98 / 100
第98話 私の最終目標は
しおりを挟む
「ジャンーッ!ジェフーッ!お茶でも飲まなーい?!」
リビングの窓から顔をのぞかせ、庭で家具の修繕をしていた2人に声を掛けた。
「はい、行きます!」
「丁度喉が乾いていたんですよ!」
ジャンとジェフが交互に返事をし、作業の手を止めて屋敷の中へと入ってきた。
「はい。いつもご苦労さま、二人は偉いわね。いつも文句一つ言わずに黙々と働いてくれるから助かるわ」
2人の前に紅茶を置きながら言う。
「え?ゲルダ様?」
「一体突然どうしたんですか?」
ジャンとジェフが首を傾げて私を見た。
「ううん、本当にそう思っただけよ」
ニコニコしながら言うと、ジェフが警戒心を露わにして私に尋ねてきた。
「ゲルダ様…もしや何か考えていますね?」
「え?そうなんですかっ?!」
ジェフがギョッとした顔で私を見る。
「ええ、実はね…2人にお願いがあってね」
「い、一体何をさせようとしているんです?」
ジャンが紅茶を飲みなが尋ねる。
「ええ、実はね…」
私の話に2人の顔にうんざりした表情が浮かんだのは言うまでも無かった―。
****
午後2時を過ぎた頃にハンス、ケン、クリフの3人が荷馬車に荷物を積んで戻って来た。
「お帰りなさい、3人共」
ドアを開けて迎えに行くと、荷馬車には数個のトランクケースしか入っていなかった。
「あら、荷物ってこれだけなの?」
あまりにも荷物の量が少ないのでハンスに尋ねた。
「ええ、お恥ずかしいですが…家具も全てついている部屋だったので、衣類しか持っていなかったんです」
顔を赤らめて返事をするハンス。
「なーんだ、そんな事気にすること無いじゃない。ここは家具付きの部屋があるから安心して暮らせるわよ」
「本当ですかっ?!」
「ええ、それじゃ…」
するとそこへ畑仕事が終わったブランカは部屋に現れた。
「あ、ちょうど良かったわ、ブランカ。ハンスを部屋に案内してくれる?」
「はい、分かりました。こちらへどうぞ」
ブランカがハンスに声を掛けた。
「有難うございます!」
荷物を持ったハンスが礼を述べる。
「俺たちも荷運び手伝うよ」
「そうだな」
ケンとクリフも荷物を持つと、先頭を歩くブランカの後をついて行った。
彼らの後ろ姿を見届けると、私はうでまくりすると言った。
「さて、パン作りの練習でも始めようかしら」
私の最終目的は自分の店…パン屋をオープンさせる事だ。ゆくゆくはこの屋敷を一部改装してパン屋を始めたい…これが私の夢である。
「まずはこの世界の材料でも日本で作っていたあの味が再現できるかを試してみないとね…」
そして私は厨房へと向かった―。
****
午後5時―
モンド伯爵邸にパンの焼ける良い香りが漂っている。
「どれどれ…ちゃんと焼けてるかしら…?」
かまどの中を覗いてみると、綺麗に並べたクロワッサンが美味しそうに焼けている。
「うん、うん、良い感じじゃないの?」
早速かまどの中から天板を取り出し、大理石のテーブルに置いた。
「おおっ!綺麗に焼けているわっ!」
すると匂いを嗅ぎつけてか、アネットが厨房に現れた。
「あ!ゲルダさんっ!それはなんですかっ?!」
アネットが並べられたクロワッサンを見て駆け寄ってきた。
「これはね、クロワッサンていうパンよ」
「え…クロワッサン?」
アネットは首を傾げる。そう、実はこの世界には『クロワッサン』というパンは存在していなかったのだ。
「フフフ…食べてみて?」
「はい、いただきます」
アネットはクロワッサンを手に取ると、早速口に入れた。
「…」
「どう?美味しい?」
「何ですか?これ…滅茶苦茶美味しいですっ!」
アネットが感動の声を上げる。
「本当?どう?これ売れるかしら?」
「勿論!大ヒット間違いなしですよっ!」
「そうなのね?それじゃ明日も色々試作品を作って見るわ」
私は思った。
この調子なら、もしかすると以外に早くパン屋をオープンさせられるのではないだろうか?
私の胸は期待で膨らんでいた。
しかし、この時の私は全く予想もしていなかった。
この生活がいずれ、以外な形で終わることを―。
リビングの窓から顔をのぞかせ、庭で家具の修繕をしていた2人に声を掛けた。
「はい、行きます!」
「丁度喉が乾いていたんですよ!」
ジャンとジェフが交互に返事をし、作業の手を止めて屋敷の中へと入ってきた。
「はい。いつもご苦労さま、二人は偉いわね。いつも文句一つ言わずに黙々と働いてくれるから助かるわ」
2人の前に紅茶を置きながら言う。
「え?ゲルダ様?」
「一体突然どうしたんですか?」
ジャンとジェフが首を傾げて私を見た。
「ううん、本当にそう思っただけよ」
ニコニコしながら言うと、ジェフが警戒心を露わにして私に尋ねてきた。
「ゲルダ様…もしや何か考えていますね?」
「え?そうなんですかっ?!」
ジェフがギョッとした顔で私を見る。
「ええ、実はね…2人にお願いがあってね」
「い、一体何をさせようとしているんです?」
ジャンが紅茶を飲みなが尋ねる。
「ええ、実はね…」
私の話に2人の顔にうんざりした表情が浮かんだのは言うまでも無かった―。
****
午後2時を過ぎた頃にハンス、ケン、クリフの3人が荷馬車に荷物を積んで戻って来た。
「お帰りなさい、3人共」
ドアを開けて迎えに行くと、荷馬車には数個のトランクケースしか入っていなかった。
「あら、荷物ってこれだけなの?」
あまりにも荷物の量が少ないのでハンスに尋ねた。
「ええ、お恥ずかしいですが…家具も全てついている部屋だったので、衣類しか持っていなかったんです」
顔を赤らめて返事をするハンス。
「なーんだ、そんな事気にすること無いじゃない。ここは家具付きの部屋があるから安心して暮らせるわよ」
「本当ですかっ?!」
「ええ、それじゃ…」
するとそこへ畑仕事が終わったブランカは部屋に現れた。
「あ、ちょうど良かったわ、ブランカ。ハンスを部屋に案内してくれる?」
「はい、分かりました。こちらへどうぞ」
ブランカがハンスに声を掛けた。
「有難うございます!」
荷物を持ったハンスが礼を述べる。
「俺たちも荷運び手伝うよ」
「そうだな」
ケンとクリフも荷物を持つと、先頭を歩くブランカの後をついて行った。
彼らの後ろ姿を見届けると、私はうでまくりすると言った。
「さて、パン作りの練習でも始めようかしら」
私の最終目的は自分の店…パン屋をオープンさせる事だ。ゆくゆくはこの屋敷を一部改装してパン屋を始めたい…これが私の夢である。
「まずはこの世界の材料でも日本で作っていたあの味が再現できるかを試してみないとね…」
そして私は厨房へと向かった―。
****
午後5時―
モンド伯爵邸にパンの焼ける良い香りが漂っている。
「どれどれ…ちゃんと焼けてるかしら…?」
かまどの中を覗いてみると、綺麗に並べたクロワッサンが美味しそうに焼けている。
「うん、うん、良い感じじゃないの?」
早速かまどの中から天板を取り出し、大理石のテーブルに置いた。
「おおっ!綺麗に焼けているわっ!」
すると匂いを嗅ぎつけてか、アネットが厨房に現れた。
「あ!ゲルダさんっ!それはなんですかっ?!」
アネットが並べられたクロワッサンを見て駆け寄ってきた。
「これはね、クロワッサンていうパンよ」
「え…クロワッサン?」
アネットは首を傾げる。そう、実はこの世界には『クロワッサン』というパンは存在していなかったのだ。
「フフフ…食べてみて?」
「はい、いただきます」
アネットはクロワッサンを手に取ると、早速口に入れた。
「…」
「どう?美味しい?」
「何ですか?これ…滅茶苦茶美味しいですっ!」
アネットが感動の声を上げる。
「本当?どう?これ売れるかしら?」
「勿論!大ヒット間違いなしですよっ!」
「そうなのね?それじゃ明日も色々試作品を作って見るわ」
私は思った。
この調子なら、もしかすると以外に早くパン屋をオープンさせられるのではないだろうか?
私の胸は期待で膨らんでいた。
しかし、この時の私は全く予想もしていなかった。
この生活がいずれ、以外な形で終わることを―。
85
お気に入りに追加
3,658
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

愛せないですか。それなら別れましょう
黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」
婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。
バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。
そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。
王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。
「愛せないですか。それなら別れましょう」
この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる