89 / 100
第89話 いきなりの告白
しおりを挟む
その夜の事―
「皆!今夜は大いに楽しんで頂戴!」
私は全員に大きな声で呼びかけた。
『はいっ!』
返事をする私の頼もしい仲間たちとシェアハウスの住人である俊也とジョシュアさん。今夜はノイマン家の朗報を知る事が出来たので、外でバーベキューパーティーを開催したのである。いわゆるお祝いパーティーである。
庭の外で薪を組んで、その上に大きな金網を載せて野菜を焼いているのはジョン。そして大きな鉄のプレートで肉やウィンナーを焼くのは勿論ウィンターである。
ウィンターは、何故俺がこんな役目をしなくてはならないのだとブツブツ文句を言いながら焼いていたが、以外に楽しそうに見える。
「はぁ~…それにしても今夜は良い星空ね~」
果実酒を飲みながら、ほろ酔い気分で皆から少し離れた場所で1人庭に設置されたベンチに座り、お皿に載せた焼肉料理をつまんでいると背後から声を掛けられた。
「ゲルダさん」
「え?」
振り向くとそこに立っていたのはジョシュアさんだった。彼は笑みを浮かべながら片手にアルコール、片手に料理の乗ったプレートを載せている。
「あ、ジョシュアさん。どうしたんですか?」
「いえ、僕もこちらでご一緒させて頂こうかと思いまして」
「ええ。どうぞ、お座り下さい」
私は真ん中の席からずれるとジョシュアさんが座ってきた。
「失礼します」
そして私に言った。
「もう、お互い飲み始めていますが…乾杯しませんか?」
「ええ、そうですね」
そして私達は互いにジョッキを持って乾杯した。
「それにしてもゲルダさんは凄い女性ですね~」
ジョシュアさんがお酒を飲みながら声を掛けてきた。
「え?私がですか?」
「ええ、そうですよ。シェアハウスと言い…この『バーベキューパーティー』と言い…どれも僕に取って初めての体験ですよ。本当にまだこんなにお若くて美しい女性なのに素晴らしいアイディアをお持ちなのですね?」
そしてじっと見つめてくる。
「そ、そんな…褒め過ぎです」
若くて美しい女性などと言われて、不覚にも胸がときめき、顔が熱くなってしまう。それを誤魔化すために私は言った。
「そ、そういえば本日はノイマン家の屋敷が売りに出されたのですよね?売り主は誰だったのですか?」
「ええ、それが驚きなのですよ。てっきりノイマン伯爵家で売りに出したと思っていたのですが…売り主はウェルナー侯爵家だったのですから。おまけに屋敷と一緒に爵位の売買までされたのですからね。ラファエル様に会った時はそんな話は一切されなかったのに…」
ジョシュアさんは不思議そうに首を傾げる。けれどその話は驚きだ。
「まさか…爵位まで売りに出されるなんて…」
思わずポツリと呟くと、ジョシュアさんが首を捻っった。
「え?ゲルダさんはノイマン家をご存知なのですか?」
そうだった。ジョシュアさんは私がもとノイマン家の人間であることを知らないのだ。どうしよう…もう離婚は成立しているし、モンド伯爵邸で私の事情を知らないのはジョシュアさんだけ…。うん、この際だから事情を明かしてもいいかもしれない。
「あの、ジョシュアさん、実は…」
****
「ま、まさか…貴女がラファエルさんと結婚していたなんて…」
ジョシュアさんが驚いた顔で私を見る。
「あ、でももう離婚は成立しているし、それにもともと私とラファエルは書類上だけの結婚だったんですよ?第一ラファエルには愛人がいたわけですし…」
「ああ、なるほど。その愛人だった方がベロニカさんだったわけですね。噂によると離婚したらしいですね」
「ああ…やっぱり…」
私は頷く。これで皆収まる所に収まったというわけだ。
「それで?ゲルダさんは、もうあのシェアハウスの男性陣の誰かと恋仲だったりするのですか?例えば…ウィンターさんとか」
「はっ?!何故、彼の名が出てくるのですかっ?!」
あまりの言葉に驚く。
「いえ…なんだか2人の雰囲気が良かったので…」
「まさか~ありえませんよ。ウィンターなんて」
あの男が恋人になる…?少し想像してみたけど…うん、やっぱり無い無い。ありえない。
「そうですか…。なら…ルイスさんとか?」
「いいえ、それもありえませんってば!」
俊也が恋人?前世で親子関係の私達が?それこそ絶対にありえないから!
「アハハハ…ジョシュアさん、酔ってます?なんだか急に恋バナになっていませんか?」
「恋バナ…?恋バナとは何ですか?」
「恋バナって言うのはですね…つまり恋の話です」
私が説明すると少しの間、ジョシュアさんは考え込む仕草をした。そして不意に顔を寄せてくると耳元で囁くように言った。
「実は…本当はゲルダさんを口説きに来たんです。僕みたいな年上の男は駄目でしょうか…?」
「え…?」
私は驚いてジョシュアさんを見た―。
「皆!今夜は大いに楽しんで頂戴!」
私は全員に大きな声で呼びかけた。
『はいっ!』
返事をする私の頼もしい仲間たちとシェアハウスの住人である俊也とジョシュアさん。今夜はノイマン家の朗報を知る事が出来たので、外でバーベキューパーティーを開催したのである。いわゆるお祝いパーティーである。
庭の外で薪を組んで、その上に大きな金網を載せて野菜を焼いているのはジョン。そして大きな鉄のプレートで肉やウィンナーを焼くのは勿論ウィンターである。
ウィンターは、何故俺がこんな役目をしなくてはならないのだとブツブツ文句を言いながら焼いていたが、以外に楽しそうに見える。
「はぁ~…それにしても今夜は良い星空ね~」
果実酒を飲みながら、ほろ酔い気分で皆から少し離れた場所で1人庭に設置されたベンチに座り、お皿に載せた焼肉料理をつまんでいると背後から声を掛けられた。
「ゲルダさん」
「え?」
振り向くとそこに立っていたのはジョシュアさんだった。彼は笑みを浮かべながら片手にアルコール、片手に料理の乗ったプレートを載せている。
「あ、ジョシュアさん。どうしたんですか?」
「いえ、僕もこちらでご一緒させて頂こうかと思いまして」
「ええ。どうぞ、お座り下さい」
私は真ん中の席からずれるとジョシュアさんが座ってきた。
「失礼します」
そして私に言った。
「もう、お互い飲み始めていますが…乾杯しませんか?」
「ええ、そうですね」
そして私達は互いにジョッキを持って乾杯した。
「それにしてもゲルダさんは凄い女性ですね~」
ジョシュアさんがお酒を飲みながら声を掛けてきた。
「え?私がですか?」
「ええ、そうですよ。シェアハウスと言い…この『バーベキューパーティー』と言い…どれも僕に取って初めての体験ですよ。本当にまだこんなにお若くて美しい女性なのに素晴らしいアイディアをお持ちなのですね?」
そしてじっと見つめてくる。
「そ、そんな…褒め過ぎです」
若くて美しい女性などと言われて、不覚にも胸がときめき、顔が熱くなってしまう。それを誤魔化すために私は言った。
「そ、そういえば本日はノイマン家の屋敷が売りに出されたのですよね?売り主は誰だったのですか?」
「ええ、それが驚きなのですよ。てっきりノイマン伯爵家で売りに出したと思っていたのですが…売り主はウェルナー侯爵家だったのですから。おまけに屋敷と一緒に爵位の売買までされたのですからね。ラファエル様に会った時はそんな話は一切されなかったのに…」
ジョシュアさんは不思議そうに首を傾げる。けれどその話は驚きだ。
「まさか…爵位まで売りに出されるなんて…」
思わずポツリと呟くと、ジョシュアさんが首を捻っった。
「え?ゲルダさんはノイマン家をご存知なのですか?」
そうだった。ジョシュアさんは私がもとノイマン家の人間であることを知らないのだ。どうしよう…もう離婚は成立しているし、モンド伯爵邸で私の事情を知らないのはジョシュアさんだけ…。うん、この際だから事情を明かしてもいいかもしれない。
「あの、ジョシュアさん、実は…」
****
「ま、まさか…貴女がラファエルさんと結婚していたなんて…」
ジョシュアさんが驚いた顔で私を見る。
「あ、でももう離婚は成立しているし、それにもともと私とラファエルは書類上だけの結婚だったんですよ?第一ラファエルには愛人がいたわけですし…」
「ああ、なるほど。その愛人だった方がベロニカさんだったわけですね。噂によると離婚したらしいですね」
「ああ…やっぱり…」
私は頷く。これで皆収まる所に収まったというわけだ。
「それで?ゲルダさんは、もうあのシェアハウスの男性陣の誰かと恋仲だったりするのですか?例えば…ウィンターさんとか」
「はっ?!何故、彼の名が出てくるのですかっ?!」
あまりの言葉に驚く。
「いえ…なんだか2人の雰囲気が良かったので…」
「まさか~ありえませんよ。ウィンターなんて」
あの男が恋人になる…?少し想像してみたけど…うん、やっぱり無い無い。ありえない。
「そうですか…。なら…ルイスさんとか?」
「いいえ、それもありえませんってば!」
俊也が恋人?前世で親子関係の私達が?それこそ絶対にありえないから!
「アハハハ…ジョシュアさん、酔ってます?なんだか急に恋バナになっていませんか?」
「恋バナ…?恋バナとは何ですか?」
「恋バナって言うのはですね…つまり恋の話です」
私が説明すると少しの間、ジョシュアさんは考え込む仕草をした。そして不意に顔を寄せてくると耳元で囁くように言った。
「実は…本当はゲルダさんを口説きに来たんです。僕みたいな年上の男は駄目でしょうか…?」
「え…?」
私は驚いてジョシュアさんを見た―。
110
お気に入りに追加
3,658
あなたにおすすめの小説
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
婚約破棄を望むなら〜私の愛した人はあなたじゃありません〜
みおな
恋愛
王家主催のパーティーにて、私の婚約者がやらかした。
「お前との婚約を破棄する!!」
私はこの馬鹿何言っているんだと思いながらも、婚約破棄を受け入れてやった。
だって、私は何ひとつ困らない。
困るのは目の前でふんぞり返っている元婚約者なのだから。

愛せないですか。それなら別れましょう
黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」
婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。
バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。
そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。
王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。
「愛せないですか。それなら別れましょう」
この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

【完結】婚約破棄され毒杯処分された悪役令嬢は影から王子の愛と後悔を見届ける
堀 和三盆
恋愛
「クアリフィカ・アートルム公爵令嬢! 貴様との婚約は破棄する」
王太子との結婚を半年後に控え、卒業パーティーで婚約を破棄されてしまったクアリフィカ。目の前でクアリフィカの婚約者に寄り添い、歪んだ嗤いを浮かべているのは異母妹のルシクラージュだ。
クアリフィカは既に王妃教育を終えているため、このタイミングでの婚約破棄は未来を奪われるも同然。こうなるとクアリフィカにとれる選択肢は多くない。
せめてこれまで努力してきた王妃教育の成果を見てもらいたくて。
キレイな姿を婚約者の記憶にとどめてほしくて。
クアリフィカは荒れ狂う感情をしっかりと覆い隠し、この場で最後の公務に臨む。
卒業パーティー会場に響き渡る悲鳴。
目にした惨状にバタバタと倒れるパーティー参加者達。
淑女の鑑とまで言われたクアリフィカの最期の姿は、良くも悪くも多くの者の記憶に刻まれることになる。
そうして――王太子とルシクラージュの、後悔と懺悔の日々が始まった。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

奪われる人生とはお別れします ~婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました~
水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。
それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。
しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。
王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。
でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。
※他サイト様でも連載中です。
◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。
◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。
本当にありがとうございます!
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login

いいえ、望んでいません
わらびもち
恋愛
「お前を愛することはない!」
結婚初日、お決まりの台詞を吐かれ、別邸へと押し込まれた新妻ジュリエッタ。
だが彼女はそんな扱いに傷つくこともない。
なぜなら彼女は―――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる