旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

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第89話 いきなりの告白

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 その夜の事―

「皆!今夜は大いに楽しんで頂戴!」

私は全員に大きな声で呼びかけた。

『はいっ!』

返事をする私の頼もしい仲間たちとシェアハウスの住人である俊也とジョシュアさん。今夜はノイマン家の朗報を知る事が出来たので、外でバーベキューパーティーを開催したのである。いわゆるお祝いパーティーである。
庭の外で薪を組んで、その上に大きな金網を載せて野菜を焼いているのはジョン。そして大きな鉄のプレートで肉やウィンナーを焼くのは勿論ウィンターである。
ウィンターは、何故俺がこんな役目をしなくてはならないのだとブツブツ文句を言いながら焼いていたが、以外に楽しそうに見える。



「はぁ~…それにしても今夜は良い星空ね~」

果実酒を飲みながら、ほろ酔い気分で皆から少し離れた場所で1人庭に設置されたベンチに座り、お皿に載せた焼肉料理をつまんでいると背後から声を掛けられた。

「ゲルダさん」

「え?」

振り向くとそこに立っていたのはジョシュアさんだった。彼は笑みを浮かべながら片手にアルコール、片手に料理の乗ったプレートを載せている。

「あ、ジョシュアさん。どうしたんですか?」

「いえ、僕もこちらでご一緒させて頂こうかと思いまして」

「ええ。どうぞ、お座り下さい」

私は真ん中の席からずれるとジョシュアさんが座ってきた。

「失礼します」

そして私に言った。

「もう、お互い飲み始めていますが…乾杯しませんか?」

「ええ、そうですね」

そして私達は互いにジョッキを持って乾杯した。

「それにしてもゲルダさんは凄い女性ですね~」


ジョシュアさんがお酒を飲みながら声を掛けてきた。

「え?私がですか?」

「ええ、そうですよ。シェアハウスと言い…この『バーベキューパーティー』と言い…どれも僕に取って初めての体験ですよ。本当にまだこんなにお若くて美しい女性なのに素晴らしいアイディアをお持ちなのですね?」

そしてじっと見つめてくる。

「そ、そんな…褒め過ぎです」

若くて美しい女性などと言われて、不覚にも胸がときめき、顔が熱くなってしまう。それを誤魔化すために私は言った。

「そ、そういえば本日はノイマン家の屋敷が売りに出されたのですよね?売り主は誰だったのですか?」

「ええ、それが驚きなのですよ。てっきりノイマン伯爵家で売りに出したと思っていたのですが…売り主はウェルナー侯爵家だったのですから。おまけに屋敷と一緒に爵位の売買までされたのですからね。ラファエル様に会った時はそんな話は一切されなかったのに…」

ジョシュアさんは不思議そうに首を傾げる。けれどその話は驚きだ。

「まさか…爵位まで売りに出されるなんて…」

思わずポツリと呟くと、ジョシュアさんが首を捻っった。

「え?ゲルダさんはノイマン家をご存知なのですか?」

そうだった。ジョシュアさんは私がもとノイマン家の人間であることを知らないのだ。どうしよう…もう離婚は成立しているし、モンド伯爵邸で私の事情を知らないのはジョシュアさんだけ…。うん、この際だから事情を明かしてもいいかもしれない。

「あの、ジョシュアさん、実は…」


****

「ま、まさか…貴女がラファエルさんと結婚していたなんて…」

ジョシュアさんが驚いた顔で私を見る。

「あ、でももう離婚は成立しているし、それにもともと私とラファエルは書類上だけの結婚だったんですよ?第一ラファエルには愛人がいたわけですし…」

「ああ、なるほど。その愛人だった方がベロニカさんだったわけですね。噂によると離婚したらしいですね」

「ああ…やっぱり…」

私は頷く。これで皆収まる所に収まったというわけだ。

「それで?ゲルダさんは、もうあのシェアハウスの男性陣の誰かと恋仲だったりするのですか?例えば…ウィンターさんとか」

「はっ?!何故、彼の名が出てくるのですかっ?!」

あまりの言葉に驚く。

「いえ…なんだか2人の雰囲気が良かったので…」

「まさか~ありえませんよ。ウィンターなんて」

あの男が恋人になる…?少し想像してみたけど…うん、やっぱり無い無い。ありえない。

「そうですか…。なら…ルイスさんとか?」

「いいえ、それもありえませんってば!」

俊也が恋人?前世で親子関係の私達が?それこそ絶対にありえないから!

「アハハハ…ジョシュアさん、酔ってます?なんだか急に恋バナになっていませんか?」

「恋バナ…?恋バナとは何ですか?」

「恋バナって言うのはですね…つまり恋の話です」

私が説明すると少しの間、ジョシュアさんは考え込む仕草をした。そして不意に顔を寄せてくると耳元で囁くように言った。

「実は…本当はゲルダさんを口説きに来たんです。僕みたいな年上の男は駄目でしょうか…?」

「え…?」

私は驚いてジョシュアさんを見た―。
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