだよ。彼女に似合う服と靴、それにコートを見てあげてほしいんだ」
「ええ! 靴にコートもですか!?」
嬉しさのあまり、顔がニヤけてしまう。何しろ私が今履いている靴は硬い木製の靴。実は先程から足が痛くてたまらなかったのだ。
「……この方にですか……?」
嫌そうな目で私を見る女性店員。これはあまりに失礼だ。営業の基本がなっていない。
「そうだよ、勿論断らないよね?」
ハンスは笑顔だが、有無を言わさない雰囲気を出している。
「え、ええ。勿論ですとも! それではお嬢様、こちらの試着室へどうぞ」
女性店員が奥へ案内しようとする。
「あの、ハンスさん……」
「大丈夫、僕はここで待っているから行っておいでよ」
「はい。では行ってきますね」
こうして私は女性店員に連れられて試着室へ向かった。
そうだ、どうせなら飲み屋に行くのだから……。
私の頭には既にコーディネイトが決定していた――
「私はアンナです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
これから先があるかも分からないのに、つい営業の挨拶をしてしまう。それにしても、こんなに身なりの良い少年が私のように小汚い? 娘と歩いても良いのだろうか?
「え? う、うん。そうだね、これからもよろしく。ところで……」
少年は足を止めると、私を上から下まで眺める。
「なんですか?」
やっぱり彼も私のことを小汚いと思っているのだろう。何しろバリキャリだった私はたとえ、安物でも常にスーツを身につけて身綺麗にしていたのだから。
「う~ん。その格好だと、お店に入れてもらえないかもしれないなぁ……」
首をひねる少年。
「ええ!? 駄目なのですか!?」
その辺の酒場? ならどんな格好でも良いと思っていたのに……まさか、彼は高級な店に連れて行こうと考えているのだろうか?
「うん。その姿じゃ、やっぱりマズイかも。だから今から洋品店に行こう。服を変えたほうがいいよ」
「そんな! 無理ですよ! 洋服なんか買えませんてば!」
首をブンブン振って断る。何しろ私の全財産は3300エンしかないのだから。……今のところは。
「もしかしてお金の心配をしているの? それなら大丈夫。僕が買ってあげるよ。何しろ格安でマッチを売ってくれるんだからね。それじゃ、早速行こう。ついておいでよ」
少年が前に立って、手招きする。ここはありがたく好意に預かろう。
「はい、ではよろしくお願いします」
こうして私は美少年ハンスと一緒に洋品店へ向かった。
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「ここだよ、洋品店は」
連れてきてくれた店は2階建ての中々立派な建物だった。大きな窓からは大勢の女性客がいる様子が見える。
「大勢お客様がいますね」
「うん。ここは人気の店だからね。それじゃ入ろうか」
ハンスは扉を開けると、手招きした。
「いらっしゃいませ……あ! イーデン様ではありませんか!」
店内に入ると、女性店員らしき人物が駆け寄ってきた。
「今日は服をお買い上げにいらして下さったのですか?」
ニコニコと笑みを浮かべる女性店員。
「うん、そうだよ。ただし、僕のではなく……彼女のね」
ハンスが私を紹介する。途端に女性店員の顔から笑顔が消えた。
あ~……これはちょっと、あまりにも露骨だなぁ。
「あの、失礼ですが……こちらの女性は?」
「うん、僕の連れだよ。彼女に似合う服と靴、それにコートを見てあげてほしいんだ」
「ええ! 靴にコートもですか!?」
嬉しさのあまり、顔がニヤけてしまう。何しろ私が今履いている靴は硬い木製の靴。実は先程から足が痛くてたまらなかったのだ。
「……この方にですか……?」
嫌そうな目で私を見る女性店員。これはあまりに失礼だ。営業の基本がなっていない。
「そうだよ、勿論断らないよね?」
ハンスは笑顔だが、有無を言わさない雰囲気を出している。
「え、ええ。勿論ですとも! それではお嬢様、こちらの試着室へどうぞ」
女性店員が奥へ案内しようとする。
「あの、ハンスさん……」
「大丈夫、僕はここで待っているから行っておいでよ」
「はい。では行ってきますね」
こうして私は女性店員に連れられて試着室へ向かった。
そうだ、どうせなら飲み屋に行くのだから……。
私の頭には既にコーディネイトが決定していた――
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