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第86話 面会
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私が次に目指すのは…警察署だった。この町には大きな警察署がある。しかも拘置所付きなので収監されている人間もいるのだ。きっと、ラファエルはいるに違いない。幸い、タクシー会社から警察署までの道のりは徒歩圏内だったので、私は歩いて警察署へ向かうことにした。
石畳の町並みを歩いていると、どこからともなく甘い匂いが漂ってきた。
「ん…これは…?」
匂いの元を辿ってみると、店先で屋台が出ていた。そこでまるでクレープそっくりの商品が売られているではないか。
「あ!あれは…!」
思わず匂いに吸い寄せられるようにフラフラと近づくと、若い女性店員が声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ。ご注文ですか?」
「あ、は・はい!」
実は私は甘いものにはまるきり目が無かった。日本人として生きてた頃は若い時は良く今川焼きやたい焼きを買って食べたりもしていた。大人になってからは、早くに出産し、無我夢中で働いて…こんな風に買い食いを楽しむことも無かったっけ…。
そこで私はストロベリー味のクレープもどき?を焼いてもらい、紙にくるんで手渡された。
「お、美味しそう…!」
受け取った瞬間、思わず笑みが溢れる。そう、私は町中で一度でいいからこういうものを食べ歩きしてみたかったのだ。これが40代のおばさん姿ならちょっと恥ずかしくて出来ないけれども、今の私は21歳、栗毛色の長い髪に青い瞳の美女なのだから。
「あ~美味し~い」
そして私はクレープもどきを食べながら、ブラブラと警察署を目指した―。
****
「ええっ?!収監されている人物と面会したいですってっ?!」
警察署を訪れた私は早速カウンター越しの若い男性警察官に驚かれた。
「はい、恐らく知り合いがこちらの警察署に入れられていると思うんです。どうか会わせて頂けませんか?」
「い、いえ。ですが…本当に知り合いが収監されているんですか?」
怪しむ目で私を見てくる。
「はい、そうです。ラファエル・ノイマンがこちらにいませんか?実は彼は私の元夫なのです」
「え?」
若い警察官は考え込んでしまった。恐らく、今彼の頭の中では私をラファエルに会わせてもいいのか、どうか迷っているのだろう。そこでダメ押ししてみた。
「彼には…愛人がいて不倫していたんです。それで私達、別れたのですけど…まだ多少の情は残っているんです。お願いです、会わせて頂けますか?」
心にもないことを言う。
「う…わ、分かりました。今は他人でも、元妻という事であれば…会わせてあげましょう!」
「ありがとうございます!」
私は頭を下げて、笑みを浮かべた―。
****
この警察署には地下室がある。その地下室が牢屋になっているのだ。
「いや~ここへ連れて来た時は大変だったんですよ。暴れまくって…俺を誰だと思ってる!ノイマン家の伯爵だぞっ!なんていきがってましたけどね~…」
私をここまで連れてきてくれた警察官が前を歩きながら言う。
「そうなんですか…」
「こちらでお待ち下さい」
面会室に通された私は椅子に座ってその時を待った。部屋の中はガラス板のようなもので仕切られている。
やがて…
正面の部屋の扉がカチャリと開かれ、警察官に連れられたラファエルが現れた―。
石畳の町並みを歩いていると、どこからともなく甘い匂いが漂ってきた。
「ん…これは…?」
匂いの元を辿ってみると、店先で屋台が出ていた。そこでまるでクレープそっくりの商品が売られているではないか。
「あ!あれは…!」
思わず匂いに吸い寄せられるようにフラフラと近づくと、若い女性店員が声を掛けてきた。
「いらっしゃいませ。ご注文ですか?」
「あ、は・はい!」
実は私は甘いものにはまるきり目が無かった。日本人として生きてた頃は若い時は良く今川焼きやたい焼きを買って食べたりもしていた。大人になってからは、早くに出産し、無我夢中で働いて…こんな風に買い食いを楽しむことも無かったっけ…。
そこで私はストロベリー味のクレープもどき?を焼いてもらい、紙にくるんで手渡された。
「お、美味しそう…!」
受け取った瞬間、思わず笑みが溢れる。そう、私は町中で一度でいいからこういうものを食べ歩きしてみたかったのだ。これが40代のおばさん姿ならちょっと恥ずかしくて出来ないけれども、今の私は21歳、栗毛色の長い髪に青い瞳の美女なのだから。
「あ~美味し~い」
そして私はクレープもどきを食べながら、ブラブラと警察署を目指した―。
****
「ええっ?!収監されている人物と面会したいですってっ?!」
警察署を訪れた私は早速カウンター越しの若い男性警察官に驚かれた。
「はい、恐らく知り合いがこちらの警察署に入れられていると思うんです。どうか会わせて頂けませんか?」
「い、いえ。ですが…本当に知り合いが収監されているんですか?」
怪しむ目で私を見てくる。
「はい、そうです。ラファエル・ノイマンがこちらにいませんか?実は彼は私の元夫なのです」
「え?」
若い警察官は考え込んでしまった。恐らく、今彼の頭の中では私をラファエルに会わせてもいいのか、どうか迷っているのだろう。そこでダメ押ししてみた。
「彼には…愛人がいて不倫していたんです。それで私達、別れたのですけど…まだ多少の情は残っているんです。お願いです、会わせて頂けますか?」
心にもないことを言う。
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「ありがとうございます!」
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「そうなんですか…」
「こちらでお待ち下さい」
面会室に通された私は椅子に座ってその時を待った。部屋の中はガラス板のようなもので仕切られている。
やがて…
正面の部屋の扉がカチャリと開かれ、警察官に連れられたラファエルが現れた―。
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