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第98話 私の最終目標は
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「ジャンーッ!ジェフーッ!お茶でも飲まなーい?!」
リビングの窓から顔をのぞかせ、庭で家具の修繕をしていた2人に声を掛けた。
「はい、行きます!」
「丁度喉が乾いていたんですよ!」
ジャンとジェフが交互に返事をし、作業の手を止めて屋敷の中へと入ってきた。
「はい。いつもご苦労さま、二人は偉いわね。いつも文句一つ言わずに黙々と働いてくれるから助かるわ」
2人の前に紅茶を置きながら言う。
「え?ゲルダ様?」
「一体突然どうしたんですか?」
ジャンとジェフが首を傾げて私を見た。
「ううん、本当にそう思っただけよ」
ニコニコしながら言うと、ジェフが警戒心を露わにして私に尋ねてきた。
「ゲルダ様…もしや何か考えていますね?」
「え?そうなんですかっ?!」
ジェフがギョッとした顔で私を見る。
「ええ、実はね…2人にお願いがあってね」
「い、一体何をさせようとしているんです?」
ジャンが紅茶を飲みなが尋ねる。
「ええ、実はね…」
私の話に2人の顔にうんざりした表情が浮かんだのは言うまでも無かった―。
****
午後2時を過ぎた頃にハンス、ケン、クリフの3人が荷馬車に荷物を積んで戻って来た。
「お帰りなさい、3人共」
ドアを開けて迎えに行くと、荷馬車には数個のトランクケースしか入っていなかった。
「あら、荷物ってこれだけなの?」
あまりにも荷物の量が少ないのでハンスに尋ねた。
「ええ、お恥ずかしいですが…家具も全てついている部屋だったので、衣類しか持っていなかったんです」
顔を赤らめて返事をするハンス。
「なーんだ、そんな事気にすること無いじゃない。ここは家具付きの部屋があるから安心して暮らせるわよ」
「本当ですかっ?!」
「ええ、それじゃ…」
するとそこへ畑仕事が終わったブランカは部屋に現れた。
「あ、ちょうど良かったわ、ブランカ。ハンスを部屋に案内してくれる?」
「はい、分かりました。こちらへどうぞ」
ブランカがハンスに声を掛けた。
「有難うございます!」
荷物を持ったハンスが礼を述べる。
「俺たちも荷運び手伝うよ」
「そうだな」
ケンとクリフも荷物を持つと、先頭を歩くブランカの後をついて行った。
彼らの後ろ姿を見届けると、私はうでまくりすると言った。
「さて、パン作りの練習でも始めようかしら」
私の最終目的は自分の店…パン屋をオープンさせる事だ。ゆくゆくはこの屋敷を一部改装してパン屋を始めたい…これが私の夢である。
「まずはこの世界の材料でも日本で作っていたあの味が再現できるかを試してみないとね…」
そして私は厨房へと向かった―。
****
午後5時―
モンド伯爵邸にパンの焼ける良い香りが漂っている。
「どれどれ…ちゃんと焼けてるかしら…?」
かまどの中を覗いてみると、綺麗に並べたクロワッサンが美味しそうに焼けている。
「うん、うん、良い感じじゃないの?」
早速かまどの中から天板を取り出し、大理石のテーブルに置いた。
「おおっ!綺麗に焼けているわっ!」
すると匂いを嗅ぎつけてか、アネットが厨房に現れた。
「あ!ゲルダさんっ!それはなんですかっ?!」
アネットが並べられたクロワッサンを見て駆け寄ってきた。
「これはね、クロワッサンていうパンよ」
「え…クロワッサン?」
アネットは首を傾げる。そう、実はこの世界には『クロワッサン』というパンは存在していなかったのだ。
「フフフ…食べてみて?」
「はい、いただきます」
アネットはクロワッサンを手に取ると、早速口に入れた。
「…」
「どう?美味しい?」
「何ですか?これ…滅茶苦茶美味しいですっ!」
アネットが感動の声を上げる。
「本当?どう?これ売れるかしら?」
「勿論!大ヒット間違いなしですよっ!」
「そうなのね?それじゃ明日も色々試作品を作って見るわ」
私は思った。
この調子なら、もしかすると以外に早くパン屋をオープンさせられるのではないだろうか?
私の胸は期待で膨らんでいた。
しかし、この時の私は全く予想もしていなかった。
この生活がいずれ、以外な形で終わることを―。
リビングの窓から顔をのぞかせ、庭で家具の修繕をしていた2人に声を掛けた。
「はい、行きます!」
「丁度喉が乾いていたんですよ!」
ジャンとジェフが交互に返事をし、作業の手を止めて屋敷の中へと入ってきた。
「はい。いつもご苦労さま、二人は偉いわね。いつも文句一つ言わずに黙々と働いてくれるから助かるわ」
2人の前に紅茶を置きながら言う。
「え?ゲルダ様?」
「一体突然どうしたんですか?」
ジャンとジェフが首を傾げて私を見た。
「ううん、本当にそう思っただけよ」
ニコニコしながら言うと、ジェフが警戒心を露わにして私に尋ねてきた。
「ゲルダ様…もしや何か考えていますね?」
「え?そうなんですかっ?!」
ジェフがギョッとした顔で私を見る。
「ええ、実はね…2人にお願いがあってね」
「い、一体何をさせようとしているんです?」
ジャンが紅茶を飲みなが尋ねる。
「ええ、実はね…」
私の話に2人の顔にうんざりした表情が浮かんだのは言うまでも無かった―。
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午後2時を過ぎた頃にハンス、ケン、クリフの3人が荷馬車に荷物を積んで戻って来た。
「お帰りなさい、3人共」
ドアを開けて迎えに行くと、荷馬車には数個のトランクケースしか入っていなかった。
「あら、荷物ってこれだけなの?」
あまりにも荷物の量が少ないのでハンスに尋ねた。
「ええ、お恥ずかしいですが…家具も全てついている部屋だったので、衣類しか持っていなかったんです」
顔を赤らめて返事をするハンス。
「なーんだ、そんな事気にすること無いじゃない。ここは家具付きの部屋があるから安心して暮らせるわよ」
「本当ですかっ?!」
「ええ、それじゃ…」
するとそこへ畑仕事が終わったブランカは部屋に現れた。
「あ、ちょうど良かったわ、ブランカ。ハンスを部屋に案内してくれる?」
「はい、分かりました。こちらへどうぞ」
ブランカがハンスに声を掛けた。
「有難うございます!」
荷物を持ったハンスが礼を述べる。
「俺たちも荷運び手伝うよ」
「そうだな」
ケンとクリフも荷物を持つと、先頭を歩くブランカの後をついて行った。
彼らの後ろ姿を見届けると、私はうでまくりすると言った。
「さて、パン作りの練習でも始めようかしら」
私の最終目的は自分の店…パン屋をオープンさせる事だ。ゆくゆくはこの屋敷を一部改装してパン屋を始めたい…これが私の夢である。
「まずはこの世界の材料でも日本で作っていたあの味が再現できるかを試してみないとね…」
そして私は厨房へと向かった―。
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午後5時―
モンド伯爵邸にパンの焼ける良い香りが漂っている。
「どれどれ…ちゃんと焼けてるかしら…?」
かまどの中を覗いてみると、綺麗に並べたクロワッサンが美味しそうに焼けている。
「うん、うん、良い感じじゃないの?」
早速かまどの中から天板を取り出し、大理石のテーブルに置いた。
「おおっ!綺麗に焼けているわっ!」
すると匂いを嗅ぎつけてか、アネットが厨房に現れた。
「あ!ゲルダさんっ!それはなんですかっ?!」
アネットが並べられたクロワッサンを見て駆け寄ってきた。
「これはね、クロワッサンていうパンよ」
「え…クロワッサン?」
アネットは首を傾げる。そう、実はこの世界には『クロワッサン』というパンは存在していなかったのだ。
「フフフ…食べてみて?」
「はい、いただきます」
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「…」
「どう?美味しい?」
「何ですか?これ…滅茶苦茶美味しいですっ!」
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「本当?どう?これ売れるかしら?」
「勿論!大ヒット間違いなしですよっ!」
「そうなのね?それじゃ明日も色々試作品を作って見るわ」
私は思った。
この調子なら、もしかすると以外に早くパン屋をオープンさせられるのではないだろうか?
私の胸は期待で膨らんでいた。
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